帰還の後

 元の世界に帰ってきて数日がたった日の夜。

 いろいろな人に今までどこにいたのか聞かれたが、まさか異世界にいたといっても誰も信じてくれないだろうから、覚えていないことにした。

 結局この事件は誘拐であるとする話やしまいには神隠しであるという話までいろいろな噂が立ったが、それも次第に落ち着いてくるだろう。というかなにげに神隠しが一番状況としては近いんじゃないかな。

 僕が通っていた高校はまだ僕を退学にはしていなかったらしく、ありがたいことに留年ではあるが再び学校に通えるようになった。

 どうも勇者の力はわずかに残っているらしく、身体能力など常人以上の力があるものもある。

 けれども、もちろんこの世界には魔法はないし、魔物もいない。クラスメイトはそんな世界を「退屈だ」、「刺激が欲しい」という。

 しかし、僕はこの世界はいろいろなものにあふれた十分刺激的な世界だと思う。

 だけど、どうしても考えてしまう。

 ライラとドラドはどうしているだろうか。王国は無事に復興できただろうか。

 いや、大丈夫か。心配する必要はない。

 僕は肌身離さず持ち歩いているペンダントをそっと握る。

 僕の最高の仲間なんだもん、きっと笑いながらやりのけて見せるだろう。

 見上げた空には、あの日と同じような満天の星空が広がっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る