帰還の儀
翌日、僕たちは城の『祭壇の間』に集まった。
ここも懐かしいな。僕が召喚された部屋だ。
僕たちの前には聖女さんそして王様がたっている。
「これより、勇者スバルの帰還の儀を始める」
王様が低く通る声でそう告げた。
「本当によいのだな。スバルよ。貴殿のなした功績はとても大きい。この世界に滞在する限り我々は貴殿に最上級の待遇を保証するが、それでも変えることを望むか?」
「はい。それが僕の願いですので。僕に与える報酬は国の復興と発展に役立ててください」
王様は「そうか」と頷いた。なにげにこの人、僕をこの世界にかってにつれてきたことをも石わけなく思っているみたいなんだよね。
「ではこれより魔法を発動するための準備に取り掛かります。スバルさんはパーティーの方とのお別れをいまのうちにお願いします」
聖女さんの言葉で、僕は後ろに控えているライラとドラドのほうを振り返った。
「ほんとうに行っちゃうんだね」
ライラは泣きながらそう言った。
「昨日そういう話をしただろ、なくなよライラ」
そういうドラドの目にも涙が浮かんでいる。
かくいう僕もさっきから頬を涙が伝うのを感じている。
「二人とも泣かないで。僕は本来いるべき場所に帰るだけだから」
二人は涙をぬぐった。
「うん、わかった。もう泣かないよ」
「そうだな!やっぱり俺たちは笑いあうのがお似合いだ!」
二人そろってわはははと笑い始めた。
まだ涙声だったけど、それにつられて僕も思わず笑い始めた。
「スバル、これを」
そういってドラドが差し出したのは一つのペンダントだった。
「俺とライラで作ったんだ。俺たちもそれぞれ持ってる。これがある限り、俺たちはどこにいたって仲間だ!」
「ありがとう!大事にするね!」
僕はペンダントを首から下げた。
そのとき、聖女さんが「準備できました」といった
「あーおなかいたい。じゃあそろそろ行かなきゃ」
「うん!わたしたちも笑顔でみおくるよ!」
僕は祭壇に浮かんだ魔法陣の上に立った。
「勇者として魔王を討伐してくださり、ありがとうございました。あなたのこれからに幸があることを遠い世界から祈っております」
「ほんとうによくやってくれた。貴殿の名はわしが責任をもって後世まで語り継ごう」
聖女さんと王様がそう言ってくれた。
魔法陣が光りだす。
いよいよか。
そのとき、ライラが叫んだ。
「私、ぜったいまたスバルに会うことができる魔法を見つけ出すから!また会おうね!」
「俺も協力する!まかせとけ!俺たちは魔王を討伐したパーティーなんだ。不可能なんてないさ!またな!」
二人とも・・・
「うん!またね!ライラ!ドラド!」
目の前を光が包み込む。
そこで僕の意識は途切れた。
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