第28話「怖い話」
三月。海外のデザイナーズトイが9体届いた。
娘が9人増えた!
撫子は、すでにSeriaのドールを一体持っているので、そういうことになる。
全員に名前を付けて、可愛がることにした。
また、宗教施設に連行されるというデメリットがあるが、母親を足にして、劇場版モノノ怪 火鼠を観て、「よかったなぁ」としみじみ思う。
映画館が地元にあれば、もっと映画を観られたのに。
これは、撫子がしょっちゅう考えていることだ。
カスの田舎にそんなものはない。
あとは、セールまで我慢しようと思ったが、出来ずに買ってしまった都市伝説解体センターをクリアし、廻屋渉という男に情緒をめちゃくちゃにされてしまった。
「ユウちゃん! 何も言えないけど、都市伝説解体センターやって!」
「Switchのでいいか?」
「うん!」
撫子は、steamでやったが、ユウはパソコンを持っていない。
親友を沼に引きずり込むことに成功し、撫子は嬉しくなった。
別の日。漫画のぼくらのが全話無料公開されたので、一気に読む撫子。
古茂田孝美の、なんてことない人生と思っていたことを美しいピアノの旋律に昇華した話が凄く好きだと思った。
あと、畑飼先生がろくでもない成人男性だったので好きになる。
後に、彼のR18エロ小説を書いた。モブ×畑飼である。
ユウから、都市伝説解体センターをクリアしたと連絡がきて、撫子はLINE通話をすることにした。
「ユウちゃん、どうだった?」
『いやぁ、まさかあんなことになるとは…………』
「ユウちゃんは、ジャスミンが好きそう」
『当たり』
「ファビュラス!」
『撫子が廻屋好きなのも、そうだろうなって感じ。アイツ、ろくでもないし』
「ブリリアント!」
撫子が好きになるキャラは、ろくでなし・お人好し・トンチキという傾向がある。
「そういえばさぁ、うちのマンション、怖い話があるんだけど」
『また飛び降り?』
「いや、そうじゃなくて。某引っ越しセンターが実質出禁になった。エレベーター損壊させたから」
『マジか~』
「エレベーター使用禁止だって。それじゃあ、一階の人しか使えないじゃんね」
『ほぼ出禁だわな』
はは、とユウは笑った。
「ユウちゃんは、何か怖い話ある?」
『ん? ああ、そうだな……アタシの先輩の話なんだけどよ……』
「怖い話の導入だぁ」
『夜中、車走らせてたら眠くなってきて、後部座席から、「停車した方がいいよ」って聴こえてきて、「そうする」って返事して、脇に寄せて車止めたんだよ。でも、よく考えたら車には、先輩ひとりしか乗ってねぇんだよな』
「ヤバ~!」
撫子は、けらけら笑っている。
幼い頃からホラー映画や小説に触れてきた彼女は、ホラー受容器官が麻痺しているのだ。
本当は、もっと怖い話がいくらでもあるのだが、それは森野ユウの秘密である。
姉のクズ 霧江サネヒサ @kirie_s
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