第23話「初めてのクレカ」

 十月。涼しくなったり暑くなったりして、撫子は、「グッピーだったら死んでる!」と叫んだ。

 稼いだ端から金を使い、緑から盗んでは金を使い。そんなことをしている悪魔でも、気温差や低気圧には負ける。

 そんな鬱々とした日々を送っていたが、ある日、物凄いことに気付いた。

 私、クレカ作れるんじゃない?!

 撫子は、職場の連絡先に所属しているVライバー事務所の電話番号を入力し、見事にクレジットカードを手に入れた。これで、買い物の幅が広がる。

 代引きを使わないで済むようになるから、緑に使い込みがバレるリスクを減らせるし、一石二鳥だった。

 ハロウィン衣装の推しが3つのソーシャルゲームのガチャに来たが、クレカで課金して何とか入手をしようとする撫子。

 しかし。

「浄が出ねぇ~! ピックアップ仕事しろや!」

 撫子は、スマホを放り投げた。

 ライドカメンズの推し、浄のヴァンパイア衣装が引けない。出るまで課金をしようと決意したものの、カードの上限額になってしまったので、勝負は来月に持ち越しとなった。

「ガチャはクソ」

 ソファーに寝転がり、天井を見上げながら言う。

 来月は、浄の誕生日ガチャも来るというのに。それに、ガチ恋粘着獣の推しの隆文の誕生日祝いのケーキも予約したし。

 推しの誕生日祝いにケーキを買うのは、人生初である。撫子は、楽しみだった。

 そして、本日はハロウィンだからと、最愛のドールに魔女の格好をさせて、写真をTwitterに上げる撫子。いつもより、いいねがついた。

 撫子は、よく100均の世話になるのだが、ドールの衣装はSeriaのものである。感謝。

 それはそれとして、ペルソナ3リロードとボーカロイドのグッズが100均で出た時は、ほとんど全てが狩り尽くされていて、絶望したが。もう、メルカリを頼るしかない。荒垣先輩とKAITOのグッズが欲しいので。

 所属事務所のイベントのために、今月は50時間も配信をした。これで、リスナーにプレゼントが用意出来る。

 撫子が私物の数取り器で、時間を数えてることを話したら、緑に「キモい」と言われた。

「一時間に一回、カチッてやるんだよ?」

「そもそも、60分てのがキモい」

 文系と理系の差なのか、個人の感覚の話なのか。よく分からないが、ふたりはお互いのことが理解出来ない。

 気を取り直して、撫子は趣味のシーリングスタンプをした。クモの巣・魔女・かぼちゃの封蝋を作る。

 文通相手は、現在9人。キリをよくするために、もうひとり見付けたいなぁと撫子は考えている。

 十月は、買い逃していたレザボア・ドッグスの4Kリマスターのブルーレイやアニメの影鰐のDVDが入手出来たので、よかった。

 推し小説家のクラウドファンディングの支援も出来たし、満足である。

 クレジットカードの引き落とし額のことは、一旦忘れよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る