第9話「お仕事」

 文筆家としての撫子に、作詞の依頼がきた。

『依頼きたー! 無職じゃなくなる!』と、Twitterの鍵アカウントに投稿する。

 撫子は、送られてきた曲に歌詞をつけていった。

 二時間で終わる。第一稿を送り、あとは、クライアントの返事待ちだ。

 今日は、母と祖父母の家に行く用事がある。

 祖母が張り切って作った昼ごはんを食べ、畑の草むしりをして、小遣いをもらった。

 それとは別に、母からは時給をいただく。

 祖父母や母との会話の合間に、有料チャットアプリのキャストとしても働いた。客とフレンドリーにやり取りをして、金を稼ぐ。やっていることは、金蔓相手のバーチャルキャバ嬢とさして変わらない。

 今日、めっちゃ働いてんな。偉い。百点。

 撫子は、自身を褒め称えた。

 祖母と母が、宗教絡みでいがみ合いを始めてイライラするが、Twitterをして気を紛らわす。

 うちの人間は、ふたり以上揃うと、すぐこうなんだよ。

 撫子は、辟易した。親族がみんな嫌いなのは、こういうところにある。

 タイムラインを眺めていると、サンリオの推しであるハンギョドンのグッズ情報が流れてきた。三月は、ハンギョドンの誕生月だから、コラボなどもあるらしい。

 撫子は、すでにコンビニでハンギョドンケーキを買って、食べていた。

 それに、ぬいぐるみやフィギュアやアクリルマスコットやマスキングテープのハンギョドンを持っている。

 でも、新しいフロッキーフィギュアも欲しい。

 とりあえず、頭の中にメモをしておくことにした。

 そういえば。撫子は、サンリオピューロランドに行ったことがない。

 ユウちゃん誘って、いつか行きたいなぁ。

 サンリオが好きなフォロワーたちのレポを思い出し、羨ましく思った。

 県内のディズニーランドにすら、十何年も行っていない気がする。

 鴨川シーワールドに行く計画は、ポシャったし。

 動物園は、見合い相手と行ったきりだ。現在、撫子は未婚なので、そういうことだが。

 その男性は、子供がほしい人だったから。撫子は、ロマンティック・アセクシャルだし、子供を育てる能力なんてないと思っているので、破談になった。そもそも、命を預かりたくない。だから、ペットも飼わないし、運転免許も取らない。

 自分の面倒を見るだけで精一杯だ。

 帰宅して着替えてから、撫子は、定位置のソファーに倒れ込む。


「疲れた~」


 やっぱ、時給ないと会う気せんわ。

 撫子は、スマホにメール通知がきているのに気付いた。

 今朝作った歌詞が一発オーケーだったようで、少し気分が上がる。

 納品報告をしてから、撫子は眠りについた。

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