第33話 思い出す



 夢を見て、俺は閉じ込めていた記憶を取り戻した。

 父に恨まれている理由を、全て思い出したのだ。


 俺は不義の子。

 母がある日、突然家に連れてきた。

 困惑する父に、母は頼み込んだ。


「どうか何も聞かず、私達の子供ということにしてください」


 それだけしか言わず、後は本当に何を聞かれても答えなかった。

 母にも母なりに事情があったようだけど、何も説明しないのはさすがにおかしい。


 父は母の不貞を疑った。

 疑いをさらに強める原因になったのは、俺が母にとてもそっくりだったからだ。

 母が、誰かとの間に作った子供。


 父は荒れた。

 しかし母を愛していたので、頼まれた手前俺を捨てることは出来なかった。


 母がいる間は、まだ良かった。

 一応は息子として扱われた。家族団欒の一員にカウントされた。

 父が内心で腸煮えくり返っていたとしても、表には出さなかった。


 しかし母が死に、父はDNA検査を行った。

 秘密裏に俺と兄との血縁関係を調べた。


 その結果が、俺が夢で見た日に届いたのだ。

 俺と兄には血縁関係が間違いなくある。

 父の中で、母の不貞が確定した瞬間だった。


 それは俺を恨むはずだ。

 父にとって、俺は憎い存在だ。


 今までよく殺されなかったと思うが、母が最後に俺をよろしく頼むと伝えたのが大きいだろう。


 つまり俺が冷遇されているのは、俺にはどうすることも出来ない理由のせいだったわけだ。


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