第31話 監禁



「何をするんだ、離せっ」


 抵抗するが力の差は明らかだ。

 俺はどうすることも出来ずに、あっという間に拘束されて連れ出された。


 そして、前まで使っていた部屋の中に入れられると、転んでいる間に鍵をかけられてしまった。


「おいっ、開けろ!」


 扉をどんどんと強く叩いても、向こう側からは何も聞こえてこない。

 すでにいなくなったのだろう。

 いくら騒いだところで、手に怪我をするだけだ。


 俺は叩くのを諦めて、へたり込む。


「どうしてこんなことに……」


 呟いても、この状況を打破できるわけじゃない。

 後悔するのは脱出後にしよう。

 部屋の中を見て回って、俺は出口を探し始めた。


「……嘘だろ」


 その結果、分かったことがある。


 部屋の窓に鉄格子がつけられていた。俺がいた時には無かったから、最近設置されたのだろう。

 つまり、俺を監禁する計画は今日始まった話じゃない。


「ここに閉じ込めて、俺を一生表に出さないつもりか」


 そうすれば、俺の醜聞が広まることはない。

 いかにも父のやりそうな事だ。

 俺は乾いた笑いを零した。


「……どうして、どうして俺をここまで憎むんだ」


 手で顔を覆うと、俺はそのまま意識を失った。


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