第27話 父が現れて
出て行けと言ったのに、弟は部屋に居座った。
黙ってはいるが、俺に視線を向けてきた。無視したけど、ジメッとしていてうっとうしかった。
そのまま言葉通りに見張られていると、複数の人間が移動してくる音が聞こえた。
ようやく、父のお出ましというわけだ。
しかもお付きの者を引き連れて来たらしい。
最低でも三人以上はいそうで、部屋に入ったら圧迫感があるだろうとげんなりする。
ノックもされずに入ってきた従者の一人は、弟がいるのを見て驚いた表情を一瞬だけ浮かべた。俺だけだと思っていたから、ここまで雑な対応を取ったのだ。
弟に慌てて礼をしている。そうなる前に、きちんと確認してから入るべきだった。
そんなくだらないやり取りに意識を向けているのは、父の顔をできる限り見たくないからだ。
視線を向けていないにも関わらず、圧がかかってくる。
さすがに一企業の長は違う。
ただ、俺に酷い態度をとっていることに変わりは無い。
そこは目が曇っている。残念なことだ。
そうでなければ、尊敬できる人なのに。
本当は顔も見たくない。
しかし話をしなければ、ポチが待つ家に帰れない。
ジレンマを抱えた俺は、諦めて父の顔を見た。
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