第26話 弟



 華宮はなみや桜太おうた

 俺の弟で、現在は中学一年生。

 成長期がまだ来ておらず、ショタ枠の登場人物だ。


 ふわふわの髪に、くりくりの目。

 女子と間違われるぐらい可愛らしいが、本人は自分の容姿が好きじゃなかった。


 実は成長期が遅く、物語の終盤には一気にたくましい青年へと変貌を遂げる。

 しかしその前に、主人公のおかげでコンプレックスはなくなるのだが。

 現在は、まだコンプレックスの塊である。


 直接的な暴力は無いが、きゃんきゃんと耳が痛いぐらいに叫んでくる。

 俺も前は言い返していたけど、今は父に会うのが嫌すぎて頭が痛い。

 そんな中で、高い声で叫ばれたらそれだけで気分が悪くなる。


 俺は入ってきた弟を無視して、耳を塞いだ。


「ちょっと、無視するなよ!」


 この家族は、自分のことを棚に上げる癖がある。

 散々無視しておいて、一体何を言うのか。

 どれだけの声量で話しているのか、耳を塞いでも聞こえてくる。俺は大きく息を吐いた。


「どうしてここに?」


 適当に相手をして、すぐに帰そう。

 そういうわけで、とりあえずここにいる理由を尋ねた。


「そんなの決まってる。あんたが悪いことをしないか見張りに来たんだ」


 それを本人に言うのか。

 ちょっと馬鹿なのかもしれない。

 呆れた俺は、おざなりに答えた。


「俺は何もしない。いられると迷惑だから、さっさと出てけ」


 だから、ちょっとやり返しただけなのに、どうして傷ついた顔をするのか。

 意味が分からない。


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