第24話 兄



 兄の名前は、華宮はなみや壱李いちい

 メインヒーローの一人である。


 性格は一言で表すと俺様キャラ。

 唯我独尊で初めは主人公と衝突するが、段々と仲が深まっていく。


 俺様なのに変わりなくても、主人公にだけは甘い顔を見せる。

 ドロドロに甘やかす姿に、キュンとした読者は多い。


 しかし俺に対しては、暴言だけでなく軽いが暴力を振るうほど酷い人だ。

 大怪我まではしなくても、生傷はたえなかった。


 小説では詳しく書かれなかったが、実際は屑に近い。自分が被害者だからこそ、言えることかもしれないが。


 つまりどういうことか――俺は兄が大嫌いだ。


「分かった。今度はそういう作戦なんだな。小賢しい真似を」


 冷たい態度をとれば、もう話しかけてくるのを止めるかと思ったが、俺の反応を違う意味で解釈したらしい。

 元気を取り戻してしまった。面倒だ。

 相手にするほど暇じゃない。ポチが、忠犬ハチ公よろしく待っているのだから。


「あーそうですね。全部小賢しい作戦なんで、いつも通り放っておいてクダサイ」


 いつもの俺だと放置してくれれば、それが一番ありがたい。

 ちょっと棒読みになったが、これでいいはずだ。


 もう話は終わった。

 俺は話をする気はなかったが、ここまで付き合っただけありがたいと思ってほしい。


 再び帰ろうとした俺の腕を、兄はまた掴んできた。


「話はまだ終わってない。父さんがお前をご指名なんだよ」



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