第20話 面倒くさい協力者



「協力してくれって、具体的に何をしてほしいんだ?」

「家を出るためには、新しい住居が必要です。まだ未成年だから……」

「俺が必要ってわけね。なるほどなるほど。そうだなあ、手を貸してやる奇特な人間なんて、俺ぐらいしかいない。わがままで馬鹿なお前にしては、よく考えたじゃないか」

「……お褒めに預かり光栄です」


 褒められたわけではないと分かっていたが、とりあえずお礼を言った。

 言葉を読み取れない馬鹿だと思われて、鼻で笑われたので、こちらも挑発的に笑い返した。


「優しい叔父様なら、俺のわがままも聞いてくれるでしょう?」


 口元に手を当ててくすくす笑う。

 ポチ以外とまともな会話をして来なかったから、こういった皮肉の混ぜ合いでも楽しい。

 本当に楽しかったので、そう伝えれば次人が大爆笑した。


 ひとしきり笑うと、目尻にたまった涙を拭う。


「いいな。何があったか知らないけど、今のお前は面白い。住居を借りるのを手伝ってやるよ」

「ありがとうございます」

「ただし、無償ってわけにはいかないな」


 そのままお願いを聞いてくれるほど、親切ではなかったか。舌打ちを我慢して、俺は首を傾ける。


「俺に出来ることでしたら、お礼をします」


 さすがになんでもとは、後が恐ろしくて言えなかった。



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