第15話 今さら構ってくるのか



「最近、何かしたかな。いい子にしているつもりだったんだけど……」


 とぼける演技を続行する俺に、従成は苛立ちを募らせている。

 俺はあおるため、なんとなく自分が思う艶やかな表情を作った。


「俺、悪いことをしてないよ。問題ある?」


 くすくすと笑えば、それが引き金となった。


「ろくなことを考えてないのは分かってるんだ。さっさと化けの皮を剥がせ!」


 胸ぐらを掴んで、揺さぶってくるなんて従者として不敬だ。こんなことをしても許されると、俺は見くびられている。

 こんなことをされても全く怖くない。むしろ気持ちが冷めてきた。


「ここまでされる覚えはないけどなあ。だーれも信じてくれない。わがままなのは、そんなに悪いこと? ここまでされるほど?」

「はっ、開き直りか。どこまで醜悪なんだ」

「俺を醜悪にさせたのは周りだけどね」


 ムカつきすぎて、思わず本音を零してしまった。しかし相手には、ちゃんと届かなかったようだ。


「今度は人のせいか」


 言い訳をしているとでも思っているのか。全然違うのに。

 こんな奴に、好かれようと努力する時間がもったいなかった。反省反省。


 ムカつきすぎたから、俺はやり返すことにした。

 放っておいてくれれば、ここまでするつもりはなかったが自業自得だ。


「ふふ、そうかもね。俺わがままだから」


 元々距離が近いから、やるのは簡単だった。俺は油断している従成の唇に触れた。



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