第12話 犬とたわむれる



 二人でベッドに腰かけると、とりあえず頭を撫でておいた。

 毛並みはいいが、前髪が長すぎる。

 後でカットしよう。


 計画を立てていると、ポチが俺にすり寄ってくる。

 短い時間しか関わっていないが、ポチは触れ合うのが好きらしい。

 俺も人の体温に飢えていたので、全く苦にならなかった。

 むしろ安心する。


「ご主人様が望むなら、俺は全てを消してもいい」


 ポチは俺が家でどのような扱いを受けているか、すぐに分かったらしい。

 消すというのは、物理的にだろうか。

 魅力的な提案だが、さすがにまずい。


「気持ちだけ受け取っておく。いい子にはご褒美な」


 ご褒美は大事だ。モチベーション維持にもなる。

 俺は、そっとポチの額に唇を落とした。

 軽いリップ音を立てたのはサービスだ。

 やっていて照れる。


「ありがたき幸せ。ああ、ご主人様は素晴らしい。最高だ」


 ポチが満足そうで良かった。

 こんなにも喜んでくれるなら、俺もご主人様として精進しよう。

 自覚が芽生えてきた俺は、ポチの頭をぐしゃぐしゃと粗めに撫でた。


 ポチがいてくれるのならば、もう他はどうでも良くなったので俺は精神的に強くなった。


 一応、ポチには家に帰らなくていいのか聞いたが、さも当然みたいにここが家だと答えた。

 まあ、本人がそれでいいならいいが。


 絶対の存在ができたおかげで、俺は家にいるのも学校に行くのも怖くなくなった。

 いわゆる無敵状態に進化した。

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