第6話 学校で



 ひそひそと話す声。

 みんなが俺を笑っている。

 実際は違ったとしても、俺にはそうとしか思えなかった。


 学校は始まったが、誰も送ってくれないため、電車やバスを乗り継いで登校する。

 強く命令すれば、使用人も渋々送ってくれただろう。

 しかし、俺には到底出来なかった。それなら一人で行った方がマシだ。


 歩いて学校に向かう途中、あからさまに高級な車に何台も追い抜かされた。

 スモークガラスの向こうからでも視線を感じる。

 まだ物を投げられないだけマシか。そう思うぐらいに、俺は追い詰められていた。


 ずっと視線にさらされながら教室まで行き、扉を開けると静寂が流れた。

 誰もが俺に集中して、動向を探っている。


 全てを無視して席につき、机に突っ伏した。

 そうすれば、じわじわと会話が戻り出す。

 何を言っているか聞こえないけど、俺のことを話していると被害妄想気味に感じた。


 これが針のむしろか。

 ああ、学校にも味方を見つけられそうにない。


 もう、嫌だな。

 唐突にそう思った俺は、勢いよく席を立つ。

 そして周囲の注目を気にせず、教室から飛び出た。


 どこに行くかは決まっていない。

 今はただ、遠くへ行きたかった。



 ――しかし、どうやら俺はとことんツイてないらしい。


「おい、聞いてんのかよ」

「ビビって口もきけないのか?」

「わがまま姫にしては、静かだな」


 あてもなく学校の敷地をさまよっていたら、ガラの悪い三人組に校舎裏に連れ込まれてしまった。


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