第4話 仲良くなりたいです
沈黙が痛いなんて、全然知らなかった。
現在俺は食堂の席に座り、音を立てないように食事をすることに集中していた。
数日ぶりに食堂に現れた俺を、誰も歓迎しなかった。父も兄も弟でさえも。
俺が部屋に入った途端、それまでしていた会話が止み睨みつけられた。
さらには舌打ちまでされた。
使用人はあからさまな態度を取らなかったが、家族となればここまで表に出すのか。
俺は驚きながら、用意された遠い席についた。
かなりの時間が経った後、食事が運ばれてくる。
音を立てて置かれたのにも関わらず、誰も注意しない。使用人の不手際は、俺に対してだと黙認される。
「……いただきます」
微かに身じろぐ音さえも聞こえる中、挨拶をするのにも勇気がいる。
独り言みたいに口にすると、俺は食事を始めた。
まったく味がしない。
一流シェフが作った料理で本来ならば美味しいはずなのに、緊張や場の雰囲気が追い詰めてくる。
それに、俺の料理だけ明らかに雑に作られていた。時間がかかっていたのは、冷めた料理にするためか。わざわざ手間がかかることを。
俺がもそもそと食べている間に、他のみんなはさっさと食事を終わらせた。
そして一緒の空間が耐えられないとばかりに、さっさと部屋から出て行こうとする。
「あ、あの」
このままじゃ駄目だ。
そう思って父に声をかけた。しかし、視線すらもよこさずに無視された。兄も弟も。
存在を無視されて取り残された俺。使用人達が隠そうともせずに、くすくすと笑っている。
俺は最悪な空気の中で、詰め込むように食事をして、安全地帯である部屋に逃げ帰った。
部屋の横で控えていた従成は、小走りで帰ってきた俺に、侮蔑の視線を向けた。
いたわる様子はみじんも感じられない。
「……俺が、何をしたんだよ」
いくらわがまま放題だったとはいえ、どうしてここまで冷遇されるのか。
ベッドにうつ伏せになりながら、俺は涙を滲ませながら呟いた。
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