カモナマイダンジョン
平井敦史
第1話
「いらっしゃいませ。内部見学をご予約なさっていた方ですね。お手数ですが、こちらにご署名をお願いします」
私がペンと羊皮紙を差し出すと、入居希望者さまは達筆な字で署名されました。
「『
私がお辞儀をすると、
「
そう言って、私はダンジョンの奥へと
薄暗いダンジョンの中に、
ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、ミミックにもちゃんと手足はあるのですよ。宝箱に擬態する時は仕舞っていますけれど。
あ、私はラミアですから、蛇の下半身で
「こちらのダンジョンにはどんな方たちが入居されているのですか?」
歩きながら、
「色々な方が入居されていますよ。ゴブリンもいらっしゃれば、スピリッツ系の方たちもいらっしゃいますし、ゴーレムからミノタウロスまで」
「バラエティ豊かですね」
「はい。当ダンジョンのマスターは
その点、うちのダンマスは来るもの拒まずの方針なのです。
「あ、もしかして、そういうのはお嫌ですか?」
「いえいえ。全然気にしませんよ」
「それは良かったです」
入居者さまの中には、他の入居者の方の属性を気になさる方もいらっしゃいますから、それを聞いて一安心です。
「ところで、
「はい。お気に入りですので、褒めていただけて嬉しいです」
ひよこがピヨピヨ鳴きながら歩いている絵が刺繍されたエプロン。ダンマスから支給されたもので、何やらこだわりがあるらしいのですが、実際可愛いですし、お気に入りというのは本当のことです。
そんな話をしているうちに、私たちは空室の前にやって来ました。
「こちらのお部屋はいかがでしょうか」
部屋に入った
「良い内装ですね。最近は凝り過ぎてかえってチープに見えてしまう内装も少なくないですが、この部屋は実に良い。高級感があって、ここなら宝箱が置かれていることにも説得力があるでしょう」
「ありがとうございます」
「それに、照明の明るさもちょうど良いですね。これは発光ゴケですか?」
「はい。明るすぎず暗すぎず、適度な明るさを実現したのは、弊社の研究の成果です」
ダンマスの配下の
ちょっと偏屈ですが根は良い方ですよ。
「うん、水回りも問題なさそうだ」
「サポート体制も確立しておりますので、何か問題がございましたらすぐに対応いたします」
「そうですか。それは安心ですね」
「気に入りました。やはりここに決めようと思います」
「ありがとうございます」
「それにこちらは、交通の便も良いですしね」
「はい。駅から徒歩5分ですから、多くの冒険者の訪問が期待できます」
「おお、それはいい」
「では、こちらが契約書です」
羊皮紙を
「クーリングオフをご希望の場合は、8日以内にお申し出ください」
「わかりました」
お気に召したようですので、多分大丈夫だとは思いますけれど。
その後、
先ほども述べた通り、交通至便な当ダンジョンには多くの冒険者が訪れ、
「私の魔法使いとしての勘が告げている。この部屋の中には貴重な魔導書が眠っているに違いないよ」
ある日、
悲しいことですが、ダンジョンとはそういうところなのです。
――Fin.
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まあ、あの人が来たならダンジョンそのものが攻略し尽くされてしまうはずなので、きっと無関係な
前作との落差がハンノキ滝級ですが、ガチシリアス系の話を連発するとハードルが上がってしまいますもので^^;
カモナマイダンジョン 平井敦史 @Hirai_Atsushi
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