第6話

 目が覚めてスマホの時間表示を見ると、もうお昼前になっていた。

 久しぶりにだいぶ長い時間寝た気がする。


 遮光カーテンの隙間から、透き通った冬の光が部屋に入ってきている。


 後悔はしていた。

 どうして美咲のことにもっと構ってあげなかったのだろうとか、どうしてあんなに一緒にいたのに美咲の寂しさに気づけなかったのだろうとか。


 でも、自分勝手な話だけど、ちょっとほっとした気にもなっていた。


 やっぱり僕は、美咲が元カレから連絡が来ただけで別れを告げてくるような女の子だなんてずっと信じたくなかったのだ。

 だから、美咲が僕のもとを離れていった理由が僕自身にあることがわかって、やっぱり美咲がひどい女の子じゃなかったのだと思えて、不思議と僕は嬉しかったのだ。


 カーテンを開けると、眩しい光が部屋中を照らした。

 僕はただなんとなく、さっき見た夢のラーメン屋に行きたくなった。


 ラーメン屋に歩いて行く途中、僕は今夜、美咲に最後に一度だけ連絡しようと決めた。

 それでだめだったら、諦めよう。


 諦められるかどうかはわからないけれど。

 諦めよう。


 そう心に決めて入り口のドアに手をかけた時だった。


「おいっす」

 聞きなれた声で、後ろから呼ばれた。


 振り返ると美咲が見慣れた紺色のダッフルコートを着て立っていて、手をグーパーさせていた。

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