黒歴史は押し入れの中に眠る
日々いつか
魔のカセットテープは、いつもそこに。
誰かが私に最高の黒歴史を所望されたようで、ここは一つとっておきのものを出してみたいと思います。
私は中学から高校生まで、演劇部が中心の有志が集まって「After Recording Union(アフター・レコーディング・ユニオン)というサークル活動をしていました。
先輩や友人の有識者による見解だと、英文法間違ってない?とのことでしたが、とにかく語呂が良い。皆でアフター・レコーディング・ユニオン。略してアフユニ!と言ってました。
このサークルの活動内容は一週間に三回、二人から四人集まって、カセットテープにラジオ風の番組を収録するというもの。しかも台本や収録中に行う企画は各チームで当番制で作っていました。他にもラジオでよく聴くジングルはギターを練習中の子が創作したり、番組中に使用するBGMは、フリー音源を探すことが好きな人がいたので殆ど自前で用意していました。
はあ?何で、このご時世にカセットテープで録音してんのって?
細かいことは良いんだよ!
(多分、何か理由があった筈ですが、思い出せませんでした。すみません。)
先輩達と共に行っていた活動なので、高校に入学した五人と私が所属している中学生組の三人に分かれてしまった時期があります。
その時です。中学生組の企画力がある実質リーダーの二人(自分は含まない。)が連作ミニドラマをやりたい。キャラ設定(挿絵付き)とキャスティングの大まか内容は考えたから、リレー形式で台本を書いてね!と何でもない事のように言うのです。
えっ?別に良いよ、と安請け合いした自分を、その後に念入りに呪いました。いや締切が、きついんだって。
しかも、ですよ。その挿絵を描いた子を主人公に据えて、中学生組は四人で毎週、(ゲスト用に用意した企画が無い限り)一年間リレー台本を書いていました。
今、思うとよくそんな時間を捻出したよ。すげーとしか言いようがありません。
過去の自分は本当にすごいな。よくあの締切を守れた。偉すぎる。
当時、中学生組は週に一、二回取っていたのかな。勿論、中間テストや期末テストはお互いに配慮…されていたかもしれない。いや、されていなかった。
勉強もやって、別に部活動とサークルか。若いって好いですね。
話を戻しましょう。その中学生組肝入り企画のドラマは、よくあるRPG風の冒険譚でした。
その中で私は何と、お姫様役!
ふんわりとしたピンクのスカートを履き、歌でバフを掛けるパーティーのヒロイン。しかも天然。
あっ、いたたたたたた。これは痛い!こうかはばつぐんだ!
お前のキャラじゃないだろって、石を投げないで下さい。自分でも理解しているから!
キャスティングをした人に話を聞いてみると、収録中に私が暇になったら歌を小声で歌っていたからだそうな。そこからインスピレーションを膨らませたらしい。早く言ってくれって。普通に収録の邪魔じゃん。(真顔)
その当時は演劇部に毒されていましたので、決められた役は全うする!と意気込み、歌が下手なのに課題曲を用意されて頑張って覚えた記憶もあります。まあ、そこは良いんですよ。本題ではない。これは本題ではないんです!
だって私にとって、この話はホラーなんですよ!?
それを今から説明します。
このドラマの最後は全員が台本を執筆して、四通りの最終話を収録しました。それを一つのカセットにまとめ、機械に強い同サークル内の友人が音源をCD-Rに落として、配ってくれました。
時は流れ、大人になり親元から離れて、引っ越しました。
引っ越す時に荷物を片付けるじゃないですかー。片付けた時に出て来たんですよ。そのアフユニのカセットとCD-Rが。当時の台本も含めて。
うわああああああああああああん!嘘だろ!?嘘だと言ってくれよ!!
台本はさすがに黄ばんでいたので捨てました。ですが当時の音源は、全部ではありませんが未だに手元にあります。磁気テープだし、再生できないかもしれないけど。CD-Rも探せば、押し入れから出て来る。
猫撫で声で、必死に私の想像する可愛いお姫様を演じていた自分を直視する勇気が持てません。いや、見ないで聴くものだけども。言葉の綾ってやつですよ。あいたたた。これは重症だ。トリアージして欲しい。何やってんだよ。過去の私。
捨てるに捨てきれず、これらの危険物は押し入れの中に眠っています。
押し入れの隙間から漏れ出る中二廟。うわっ…以外に言葉がでません。本当に。
なにが恐怖かって、自分だけならまだしも、当時の同級生の青春の光と影まで録音されている。これは危険物ですね。(他人事)
当時、録音したミニドラマの第一話と最終話に登場したゲストの同級生は今でも交流があります。
今度、この話をしてみようかな。大人になった同級生は、どう感じるのでしょう。あー、あったね。そんなことも、と笑ってくれるかもしれません。
彼女が演じた役は時の魔術師(大司祭)だったということを、そっと添えておきます。
さて、こんな黒歴史ですが、いかがでしょうか。ちょっとパンチ力が無い気はしますが、まあ若い時って、こんなもんですよ。
基本的に私は常時、黒歴史を量産している人生なので、一番思い出深いエピソードになってしまいました。
今でも学校の放課後に様々なことに悩み、笑いながら皆と何かを作った思い出はキラキラと輝いています。ただ録音を聞く勇気だけはありません。
皆さんは引っ越しの時に不用意に片付けしないで下さいね。捨てられないものが沢山出てきますから。
元気にしてるかな、皆。と当時の懐かしい顔を浮かべながら、ここら辺で筆を置くことにします。
黒歴史は押し入れの中に眠る 日々いつか @ituka-hibi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます