第5話
さて、生活の基盤は整ったところで、異世界の風景に目を向けてみよう。
まずは、でっかい月がある。異世界であることを示すためか、前世の記憶では、異世界には複数の月のある世界が設定されているものが多かった気もするが、此方では一つである。まあ、月の存在が、生命発生の条件という説もあるので、月があるのも当然か。複数の月があるのも異世界っぽくていいかもしれないが、月の軌道が安定せず、結局一つになってしまう気もする。
伝承を聞くともともとどっかにあった村が、異世界転移に巻き込まれ、何とか発展して国らしきものになったのが、この世界の興りらしい。道理で、支配範囲が狭いわけだ。
森の動物はと言えば、獣の類が多いな。どっかで見たことがあるような動物も多いが、基本初見。収斂進化を考えれば似たような環境なら、似たものになるのは当然。狩りの獲物となりうるのは、イノシシに似たのと、シカに似たのやクマっぽいのもいて、結構多様である。
もともと村であったおかげか、意外と農業が発展している。一面に広がる小麦畑とかあって、商店では小麦粉とかも売っている。
貨幣経済も発展しており、金貨、銀貨、銅貨、鉄貨が流通している。重さが一緒なら私鋳銭も通用するようだ。密度を測れば混ざり物は見抜けるので、意外と詐欺は少ない。
特筆すべき虫食文化かもしれない。転移したてでまだ農業が発展していないころに森の恵みの一種として、採取の容易な昆虫類を食す文化が発生した。大物な獲物が取れるようになると若干衰退したが、まだ嗜好品的な位置づけで食べられている。
幸い養鶏も盛んだ。養鶏と言っても鶏ではないようなのだが、新鮮な卵が食えるというのは恩恵だ。
魔法もあって、解毒の呪文とかを使えば、食中毒の心配も薄い。本気で腐ったものに使っても効果はないが、ひとまずは大丈夫だろう。
食用油とかも生産されているので、異世界転移の定番であるマヨネーズとかも生産可能だ。鍛冶師の技能が有れば、泡だて器とかも作れるので、食卓は豊かになる。
獲物をとってきて、マヨネーズを塗って焼くだけでもかなりうまい。
野菜類は見たことがないものが多い。これは、転移事件後こちらで栽培化されたものが多いからであろう。トマトみたいなのやジャガイモ的なものもあるので、食生活は豊かだ。
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