第四章 2

   (城内の一室)


ローゼン  ハムレット様、ご機嫌うるわしく存じます。

ギルデン  昨日は何かと大変なようでしたな。

ハムレット ああ、何かと気苦労が絶えない。すぐに腹の内を探りに来るような二人組がウロチョロしているからな。

ローゼン  噂では、城内に行方不明の方がいらっしゃるようで。 

ギルデン  噂によりますと、何者かによって殺害されたのではないかと。

ハムレット 行方不明というのは、誰なのだ?

ローゼン  実を申しますと……。

ギルデン  ポローニアス様でございます。

ハムレット すると昨日の芝居を中断させた、その後のことか? 殺害されて行方不明、遺体もない? 噂といっても、それは誰による噂なのだ? 

ローゼン  それがはっきりしないので。遺体が動いたとの報告もございます。

ギルデン  城内をくまなく調べ上げ、遺体を探し回っている最中でして。

ハムレット  それで、動いた遺体が行方不明というわけか。

ローゼン  昨夜、ハムレット様はお会いになられましたか。

ギルデン  ポローニアス様と、お話をされたとか。

ハムレット  いや、昨夜は動物劇団の者たちの見舞いに行って、その後は……、どうやら酒に酔ったらしく、前後不覚になって、記憶が定かではないのだ。気がつくと廊下で眠りこけていた次第。

侍女   ハムレット様、お手紙が届いております。

ハムレット  どれどれ、これは……、おい、何と当のポローニアスからではないか。

ローゼン   その手紙が?

ギルデン   たった今?

ハムレット  ああ、どれどれ「ハムレット様、ご機嫌うるわしく存じます。急用につき城を不在にしておりましたが、そろそろ戻りますぞ」と。

ローゼン   すると、あの噂は?

ギルデン   目撃したという話は……?

ハムレット  昨日はいきなり怒り出して芝居の邪魔をしたかと思えば、今朝は誰かに殺されただの、遺体が動いただの何だのと。

 私的な話だが、こちらを疎んじるような態度や挑発、からかい、かと思えばお追従ばかりのニヤニヤ顔、これだけの謎を残して、今度は手紙で「そろそろ戻ります」とは……、まるで、気違いを演じてでもいるかのようだ。

ローゼン   これは驚きました。

ギルデン   いったい、これはどういうことなのやら。

ハムレット  こちらにも皆目、見当もつかない話だ。

ローゼン   とりあえず、王と王妃のところへご同行いただけますか。

ギルデン   お願いいたします。

ハムレット  まあ、気乗りしないが行ってみよう。

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