第四章 1

 朝になりますと、城内はそれぞれの持ち場で働く人びとの姿でいっぱいになります。何やら顔色を変えて、そそくさと動き回る人もいました。

 謁見の間に王と王妃が顔を見せるとすぐに、ガートルードが人を払いました。

「ちょっと、今朝は席を外してちょうだいね」

 王はその隣で難しい表情をして黙っております。

 大臣やお付きの者がいなくなりますと、二人は声をひそめて話し始めました。

「おい、昨夜からポローニアスがいなくなっているというのは……」

「どうやら本当らしいのよ、探らせた範囲の話では」

「一体、どこへ消えたというのだ?」

「それどころか、何者かによって壁に放り投げられて」

「放り投げる?」

「壁にたたきつけられて……」

「そんなことのできる奴がいるのか?」

「肉の塊になって、壁から剥がれ落ちて……」

「馬鹿々々しい」

「その塊が這いずり回って、城外に逃げて行ったと」

「それを目撃したという者は誰だ?」

「言いたがらないのよ。皆で口裏を合わせているのかしら」

「そんな話を信じるのか?」

 クローディアス王は腕を組んで、考え込みます。

「これもまた、……あの男の策略なのか?」

「私に訊かれても、返答できませんわ。どういうからくりがあるにしても……」

「まず、城内を隅々まで探して遺体を見つけなければ。ポローニアスが消息不明のままでは、執務も滞り、ますますあの男は調子づいて、何をしでかすか予想もつかないぞ」

「そう、またローゼンとギルデンに探ってもらうことにしましょう」

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