第二章 5

 やはり、ハムレット様からの手紙はいつの間にか漁られていて、ひどく汚れた指の持ち主によって、どこかへ持っていかれてしまった。話は牛の涎を繋げたほど長ったらしいのに、行動だけは気味が悪いほど素早い誰かに。


 今日は、ハムレット様のおかしなご様子を遠目に伺い、城を訪れた動物劇団の様子を物陰から観察する。

 驚いたことに、森で見たあの一行が混じっていた。すっかり人気を奪ったというが、何をどうやって面白くしたというのだろうか。あの時に打ち合わせでも?


 衣装も仕草も、よく見れば特徴がある。

 あの大きな猿は、簡素な赤い僧服に、頭に金色の輪を嵌めている。見慣れない組み合わせで、洒落た雰囲気もあり、憎らしいほど色合いが素晴らしい。毛の色つやも見事で、作り物とは思えないほど。

 大豚の役を演じている誰かも、遠目には肌の色もぶうぶう鼻を鳴らす音も、あたかも本物の豚のようで、履物の下に尻尾があるらしく見える。本物の尻尾のようにクルリと丸まっているのであれば、つまんで引っ張るか、せめて触ってみたい。

 顔色の変な僧もいて、あの方は裏方の仕事をされているのだろうか。首から小さな髑髏をいくつも繋いで作ったネックレスを垂らしていた。本物のようにも見える。かつてはあの眼窩に目玉が入っており、口元では舌が動いていたのだろうか。いったい誰がどういう考えで制作したものか。見たことも想像したこともないアクセサリーなので、おそらく芝居で使うのだろう。

 もう一人の落ち着いた僧は、位が高そうな雰囲気の、輝くばかりの袈裟の衣装を身にまとっていた。ひと目で物が違うとわかる。香気すら漂っているようで、しかし決して華美ではないのだ。


 お父様の言うように、身に着けるものには金銭を惜しまず、簡素を心がけなければならない。

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