第一章 2

  (戴冠式の後、会議の間に皆が集まっている。玉座には新しい王のクローディアスが腰かけている)


クローディアス  兄であるハムレット王が急死なさるとは。無論、お亡くなりになられても、当然ながら思い出は未だに深く心に刻まれている。そして、皆々が悲しみに沈むのも当然のこと。しかし、その悲しみを押し殺して、新しい王としての本分を全うしたい。

 まずは、ノルウェー国がこの国の領地を狙っているという噂だが、王の息子フォーティンブラスは、領地のみならず自国を思いのままに操るため、謀反の準備を進めているとも聞いている。王の殺害すら計画しているのだと。

 そこでだ、コーニーリアス、ヴォルティマンドよ、いや名前が長いので今日からはコーニーとヴォルテでよい、この手紙をノルウェー王へ届けてくれ。

コーニー  はい。

ヴォルテ  承知いたしました。

クローディアス  では、ただちに出発するがよい。


  (二人、退場する)


クローディアス  ところでハムレット君よ、これまでは甥だったが今ではわが息子。なぜそう愁眉を閉じているのだ? そこは開いてくれまいか?

ハムレット  先ごろから気分が悪く……、頭も痛むため、お暇をいただきたく存じます。

ガートルード  まあ、赤ちゃんの頃はニコニコと、何でもよく言うことを聞いてくれて、よく食べて、よく眠ったのに。ハムレットちゃんがそんなにふくれっ面で、しかも喪服だなんて。

クローディアス  父親を失ったばかり、寂しくなる気持ちはわかるぞ、ハムレット君。本心を打ち明けるならばだ、実の父親よりも深い愛情で、君を包み込んでやりたいのだよ。今、王の心は愛情ではち切れんばかり。だからこそ、ウィッテンバーグの大学へ戻りたいなどという申し出、あれは辛い。どうかこの城へとどまってはくれまいか。

ガートルード  そうそう、そうよ。お母さんからもお願いなのよ。

ハムレット  ええ、できる限り城にとどまり、検討してみましょう。この城に漂う悪臭、罪の腐臭に耐えられる限りは……。

クローディアス  そうかそうか、それは何より。これを祝して、杯の酒を飲み干すたびに、祝砲を打つことにしよう。今夜もまた祝宴だからな。よろしく検討を頼むぞ。


  (皆がいなくなり、ハムレットだけ残る。そこへホレイショ―とマーセラスが来る)


ホレイショ―  ハムレット殿、お元気そうで何より。

ハムレット   おお、ホレイショ―! 会いたかったぞ。

ホレイショ―  ご大葬のため、急いでこちらへ戻りました。

ハムレット   そうか、それに引き続いての呆れた戴冠式だからな。

ホレイショ―  それで、内々にお話し申し上げたいことがございます。

ハムレット   実はこちらも、相談したいと思っていたのだ。まず、そちらの話を聞かせてもらおう。

ホレイショ―  昨夜、お父上にお目にかかりました。

ハムレット   城の最上層で?

ホレイショ―  はい。

ハムレット   では、例のあの噂をその目で確かめたというのか。

ホレイショ―  まさしく、寸分の違いもなくお父上のお姿、そのままで。しかし、話しかけても話は届かず、むなしく消えてしまわれたのです。

ハムレット  それならば今夜、ただちに参ろう。きっと話してみせようではないか。たとえ本物の父上ではなく悪魔の仕業としても、話せば何かがつかめよう。ただし、くれぐれもこの件は口外せず、万事慎重に頼むぞ。

ホレイショ―  お望みの通りに。

マーセラス   見張り番はこの二人のみですので……。

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