第32話 洞窟はハプニングがてんこ盛り

次の日殆ど日の出と共に起きて1の鐘が鳴るころにはオーガやオークがいる洞窟に向かいました。


洞窟に向かいながら打ち合わせをしました。

作戦としては単純で前に見せてもらったコンパウンドボウを撃って1匹~複数匹を釣って少数を斃していき、洞窟内に入る全ての魔物の討伐を行う。

というものです。


一番危ないのが奥で集団として向かってきた場合で10匹以上一気に相手はできなませんから、一旦逃げることにしています。

ただ集団で追いかけられても入り口まで逃げて、そこからもう一度1匹を狙って弓を撃ち、小集団に分けて倒すこと事ができればと思っています。


ただオーガは一度も戦ったことがないので、確認をしておかないとダメなので質問しておきます。

姿絵は冒険者ギルドで見ているのでわかります。

オークよりも一回り大きく筋肉質な体つきでオークと違って豚顔ではありません。


「オーガってどういう感じで戦えばいいのですか?」


「オーガは兎に角タフ、オークハイの数倍は殴らないといけないと思ってくれた方がいい。

量手持ちの石斧をよく持っているから攻撃を受けるとサーニャなら吹っ飛ぶ可能性が高いと思う。

危ないから回避優先で立ち回って欲しい。」


オークハイは2,3回思い切り殴って倒していたので、もしかすると10回以上攻撃が必要なのかもしれないです。

オーガになると危険度がかなり増している感覚を覚えます。

その他どこを攻撃しても痛みを感じない様子で平気で反撃してくるのでよくよく気を付けるように言い含められます。



そうしている内に洞窟が森の木々の先に見える位置まで来ました。

見張りとして外にいるのは3匹のオークだけみたいです。


数匹単位の小集団だとしても一斉に相手をすると危ないので、脚が引っかかって転ぶよう木の間に縄を張っておき罠として使用します。

これを4ヶ所作っておき誘導する場所を複数所用意しておきます。


準備ができるとまず見張りのオークに弓を撃って貰います。

急所を外して貰い、他のオークが出てくるのかも確かめます。


私は入り口が確認できる低木に身を半分隠してハンドサインで合図を送ります。

音は聞こえませんでしたがオークが悲鳴を上げる声が聞こえました。

マスターがわざと音を立てて逃げていきます、それを見張りの3匹が追いかけていき中からオークハイとオークが4匹でてきました。

それを確認してすぐに罠1の場所に行きます。

中腰のまま音を立てない様にしつつ急ぎます。

オークが縄に引っかかって倒れた音を聞くと私は全力で向かいました。

2匹は倒れたみたいですが最後尾の1匹は棒立ちをしていたので思いっきり左ひざの横にメイスを両手で持って思いっきりスイングします。そうして態勢が崩れたところにもう一撃入れて倒します。

私が1匹斃し終わるとマスターは既に2匹斃していました。

すぐ死体を収納してまた洞窟に向かいます。

その際出てきたオークハイとオーク4匹の情報を言います。

マスターは空中を見つめながら「う~ん」と少し唸っていて知っているようでした。

いつも思いますが謎です。


洞窟の入り口にいくとオークハイのみがいなくなっていました。

さっきと同じようにしてオークをおびき寄せて4匹斃します。

オークハイはまた洞窟から出て来ていたので洞窟入り口近くにいるみたいです。

何度か同じことを繰り返して合計で23匹のオークを斃したところでオークハイが入り口にいました。


オークハイに弓を撃ち、オーク2匹と共に罠へ誘ってこちらも討ち取ります。

そうすると入り口には何もいなくなりました。

ここから洞窟に入って中から誘い出してくるので危険度が上がります。


私は今までと同じ位置にいてマスターが誘い出してくるのを待ちます。


するとオークハイを4匹引き連れて入り口まで来ました。

入り口のオークハイの目に弓を撃って倒し、他の3匹を罠へ案内しています。

オークの時と同じような作業でオークハイも倒していきます。


入り口で倒れていたオークはまだ生きていたのかマスターが止めを刺して収納していました。

同じようにしてオークハイを釣り出して更に6匹を斃しました。


多分体感的に4の鐘に近い感じですが、ここで一旦休憩をして軽食にドライフルーツの入った焼き菓子とお茶を飲みます、

小休止を取ってから残りを討伐する感じですね、オーガをまだ見ていませんし。

そんな事を考えていると、渋い顔のマスターから話しかけられました。


「残っているのが非常に面倒くさくて、オーガハイが1匹、オーガ2匹、オークキングが2匹一番奥の部屋にいるんだよ。」


「オークハイがいるのは聞いてませんでしたが?」


「昨日と朝調べた時にはいなかったから、今までの間に沸いたのは間違いない。

多分ここ最近魔物や魔獣に出会わなかった原因がこの洞窟にある気がするんだ。

普通オーガなんてこんな所じゃ出会わないし、オークキングだって滅多に出没するもんじゃない。

つまり偶々運悪くか運良くなのか分からないけど、周辺の魔素がここに集まってしまって濃い魔素溜まりができたと考えられるんだよな~。」


「でも同じようにこっちに釣り出して罠まで引っ張るのですよね?」


「釣り出せないと思し、あの罠程度じゃ足止めにもならないから正々堂々卑怯に戦わないといけない。

だから面倒なんだよね。」


「正々堂々と…卑怯に?…戦うとは?」


私が知っている単語と違う言葉かもしれないと思って確認します。


「正々堂々奇襲して、頭を潰して、弱い奴を斃して数を減らすって戦法しか取れないから困ってるんだよ。」


「という事は、危険度が高いのですね?」


「オーガハイは皮膚も硬いから普通に戦うと時間がかかるんで、急所である首を一発で刎ねたい。

でもそうするとサーニャを囮にしないとダメなんだよね。オーガ2匹とオークキング2匹の攻撃から逃げ回れる?」


「…自信はないですが、マスターは私が出来ると思っていますか?」


「可能だとは思ってるけど、洞窟内は暗いからどうかなって思ってる。向こうは暗くても関係ないからね。」


「ではどうすれば成功すると思いますか?」


「松明を2本持っておいて最初に僕が弓を撃った後、サーニャは松明を適当に投げて視界を確保しながら近づいてウォークライで全部を膠着させて、その後はバトルソングを使いながら回避し続けるだけだけど…。

ある程度逃げられるように囲まれない立ち回りが必要になってくるけど、それって練習無しで本番をしていいものかと考えてる。」


「それが最善だと思うならやりましょう。」


「…そうか。じゃやろうか。」


油の染みている松明に火を付けて奥へ進んでいきます。

メイスを腰に下げたまま松明を私が2本っています。


「とっておきの矢を使うから上手くいけばオークキングは1撃でやれると思う。

ウォークライは何度も使ってるから有効範囲のギリギリが分かってると思うけどよくよく注意してね。」


と注意を受けます。

一番奥の部屋に光が届かない通路で待機するように言われ、声がしたら部屋に向かって思いっきり駆けて行くように指示を受けます。



ちょっと待っているとドタンと何かが倒れる音がして声が聞こえました。

思いっ切り駆け出して部屋の中の左右に松明を放り投げます。

すると狭い広場のような感じで丸い部屋全体が薄暗いですが見えました。

オーガ達は私の方を全部が向いて向かってきます。1匹は倒れていたので斃したのでしょうか。

私も近づいていき、ウォークライの効果範囲ギリギリで止まって、

4匹全部が範囲に入ったのと同時に気合の一声でウォークライを発動します。


狙い通り数瞬全部が動かなくなりました。私は思いっきり息を吸いバトルソングを歌いながら距離を取る様にして回避の準備をします。

その時真ん中の角の生えたオーガの首が宙を舞っていました。


その後はオーガとオークキングが動き出したので、何も周りを見る余裕もないまま回避に専念します。

盾だけ構えて攻撃を回避していましたが本当に必死でした。

オーガの石斧の攻撃速度がかなり早く躱すのが精一杯で、さらに3方向から攻撃が来ていました。

それを右回りに回ってオーガ自身を障害物としてて攻撃をされない様に立ち回ります。

2,3度攻撃を躱しているとさっき一番左の端にいたオークキングをマスターが斃してくれました。


そこからは2匹同時に攻撃をされない様に立ち回りつつ、時間稼ぎです。

一所懸命に逃げつつ、攻撃を回避しているとオーガの首が宙を舞っているのが視界の隅に見えました。

残り1匹になると私もメイスを握って打ち込みながら回避をします。

背面からマスターが攻撃してくれていたのでオーガも注意力散漫な状態でした。

何度も攻撃していましたが確かになかなか倒れませんでした。

マスターがわき腹から胸にかけて斜めにショートソードを刺して止めをさしました。



戦闘が終わると私は喉がカラカラに乾いていて、額や顔に玉のような汗をびっしり書いていました。

息も切れ切れになって尻もちをつくように座って、その場で息を整えます。


その間にもマスターは倒したオーガやオーガハイ、オークキングを次々収納していきます。

私は息が整うとやっと声がだせるようになりました。


「緊張しましたし、怖かったです。」


あんなに攻撃が早いとも思ってませんでし、あの速度の攻撃を複数から受けると本当に危険で、紙一重で躱しせていたと個人的には思っています。


「初めてにしては上手く出来たと思うよ。怪我もしてないし。」


マスターがそう言いながら手を掴んで引き起こしてくれます。

立ち上がると、服についた土埃をはたいて落とし、ベルトのマジックポーチからハンカチを出して汗を拭きました。

落ち着いたところで松明も拾って村に帰ります。

歩きながらマスターと話をしました。


「しかし、依頼書の内容と全然違っているから村の村長に抗議したいけど、昨日の様子じゃ聞かないだろうな。どう追い落とそうかな。」


「結構物騒な事を考えてませんか?」


「オーガハイは余りにも危険だから、これ2スターで受けることが出来る依頼だったけど。普通のパーティじゃ全員殺されてるよ。

オークを見た時点で引き返すような慎重なパーティならいいけど。」


「確かにそう…ですね。」


「大体これ見てよ。奮発してミスリルの矢をオークキングに撃ったけど、頭を貫通してるからこの部分矢尻が少し曲がってるでしょ、もう使えないから。

矢が1回で使えなくなるとかお金が掛かってしょうがないよ。」


「今回の討伐の素材の代金で回収できないんですか?」


「ちゃんと黒字にはなるけど、経費は最小限に、利益は最大でって考えると効率悪いよ。ミスリルがひん曲がるって相当な力が加わってるからね。

普通なら5スター以上の依頼だよ。」


そう言いながら帰りましたが村でもひと悶着あるんだろうなと考えると億劫な気分になりながら帰りました。



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