第31話 中継の街に到着
今日も森の中を歩いて移動します。
朝起きてから準備をして昨日の様な失敗をしないようにと心に気合を入れてから朝食に向かいます。
「魔物や魔獣がいないから戦闘が起こりようがないんで、そんなに力まなくてもいいよ。」
と朝の挨拶が終わった直後から肩透かしを食らいました。
「この森を抜けるのに3日は掛かるけど戦闘はなさそうかなと思うよ。」
森の奥で魔物や魔獣を狩ってる人たちがこの辺りでは多いのかなと不思議に思っていました。
でも何か奥歯に物が挟まったような歯切れが悪い言い方をされます。
本当に3日間森を突っ切る様に進みましたが、旅自体は順調でした。
全然魔物や魔獣と出会わないため2日目からはハサミを持ってハイポーションの素材を探しながら歩いていました。
私は魔物等に合わないよう、森の奥のルートを進んでいたと勘違いしていたくらいです。これも後になってから気付いたのですが。
3日目になると森の浅い部分になって、木々の間から日の光が適度に差してきます。
やっぱり薄暗い中にずっといると気が滅入ってくるという感じがします。
森を抜けて街道にでると日が少し傾き始めていました。
体感が少しずれている感じがありますが4の鐘は過ぎているかなと思います。
そこから1鐘分の時間をかけて歩くとやっと街が見えてきました。
中継の宿場町なのであまり大きくはなく1000人位でしょうか。
イダンでは街に入る時にお金を払わないので手続きもかなり早く入ることができました。
本日の宿を先に決めてから直ぐに冒険者ギルドへ出します。
先ほど5の鐘が鳴っていたので急がないといけません。
冒険者ギルドの位置はどの街でも同じような場所にあるので迷わずにたどり着けました。
目的はクエストボードのチェックとマスターが作った高品質のハイポーションの納品です。
先に時間がかかる納品を済ませてしまいます。
納品の貢献度はパーティとしての貢献にするので私のギルドカードが必要です。
20本分ポーションを納品カウンターで渡して査定をして貰います。
同時に空瓶を20本また仕入れておくのも忘れません。
査定と言っても高品質であるかを全部確認するだけですが、稀に一部普通品質のポーションを高品質の瓶に入れて納品する人がいるらしいのでギルドもしっかりと確認はします。
確認が終るまで遠目からクエストボードを見ていましたが、そんなに依頼は多くなさそうです。時間的に今日の業務も終わりそうですし仕方ないかなと思いつつ待っていると、職員が小さなトレーにお金を乗せて出てきました。
瓶代を引いて金貨21枚もあり、かなり稼げている感じを受けます。
あとで聞いて知りましたが、高品質のハイポーションは3スター以上のパーティでお守りみたいに1,2本持っておき、いざという時に飲むもので常飲するものではないと言われました。
私は使ったことがないので知らなかったのですが、そういう物らしいです。
納品が終わってクエストボードを見に行くとぽつぽつとしか依頼が無く、しかも護衛依頼が殆どでした。
護衛依頼も治安がいいためか、報酬が安い物ばかりです。
魔物や魔獣に襲われるのもありますが、護衛は盗賊除けという面が強いので仕方ないなと思っていると[ゴブリンキング討伐依頼]と書いてあるクエストがありました。
読んでみると天然の洞窟にかなりの数が住み着いているみたいで正確な数は不明、数の多さからゴブリンキングがほぼ確定でいると思われると書いてあります。
こんな時間にこの手の依頼が残っているのは珍しいのですが向かう方向にあるなら受けてみるのもありかなと思ってマスターに聞いてみます。
「ゴブリン討伐が残ってるなんて珍しいですね。問題がないなら受けてみますか?」
「えぇぇ、嫌な予感がする依頼なんだけど受けたいの?」
「私は逆に受けた方が良いかなって感じたんですけど…。」
「この辺りの魔物や魔獣の数が少なかったから、なんか嫌な予感がするんだよなー。」
「だったらやめた方がいいですか?」
「う~ん、大抵の魔物だったらなんとかなるし、受けてみたいなら受けてみる?
基本僕ばかりが依頼を受けてたから偶には自分で依頼を選ぶのも悪くないかな。」
ちょっと考え込んでから考えを肯定するように言いました。
確かに今まで自分からこの依頼を受けたいって言う事はなかったですし
なんだか予感的に受けておいた方が良い気がしたのです。
業務が終わりそうなカウンターへ向かって職員に依頼受注の処理をして貰います。
よく書いてある部分では分からない事と依頼完了の報告が別の街がいいのかを確認します。
「依頼された村からの情報ですが、森の中でゴブリンを見たっていう証言があったので根城を突き止めようと森の中を追って行ったら近くにある洞窟に入っていくのが見えた。
その洞窟自体は昔からあって結構な奥行きがあるので観察していると定期的にゴブリンが出入りしていて数が多くゴブリンハイも結構な数がいたとの事ですね。
安全のために村人は中の詳細な様子までは観察していないが、ゴブリンハイの数が多かったのでキングがいる可能性がかなり高いという推測を強調していましたね。
依頼自体は5の鐘前に私が村からの依頼者にあって聞き取りをして作ったので伝聞ですが間違いありませんよ。
依頼完了の報告も別の街でして貰って構いません。」
受注処理を終え、宿へ帰ると6の鐘になっていました。
宿の食事を食べましたが、なんか微妙だと思いました。美味しくない訳ではないのですが、特段美味しいと思うほどではないというか…。
食事が終わって部屋に戻ってベッドを確かめても、そんなに良い物でもない感じでした。
「今日の宿屋って、中級くらいの値段でしたよね?
なんか値段の割にと食事と部屋の状態が悪いと思わなくもないです。」
「野営食や野宿に比べて良い環境を提供しているってので高いって部分もあるからしょうがないと思うよ。ちなみにここで1人頭銀貨10枚だからね。
一番格安の宿だと土間で藁を入れてある箱の様な寝台の中で寝ることになるかな。
それでも雨風をしのげるし、安全に寝れるからね。」
「やっぱり割高なんですね。」
「安全と新鮮な食事は高いっていういい例だと思う。
ただ冒険者ギルドの宿屋だとかなり格安で素泊まりできるけど、1部屋6人とか8人部屋だからね。」
なるほど、普通の宿屋にした理由も少し察することが出来る説明を聞きながら、装備品を脱いで手入れを行います。
それが終わると水桶に井戸から水を汲んできて体を拭きました。
もう初秋なので肌寒いです。
お湯でなかった理由はお湯の値段が高かったので今日一晩くらいは水で我慢しようと思いました。
だって値段的に5倍は流石に暴利だと思いますよ。
次の日の朝、そこまで寝心地の良くないベッドで目を覚まします。
身支度を整えて食事をして、さっさと宿を後にして目的の村へ向かいます。
ギルド職員に書いてもらった簡易的な地図を見ながら進みますが、私は当然あまり良く道が分かりません。
目印も書いてありますが、街道を進んで2つ目を分かれ道を右とか石塚の所を曲がるとか簡潔すぎると思います。
こういう時は道順をマスターに任せている方が安心です。
1日半歩いたところで村に到着しました。
道中で全く魔獣にも出会わなかったので本当に不思議な感じです。
体感で2,3回くらいはウルフ等と遭遇するような感じなのですが出会いませんでした。この国だと冒険者って護衛依頼とかだけしか出来ないんじゃないかなと思わざる得ないです。
村に着くと村長に所へ依頼の件といつもの修行と慈善行為と見せかけた熟練度稼ぎ(マスター談)を行うための許可を得に行きます。
村長はなんと言うか不遜な態度な人間でした。
「2人しかいないのか?依頼ができるのか?
お前ら冒険者がちゃんとしないと困るだろうが。」
とか
「無料奉仕としてやるのか。
普通は村の顔役である俺に金を納めてさせてくださいというのが筋だろうが。」
と言われました。
若い女性というので舐められたと思われなくもないのですが、特に治療行為にこちらがお金を払ってまで村人全員に無料で行う
しかも依頼の為に野営する場所を貸してもらおうとすると場所代を取ろうとするので、なかなかに強欲な人間みたいです。
野営場所は村の策の外に張ることにしましたけど。
マスターが一番嫌いそうな感じの人間だなと思っているとなかなか良い笑顔をしていたので、色々察しました。
マスターが営業用の笑顔でない場合、笑顔が深くなるほど怒っているというのが分かってきたので、なかなか腹に据えかねてる部分がありそうです。
依頼の下調べをマスターに任せて私は村の集会所兼神殿の前で治療を開始しました。
この村珍しくシャンラール神殿なんですよね。
農業主体の村でシャンラール様を祭ってるのは珍しいです。
今までだと村長が村人に話をして無料で治療が受けられるので何もしなくても人が来るのが普通だったのですが、
座って少しまっていても、この村は誰も来ません。
仕方ないので井戸の傍に行き、村人に依頼で来たのだけど序に怪我や病気の治療もしていることを伝えて不調の村人全員に来てくれるように話をします。
もちろん病気や怪我が酷くて動けない人がいるのなら此方から出向く旨も伝えます。
そうするとちらほらと村人が神殿に来始めました。
腰や膝が痛いという人が大半でしたが、年を取って病気で寝込んでいる人もいたので家に案内してもらい治療を行いました。
6の鐘が近づいてきたのでそろそろやめようと思い、治療に来た村人に全員が来たのか軽い感じで尋ねました。
50戸程の村なので村人の数もそんなに多くありません。
何人かはこちらから出向いたという話をしていると、なんか歯切れが悪い感じで私に何か言おうとしました。
丁度その時にあの村長とその家族が来て、俺たちの治療もさせてやると言ってきました。
その村長をみると村人はそそくさと立ち去って何が言いたかったのかわかりませんでした。
その夜食事をしながらマスターに依頼の下調べのことを聞きました。
そうすると依頼内容と全然違うという事実が判明しました。
「洞窟に魔物が生息しているのは間違いなかったけど、ゴブリンじゃなくてオークやオークハイ、オークキングがいる。
さらにオーガも数体いるな。
やるなら依頼内容と全然違うから結構気合を入れないとダメだと思う。
ここで選択できるのは依頼内容が虚偽だったと冒険者ギルドへ行ってクエストのキャンセルをする。この場合証拠が必要だけど依頼内容と違うという証明が出来ればクエスト未達成の違約金とペナルティは受けない。
もう1つの選択肢はこのまま依頼を遂行して、ギルドで報酬の受け取り時に金額を釣り上げて追加報酬を貰う。」
マスターが最初に魔物の情報と言ってくれて、選択肢を指を使って説明してくれます。
「うーん、どうしましょうか?
村の人と話しましたけど、あの村長達以外は普通のどこにでもいる人たちみたいなんですよね。」
そう言って私が1人で治療をしていた時の様子を伝えます。
あと歯切れが悪い感じで何かを伝えようとしていた人がいたことも話しました。
「あの村長はちょっと気に入らないから、ぎゃふんと言わせたいというのはあるけど…。」
と前置きしたうえで
「実際やれるとは思うけど、魔物の数が多いから出来るだけ何匹か釣り出して、数匹ずつ仕留めていく感じで時間をかけた方がいいと思う。
間違っても最初に突っ込んでいくような事はできないな。」
とある程度の段取りも考えていることを伝えてくれます。
というかぎゃふんって初めて聞きますがどういう意味なんでしょう。
「マスターが大丈夫だと思うなら大丈夫なんでクエストはしましょうか。」
「死闘にはならないようにするから大丈夫。
釣り出す手段も考えてるし、ただどれだけ出てくるかが分からないから
いつ終わるかが分からないくらいなんだよね。」
「それでやりましょう。」
いつもより少し大変なくらいかなと楽観的に考えて返事をします。
死闘という状態は今まで経験してないので分からないですが、想像はつきます。
「あ~、あと晩のうちに村長周りの事を少し調べてみるよ。」
密偵のような事をするのでしょうか?
丁度いい機会なので調べて貰うのが良い気がします。
私の依頼をマスターが達成できるのかという事の試金石にもなりますし。
「ちょっと村長には思うところがあるので出来るならお願いしていいですか?」
「任せておいてよ。」
そうマスターが言っていたのでそっちはお任せすることにします。
私はお風呂に入ってからいつもの様にして就寝しました。
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