第27話 ペレレンカ川川下り見た目より揺れて大変です

今日の3の鐘の前に川下り屋まで行かないといけないので、

朝は少し早めから準備をしておきます。

朝食はグラスでジュース2杯とかなり軽めに取りました。


宿屋で部屋の鍵を返すとちょっと待つ様に言われました。

不思議に思って待っていると従業員が確認を終えたのかカウンターの人に耳打ちしています。そうして今度は後ろにある部屋番号が掛かれた棚にある引き出しを部屋の鍵を使って開けた備え付けの棚からお金が入ってる袋を取り出します。

「お預かりしていたお金ですが、宿泊代はこちらからの支払いでよろしいでしょうか?」


「えぇ、そちらのお金から清算をしてください。」

そう言って宿泊代を引いた残りを受け取ってます。


私は不思議に思ったのでマスターに聞きました。

「マスターあのお金はなんだったんですか?」


「あぁ、泊まっていた宿屋は普段よりよかったでしょ?

置いてある調度品とかサービスとか。」


「たしかに、そうでしたね。」

置き鏡も置いてありましたし。あれだけでも金貨5枚以上の価値があります。


「宿泊時に冒険者ギルドカードを見せてはいたけど、部屋に置いてある鏡とか窓ガラスもそうだけど、そういうのを破損されるとお店としては大損害な訳だ。

そこで最初にデポジット預り金として宿泊量の何倍ものお金を預かっておいて、チェックアウトというか退室手続きの時に従業員が物品の破損や部屋が酷い状態ではないかを確認して問題が無ければ、デポジットを返して貰えるんだよ。」


「高級な宿屋はそういう風なのですか?」


「何度も宿泊してたり、信用があるとデポジットを取られない事があるけど。

変な人を泊めないというのと、損失を防ぐには良いと思うよね。」


「逆に言うとそういう人がいるって事ですね。」


マスターはそう言いながら横道おうどうな人の話もしてくれます。

今まで宿の宿泊手続き等は私がすることも見ることもありませんでした。

冒険者になり立ての頃にはそれ相応の宿でないと別の意味で危険な事があるので宿のグレードを態と下げていた事も分かりました。

その為に安宿に泊まっていたからこその硬いベッドだったという事ですね。


雑談をしながら川下り屋まで行きます。

出発まではまだ半鐘分の時間は優にありますが、出発は時間が多少前後するため。早めに来ておくことに損はありません。


今日の乗船チケットを渡して切ってある半券と突き合わせて本物かを確認します。

このチケットも買う時に半分を態と切って、半券を突き合わせることで偽造を防いでいます。

その破る際に不規則に曲がったりしている定規みたいな物に沿って切ることで、全てのチケットが同じ形に切れない様にしています。

こういう所はかなり考えられていると感じられました。


乗船の手続きを終えた私達は順番が来るまで待合所となっている所でベンチに腰掛けてまっていました。

後から来た人が先の便の船に乗ったりするのを眺めたりしてると、私達の載る船がきます。

桟橋に船が横付けされてロープで係留されます。

船の上側に腰を掛ける所が2席づつ5列あります。

私達が最初だったのでマスターが船の真ん中の3列目の席を隣同士で確保します。

座って待っていると他の乗客が乗って来て 荷物を船の先端部分や後ろにある荷物置き場に置いています。

荷物も網のようなもので固定しています。

私は荷物の事はマスターに持って貰っているので全く考えませんでしたが普通は大きい背負いの荷物と手提げの荷物を持って移動しますよね。


ちなみに船頭が緊急時には手荒い操船を行うために荷物が途中で水の中へ落ちた場合にも保証は全くしないという事を言っています。

あと水を被った場合にも船頭に文句を言わない様にとも言っています。

これは出発前の定型の警告みたいです。

船を操る船員は気が荒い人が多いと聞きますから、文句を言ってきたら投げて川に放り込みそうです。



そうして定刻になったので川下りが始まりました。

最初は本当にゆったりとし進んでいきました。

街の側は水深も浅いため波も穏やかでのんびりしたものです。


段々街から下流に行くと川の深さが増してきました。

そうすると流れが変わるからか少しづつ船も揺れてきました。


「結構揺れるんですね」

私はマスターに話しかけます。


「まだこの辺りは街から近いからそんなに酷くないよ」


そう言って街から離れるほど河の整備が行き届かなくなっていくので流れが急な箇所などがあることを言われます。

さらにイダン共和国との国境付近になると双方が整備をしていないため大きな岩があったりすることも教えられました。



川下り自体は2鐘分の時間もかからないくらいです。

しかし半鐘分くらいはちょっと揺れるな位でしたが

段々と川からせり出した大きな岩が目立ち始めました。

そうして川幅が狭くなっていきます。

川の端の部分は、この高瀬舟を通せるような感じで上流に船を引いていけるように整備しているようです。

下って行く船は真ん中を川下りしていくので、段々と揺れが大きくなってきて、左右だけでなく上下にも揺れ出しました。



そうして上下に揺られるまくりながら河を下って行きます。

これは確かに荷物を載せた船の方で下ると物凄いことになるような気がします。

まだ前の座席の後ろに手で持てる取っ手が付いていてそこを持って体を支えることが出来るのでマシですが、一番前の咳だったら景色はいいかもしませんが揺れまくって大変だと思います。



景色を楽しむ余裕がない状態が少し続いたあとイダン共和国との国境に当たるところに川の間に桟橋があり門になっているところが現れました。

ここで一旦止まって身分証の確認をして、お金を払って入国します。

冒険者は魔物狩りなどで国を跨いで活動することが多いため入国料金は3スターからかなり安い値段で行き来できるようになっています。

2スターまでは登録した場所で腕を磨けということですね。



この身分証の検査の時に商人の人、主に行商人は荷物の申請をして違法な物品などの検査を受けていました。

冒険者も頻繁に行き来して商人の真似をしている人もいるので、そういう人は荷物の検査があります。

行商人の人は軽くて儲けが大きい物を取り扱っている場合が多いので、結構入国税を取られていました。


それが終わると再度川下りの時間になります。

少し休憩みたいになっていたので、気分転換に丁度良い時間でした。

また流れが荒い部分を船が激しく揺られながら川下りをしていきます。


結構な時間川を下っていると段々と、今度は水の流れが緩やかになってきました。

周りの景色が上流と違っているのが分かりますし、何より周りの景色をゆっくりと楽しむ余裕が出てきました。


段々と両脇の堤が立派になってきました。ホーアンの街が近づいてきたのかもしれません。

こちらは堤の上に道があるのではないようで、誰も堤防の上を歩いてはいません。


遠くに街が見え始めました。

遠目からはホーアンの街は城壁がないように思えます。

段々と近づいてくると本当に城壁がありません、

街はぐるりと石壁で囲ってあるようですが、飛日根がようと思えば簡単に超えられる程度です。

物珍しい光景だなと思いながら見渡していると船が街の中へ入っていき桟橋に着きました。

私達は荷物が無いので直ぐにおりましたが、荷物がある人は荷物を取りに言っています。場所によっては荷物に水が掛かっている所もありました。

さらに降りるときに見ましたが顔が青くなっている人も数人いました。


降りて簡単な身分証の確認のみで街へ入れました。

船着場から歩いて街の中心部へ向かう通りは道幅が広いため人がごった返している感じではありませんでした。


やっと落ち着いてマスターと話ができます。

「川下りと言っても、結構船も揺れましたし怖かったですね。」


「それでも一番揺れにくい真ん中に座っていたから、まだ良かったと思うよ。

あんなに揺れると僕も思ってなかったし。」


「マスターも初めてだったのですか?」


「川を下らない陸路もあるから、そっちは通ったこともあるんだけどね。

今回は折角だし一度川下りもしてみようと思ってたから丁度いいやって乗ったんだよね。

半分観光の様なものだよ。」


「普通川下りは観光の様なものではないと思いますが…。」

川下りが今日の様な感じであれば裕福な人や貴族などが川遊び等をするには危険だと思いました。


「まぁまぁ。それは良いとしてギルドで地図の確認と西に行く護衛クエストがないか見てみようか。」


「良くはないと思いますが…。」


そうしてギルドへ行ってマスターがクエストの確認をしている間に、手隙のギルド職員を見つけて、街に入るとき位に疑問に思ってたことを聞いてみます。


「なんでこの街って周りを囲んである壁があんなに簡素なんですか?」


「この街には初めて来られたというか…。アーツェスト帝国から来られましたか?」


「そうです。先ほどここに着いたばかりです。」


「イダン共和国は街の出入りに関しては厳しくないんです。街に出入りするだけでしたら税金はかかりません。

その代わりに物を売るときに税金がかかるようになっているんです。

街の商店やギルドでの売る時にも適用されますので、気を付けてくださいね。」


地域が変われば全然違うんだなと感心して思っているとマスターが戻ってきました。

「ここから西行で丁度良い片道のみの護衛ってのがないから、どこでも大丈夫な常設の依頼をしながら西を目指そうか。」


「それは大丈夫ですよ。

常設依頼の納品でも、イダン共和国で物を売る時に税金がかかるって知っていました?」


「もちろん知ってるよ。イダン共和国は商人が連合を組んで作った国だからね。

珍しいものほど高値で売れるけど、税金も取られるからね。

その代わり中継貿易で設けているから海の港と川沿いの街は税金が多く取れるけど安い感じの設定になっているからね。

街の商人に商品を売るまで街に入ったりするときに税がかからないから長距離で売れる商品を持ってくる商人も多いよ。」


「そうなんですね~。」

私は知らなかったことなので感心しながら聞いています。

補足として色々なことを教えてくれるマスターは良く知ってると思います。


「それよりも今日の宿はどうする?ちょっと高めの宿の方がいいでしょ?」


「ベッドが硬くない方が嬉しいです。

あっ、そう言えばマスターにお願いしようと思っていたんですが、机の上に置く置き鏡を買って貰えないでしょうか?

今日明日に欲しいわけではないですが思い出した時に言っておかないと忘れてしまうので。」


宿というところから連想して鏡の事を思い出したので今伝えておきます。

大体鏡は高いのでそんなに簡単に買える物ではありません。

置き鏡でしたら多分金貨5~8枚くらいはするんじゃないのかなと思います。

手鏡があるので当面は問題ないですし、鏡の産地に行くときにでも変えたらいいな

くらいの感覚です。


そこからマスターが調べて来た宿屋に行って手続きをします。

部屋で少し休んだら夕食です。お腹が空いているので晩御飯は楽しみです。

今日は船酔いもしなかったのでよかったですし。

ご飯をたっぷり食べていたらあの船旅というか川下り中に気分が悪くなった可能性が高いです。

という訳で夕食まではのんびりと休憩をしました。

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