イダン共和国編
第25話 オリージャから川下り
次の日の朝、私は少し気恥ずかしさを感じていました。
起きるといつもと同じで1人でしたし用意をして、食事に行くときには平常心になっていました。
そうして朝食を食べながらふと疑問に思ったことを聞きます。
「そういえばマスター他のパーティメンバーって入れないんですか?」
「…特に考えてなかったけどいた方がいい?」
「2人だけなのでマスターが入れたくないのかと思ってました。」
「
「という事は、今からはメンバーが増えるって事になりますか?」
「その辺りは…パーティリーダーがサーニャだし。サーニャが入れたかったら入れればいいんじゃない?」
「そうなんですね。じゃあ私がメンバーを決めて良いんですね。」
「別にハーレムとかそういうのを作ろうって欲は無いし。
…いやちょっと待とう。」
急に変な感じに待ったをかけてきました。
私が怪訝そうな様子をしていると。
「入れるメンバーはサーニャが決めればいいけど、呪紋を刻むことと僕の夜伽を追加しよう。」
「さっきと言っている事が違いませんか?」
「いや、よく考えてみてよ。このパーティには外に漏らして欲しくない情報が結構ある。だから呪紋で情報規制をしておきたい。」
確かにこの見た目より大きいテントとかマスターの本当の収納容量とか。
他人には秘密にしておきたい事が多くあるのも分かります。
「序にこんな容姿だから好き好んで僕に抱かれたいと思う人はいない。」
昨日マスターの容姿について少し言いましたから、少し嫌味なのかと邪推しましたが、そうではないようです。
よくよく聞いてみると昔無理やり娼館に連れていかれて、そこの女の子全員からお
「兎に角、この条件でお金目当てとか変な目的の人間は殆ど防げると思う。」
咳ばらいをし気を取り直してマスターが言いました。
「あと序に、この条件にしたのは何人も一斉にメンバーを入れる気がないから、今の状態で1人だけ男性をパーティに入れると、別の部屋にしないといけないし。
パーティで1組の男女が同室で一緒に寝ていて、1人だけ別ってのは普通は結複雑な気分になるから。
まぁ…僕は知ってるから、そういう状況を。」
マスターの体験談も入っているみたいです。
街とかで娼館代を負担したりとか、そういう取り決めも必要で面倒だと言ってました。
「それにこういう条件を付けてればサーニャが可哀そうとか、そういう単純である意味独善的な感情でメンバーを決めることがないとも思うし。」
「そんな事はしないと思いますが…。」
「一方的な言い分しか聞けない状態だと判断材料が足りなくなりがちだから。
懸念としてはもっともだと思うんだけど、少しの間は表面を取り繕う人間なんて幾らでもいるから。
パーティ解散の理由なんてほとんどの場合、報酬の分配で揉めるか人間関係なんだから。」
マスターが経験した色々な事から起こると思われることを想定して、不和の芽を事前に摘んでおきたいという意味もあるのですね。
「あっ、そうだ。…新しく入ってきた人は既にいる人を”お姉さま”や”姉さま”って呼んでもらう事にしよう、で新しく入ってきた人は愛称や名前で呼ばれるってのをどう思う?」
さも良いことを考えたとマスターが提案してきます。
会話の繋がりが分からず少し混乱します。
「その”お姉さま”って呼ぶことに意味がありますか?」
「このパーティはあくまでサーニャが中心になって纏めていくパーティで、僕は表向き裏方のポーター役でしかない訳だ。
そういう状態ならパーティを乗っ取ろうと企んで、さっきの2つの条件も嫌々ながらも呑む人がいるかもしれない。
だけど年下の人間にずっと”お姉さま”と言って、指示をされるのを良しとする乗っ取りを企む人はかなり少ないと思う。
そういう人は自己意識が高いから、見下されてると思うっと思う。」
考えてみますが、あまり間違ったことを言っているようには聞こえません。
ですが見下されてると思うものなんでしょうか?
「細かい仕草や表情に拒絶の意志ってのが見えるものだからね。
それにサーニャがもし年下ばかり入れたとしたら年下の人達を全員、~お姉さまとかずっと言うのは中々辛くない?」
「確かに…そうなのでしょうか?
…それってマスターにも適用されます?」
「はっはは、サーニャはなかなか冗談が言えるようになってきたみたいだね。
心配なら加入前に全員で加入の是非を諮ればいいと思うよ。
ただし最終決定はサーニャが決める事ってのを忘れないように。」
少しだけ目が笑ってないのが気になりますが、一様確認の意味で聞いてみただけです。
私が自分で選びたいという気持ちを尊重してくれているみたいです。
逆に考えると自分と気が合う人を入れることが出来るという事。
気を使わないのは良いことです。
食事を取ってオリージャに向かって出発します。
今日の4の鐘が過ぎた頃に到着予定です。
そうして街に一泊して高瀬舟で河を下る予定です。
初秋の月になってきたので段々涼しくなってきています。
日中の太陽の日差しも夏の焼けつくような日差しから、段々と緩やかにな優しい暖かさを感じる日差しに変わってきています。
歩いていると街道が段々と河へ寄り添う形になり、堤防の上の道がある土手道になってきました。
下流にあるオリージャはまだ見えませんが、この辺りは今が収穫時期になのか上流から船一杯に麦袋を荷を積んだ高瀬舟が何艘もオリージャに向かっています。
丸太を括って簡易的な筏にした船も船員が2,3人で長い棒を使って筏を操りながら河を下っています。
微かな風使い岸から船を引いて上流に向かっている船もありました。
歩いていると堤防の上なので視界一面に麦畑が黄金色に色づいて風で揺れて波の様に見える光景が見えるようになってきました。
その光景を見ながら歩いているだけでも楽しいと思えます。
街が近づいてくると今度は人も増えてきました。
段々と色々な街道が合流しオリージャに向かって一つになっていきます。
そうしてオリージャに着くころには物凄い長い行列になっていました。
オリージャは河の荷下ろし場を中心に街が作られています。
人口自体は1万人くらいしかいないですが、宿屋や食事処、商店、商会、倉庫が多く、街自体はかなり範囲の広い街になります。
街道も広く馬車4台が横並びで通っても余裕があるくらい広く作られています。
河から荷物の持ち込み防ぐため、街に近づくにつれて底が浅くなっているので、船底が深い船は乗り入れができないようになっています。
水も澄んでいるため潜った人がいるのと見えるようになっています。
そして街をぐるりと囲うように城壁があります。
高さ自体は100ツリールくらいなので防御のためというよりも人の出入りを監視する目的だと思えます。
衛兵が等間隔に立っているのが、光を反射する鎧から分かります。
4の鐘の頃には街に着いていましたが、入るための列がかなり長く、左右2ヶ所の検問で処理をしていてもたっぷり1鐘分の時間がかかりました。
商団が多いため荷馬車も多くなり、積んでいる荷に関しては箱の中を
なんというかただ並んでいるだけなので余計に疲れます。
やっと街に入ると開口一番私は言いました。
「とても疲れました。人が多いとは聞いてましたから多いと思っていましたけど。
並んでいるだけで疲れてしまいました。」
「港を持っている街は大体こんな感じで街に入るのに時間がかかるよ。
この街は城門部分は荷馬車が4台は横に並んで通れる幅で街に入る列を2列で処理して、街から出る列を街の中で手続きして真ん中を通して通行させてるからまだ速く処理出来てる方だよ。
これ東西南北の4つの城門を使っててこれだからね。」
「並ぶのに疲れるので並ばないで入りたくなりました。」
「それを防ぐために衛兵や城壁があるからね。狡いことを考える人間対策はされているよ。」
やっぱり私みたいに考える人は一定数いるようです。
それを防ぐ試みを勿論取りますよね。
「何か暇をつぶせるものを用意しておかないとダメかな?」
「できれば何か用意してくれると嬉しいです。」
並んでいると周りの話が聞こえてきましたが、
あまり面白い会話をしていないので時間が経つのが遅く感じてしまいました。
入ってすぐの街の中心通りは人通りも多いのでマスターからはぐれない様に付いて行きます。
というかはぐれそうになったので、私から手を繋いで歩いていきます。
馬車が通る場所と人が歩く場所が分かれているのが幸いです。
それでも人とすれ違う時にマスターのようにするすると人の間を抜けては歩けないので手に力を入れて置いて行かれない様にしながら進みます。
向かっていた先は意外な事に冒険者ギルドでした。
「冒険者ギルドに用があったのですか?」
不思議に思ったので尋ねます。
「冒険者ギルドはどの街でも同じような場所にあって、訪ねやすいし。
ギルドの中には街の宿屋なんかの主要な場所を記した地図が貼ってある場合があるんだ。
ここは交易都市だから人の出入りが多いし、大都市は一々職員も尋ねられたら面倒だからね。」
そう言いながらマスターは地図を見て宿屋などを確認しています。
地図を見てもどの城門から入って来てどの道を通ったのかよく分かりません。
場所の把握が終わったのか「じゃぁ行こうか。」と自然な感じで手を握って来ました。
手を引っ張らない様にマスターに付いて行きます。
そういう時にはマスターの身長が小さいので話しながら進むのは大変です。
なので目的地までははぐれたりしない様に進んで行きました。
途中で細い路地も入って色々と通ったので1人ではとてもじゃないけど来ることが出来ない場所です。
そうして着いた宿屋は私が見てもどうやっても格式が低いと判断できる要素が一つたりともない店です。
私はマスターに
「ここってかなり泊まるのが高いと思うんですが…?」
と言います。
「この店の紹介状を持ってるから大丈夫!
泊まれたなかったら。それはそれでいいし。」
別の意味で不穏な言葉を言っています。
マスターが取りえず紹介状を高級宿の従業員へ渡しました。
そして私に「これを持って魔力を使っててね、この方向青い録画できるから。」
そう言って渡してきます。
「今から取っておいても大丈夫だし、慣れるためにも魔道具を使っておこう。
この真ん中の青い方向を記録するから間違えない様に。」
練習としてずっと動かしています。たしか魔道具は使う時間で自分の体内魔素を使っていたはずです。
マスターいつまで撮らせる気なのだろうと思っていると。
高級宿の責任者の方が来て、「どこで盗まれてきましたか?」
といきなり聞いてきます。
私が前に出ようとするのをマスターが手で塞いで前にいます。
対応はマスターがするみたいです。
「本人にあって直接貰いましたが、
系列でホテルをやってるから、これを見せれば格安で泊まれるよ。
と言われていたので、こちらで使わせてもらおうと思ったんだけど?」
「私はこの宿の支配人をさせて頂いています。
お客様の身なりから判断してこの格式の場合ですと聊かご苦労が多く不便をおかけするかと思います。
できればお引き取りを。」
失礼にならないような感じで言っていますが帰れって事ですね。
「そうですか~。そういえば紹介状は返してもらえたりします?」
マスターはのほほんと答えています。
「何かの手違いでお客様の手に渡ってしまったようです。
当方にてきちんとした処分をしておきますので紹介状はお気になさらないでください。」
「帰ってこないのか~。困ったな。
細い縁でも繋がってればと思ったんだけど。」
「お客様のご心配がないように我々も職務に忠実にさせて頂く所存です。
さあどうぞ。お帰りは彼方になっております。」
帰りとして案内されている裏口に進んでいる時に
「この対応ってやっぱり商会全体で教育してるの?」
と不思議な事を聞きました。
「もちろんでございます。我々は商会長から色々な知識、マナーなどを学んでおります。
当然相応しくないお客様への対応も。そのような人間を追い払うのが我々の仕事の1つです。」
とにこりと貼り付けた笑顔でいいます。
「じゃあどうもありがとうございました。」
そう言ってマスターが店を出てから私に誤ってきました。
「あそこだと川面が見える部屋に泊まれると思ったんだけどね。」
しょうがないからもう一度ギルドへ行こう。
そうしてギルドへ着くと地図を見に行くかと思ってそちらにいると、
マスターはギルドの手紙便の依頼をしていました。
内容を読んだら怒られるかと思いつつも読むと
拝啓
何度か一緒にお仕事をさせて頂きました。
その折感謝の気持ちということで、
商会が経営している宿に泊めて貰えるとの商会長から直書の介状を頂き、大変うれしく思ったものです。
さて初秋の月になりそろそろ旅をするのもよい季節になったと感じておりました。
本日オリージャにて商会長の訓示を受けた従業員から相応しくない者は近づけさせないとの評価を頂きました。
更にまた間違いで紹介状が手に渡ると困るので処分していただけるそうです。
此方としては友好的な関係が気付けていると思っていたのですが残念です。
私個人と私の所属する「聖銀の乙女」と商会が無縁となってしまうため
この様なお手紙を送ることも失礼に当たりますが
お体にお気をつけてお過ごしください。
草々
普通の手紙かと思ったら思いっきり喧嘩を吹っ掛けてるような文章でした。
マスターは封蠟して送り賃を払っています。
「あの…マスター…あれはかなり好戦的に受け取られてもしょうがないような内容だったと思います。
「商会長とは何度か仕事で一緒をしたことがあって、儲けを出すのに協力したことがあったんだ。
指名依頼も数回受けてたからね。」
関係性としては悪くないような感じを受けます。
「折角オリージャで泊まれるのだから川面を見ることができる良い部屋にしようと思っただけなんだ。
だけど店員があんな態度だったでしょ。しかも商会長からそういう教育されてるって言われたら。
あれだけ協力したからこそ悲しくてね。」
「ちなみにどんな協力を?」
「馬を交代させて10日かかる日程をミスリル鉱石2
その時に物凄く感謝されて直筆の紹介状をもらったんだ。
恩を仇で返されるとはこの事だよ。」
「まあ手紙は送ったし
さっきよりもグレードは落ちるかもしれないけど、高い宿へ泊まろう
美味しいお魚の料理が名物みたいだから楽しみだろう?」
私が食いしん坊の前提で話してきているのはちょっと腹が立ちます。
だけど確かにお魚料理は珍しいので楽しみです。
そうしてマスターおススメの宿へ泊まりました。
高い宿だからかそれなりの人しか止まってないようです。
ベッドのお布団がここのはふかふかで柔らかい事に感動をしていました。
これでやっとゆっくりできます。
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