第23話 オークの納品、そして帰路へ。

宿屋より快適なベッドのあるテントで1夜を過ごし。

朝朝食を食べながら本日の予定を聞きます。

「昨日オークは十分狩ってるから、このまま街に戻ろう。」

そう言われました。

「確かに20匹以上ですから多い…ですか?」

マスターと一緒にそれ以上のゴブリンを斃したこともあるのでちょっと疑問形になりました。

「うんうん、いい傾向だ。だけど普通のバーティだと1日に3~5体くらいしか狩れないからね。」

「あ~なるほど、マジックバックを持って無いから沢山倒しても持ち運びが出来ないってことですね。」

私は納得しました。肉の持ち運びが大変なので多く倒しても捨てていくしかないのでしょう。

…そう思っていましたが、後日普通のパーティはそんな数をそもそも狩ることが出来ないという衝撃の事実を知ることになるのです。


ちょっと物思いにふけっていると、マスターから

「そう言えば昨日腰が少し痛かったって言ってたから朝食後にマッサージをしてから街に帰ろうか?

その方がギルドの中も空いてるだろうし。」

「今日は痛みもないですけど…。そうですね折角ですからお願いします。」

冒険者は体が資本ですし、今日は休みみたいになるでしょうから提案を受けます。

そうしてマスターのマッサージを受けました。今日は腰の部分を特に念入りにしてくれたみたいです。

というのもまた寝てしまっていたのでして貰っている時の記憶がありません。



マッサージを終えて、準備をしてからテントを片付けて街に戻ります。

お昼は棒状のドライフルーツが入った柔らかいクッキーみたいな物を食べて移動しながらすまします。片手で持って食べることが出来るので、コップを持ちながら食べることが出来るので楽です。

行儀的にはちょっと悪いですけど。



3の鐘半くらいに街に到着しました。街に入るために門の行列に並びます。

街に入るときはお金の支払いがあるので、出るときよりも時間が掛かります。

冒険者ギルドに到着するともう4の鐘が近くなっていました。



冒険者ギルドに入るとやはり人が少ない時間でまばらにしか人がいません。

買取カウンターに行ってオークの買取を頼み、ギルドカードを渡します。

その際に量が多いこともマスターが付け加えて倉庫に置かせて欲しいと言いました。

なるほど、量が多い時にはそういう部分も気を付けた方がいいのですね。

心にメモを取っておきます。



そうしてオーク肉で一杯の倉庫の空いている所にオークハイ1匹分、オーク14匹分をマスターが取り出して置いていきます。

討伐部位に関しては全部渡します。

そうして査定を待っている間に

「オークハイは1匹だけなのですね。オークも14体しか売らないのですね。」

マスターにこっそり聞きます。

「買取無制限って事は冒険者ギルドの底値での買取を保証しているってだけだからね。

ただ討伐証明を提出するから、ある程度分だけ売ってるだけ。

人口がここより多いヒッペアストルムに戻って売った方が高いよ。

ブラッドバッファローも向こうで売る方が高く売れるだろうし。」

売値の部分も考えているのですね。

「ブラッドバッファローは討伐クエストはなかったから、これもヒッペアストルムで討伐証明部位を提出して貢献度を貰っても変わらないからね。

それにブラッドバッファローはザドルノフ商会が戻って売り捌く腹積もりをしてるから、オークも商会経由で売ってしまおうかと思ってる。」

「結構値段が違いますか?」

「オークハイは2倍くらい違うよ。あれって高級食材になるからね。

オークハイを全部売る代わりにブラッドバッファローを1体分は確保しようと思ってる。塊肉でアサードを作るから楽しみにすると良いよ。」

「聞いたことのない料理ですけど、楽しみにしてます。」

マスターの料理で変な味付けなハズレの料理はなかったので楽しみです。


そんなお腹が空きそうな話をしていたら査定が終わりました。

買取金額が金貨2枚と銀貨2枚、銅貨80枚です。オークハイとオーク13匹分丸々の買取としては安いのかな?と考えてしまいます。

討伐の貢献度は私のギルドカードに入れて貰いました。若干ギルド職員が討伐部位の多さに驚いていた気もします。

私の貢献度なのは早めに3スターになってた方が都合がいいらしいです。


ギルドを後にすると宿へ行き、ザドルノフ商会の人を探します。

御者をしていた人が連絡要員として宿にいたので水樽の場所を聞きます。

約束の時間の前までに水樽を全部マスターのバックの中に入れてしまいます。

馬車と馬を駆りて水樽を運んだりしているので時間が超過すると借り賃レンタル料金の上乗せがあるので、商会の人もほっとしていました。

これは連絡はしていましたが、私達が宿に戻っていなかった為心配だったみたいでした。


その後は市場へ行って香辛料などを中心に見て回ります。

交易都市なので私も知らないものが多々あります。

マスターは目ざとく色々見つけて香辛料や調味料を買い込んでいました。

この辺りは冒険者で各地を旅しているので知ってる事が多いのだと思います。

ただ支払いで今日の稼ぎの内、ほぼ金貨2枚を使っていました。やっぱり珍しいものは高いです。


そんな感じで買い物を済ませて宿に戻り、失礼ですがあまり美味しくない料理を食べて休みました。

後日旅の途中でザドルノフ商会の人に聞いたら、馬車を置く場所にカギが掛けられる小屋で自前でカギを用意しておけば宿の人間も入れない為商品を安全に保管しておけるので定宿にしているのだとか。

そして案の定硬いベッドだったので腰が痛くなりました。


次の日この街でやることを終えた商団は帰路の旅に着きました。

行き同様私達は後方の警戒をしています。

初日は何事もなく終わりました。

2日目の4の鐘半くらいの休憩時に、マスターが「ブラッドバッファローが3匹いるけど狩るか聞いてくる?」と言いました。

「態々狩りにいかないとダメなんですよね?」

「300ツリールくらい離れてるから襲われないけど、狩るかどうかの判断は総リーダーに任せた方がいいと思う。」

「そうですね。報告してきます。」

バロンさんの所へ行こうとすると、肩を掴まれてました。

「ちょっと待って、この前怪我をしたパーティがいたって話をしてたよね?

3匹だから今回はサーニャが突っ込んで全部の前脚を折って止めを他の2パーティに任せたら?」

「確かにその方法の方が楽そうですね…。

分かりました。提案してみます。」

ブラッドバッファローの動きなら3匹同時に来られても突進は避ける事ができます。

瞬時に判断しないとダメなのは攻撃する順番くらいなものでしょう。

そう思いながらバロンさんのところへ行きます。

「300ツリールくらいのところにブラッドバッファローが3匹いますけど、どうしますか?」

そう報告します。

「狩っても持ち運べないから、進路上じゃなければ狩らなくていいだろ。」

「あ、持ち運びは大丈夫ですよ。私達が持ちますし。」

マスターに直接聞いてないですけど、ああいう感じで言ってきたって事は収納に関しては問題ないって事だと思っています。

「…そうか。ちょっと待っててくれ。」

そう言ってちょっと離れた位置にいたザドルノフ商会の人の所へ行き、相談を始めました。

戻ってくると、

ポーター荷物持ちも一緒に連れて行って倒して即回収すれば時間的に問題ないから素早く行動しよう。この周りの安全は確認できてるからな。」

私もマスターを呼びに行き、先ほど決まったことを伝え一緒に来て欲しいと言います。

マスターはニコニコと付いてきています。

ブラッドバッファローの位置まで移動しながらバロンさんに作戦の提案をします。

「この前の怪我をしていた件があるので、私が取り合えず突っ込んで攻撃するして、その突進の止まったところを皆さんで止めをさして貰ったらどうかと思うのですが。」

「それは…大丈夫なのか?」

「問題ないです。」

冒険者は出来ない事は言わない、提案しないという不文律があります。

「じゃあ最初突っ込んでもらって、少し遅れて俺たちが詰めていく感じにするぞ。」


前と同じ100ツリールくらいからまず私1人で一気に突っ込んでいきます。

当然の様にブラッドバッファローも突っ込んできますが右から斜めのような感じで突っ込んできます。

私はバトルソングを歌いながら突っ込んできたブラッドバッファローの左前脚を殴れるように位置をずらします。

そして1匹目を殴った後2匹目の左前脚を殴れるようにすぐに左側に飛ぶように移動します。

そうして2匹目の左前脚を殴ったあと。2匹目が目の前を通るタイミングでギリギリ当たらないように右に移動し3匹目の右前脚を後ろから殴ります。

全部の前脚を上手く折ることができました。

脚を折られてつんのめって地面に角がささっているブラッドバッファローに「金の水滴」と「水面の輝き」が攻撃して止めをさしています。

あっけなくい程簡単に戦闘は終了です。

3匹ともマスターがバックに収納し、商団の所へもどります。

途中バロンさんが微妙な顔をして、

「嬢ちゃん、本当に2スターなのか?」

と聞いてきました。

「はい、2スターにこの前なったばかりです。今回のブラッドバッファローは前より上手にできたと思います。」

私は自信満々に答えます。

今日の動きはちゃんと前脚3匹分折ることができましたし良かったと思っています。

「いや、…そういう意味じゃないんだが……。」

何かを言いたそうにしながら言わないバロンさんの様子がよくわかりません。

マスターをちらっと見ると満足そうにしているので、何も問題はないはずなのですが?


商団と合流して帰路の旅路の行程を順調に消化していきます。

途中ウルフが何度か襲ってきましたが当然の様に問題などあるはずなくヒッペアストルムに到着しました。


ヒッペアストルムの街に入ると「金の水滴」は依頼達成の報告へ冒険者ギルドに。商団はそのままザドルノフ商会に行きます。

そこで往復の水樽を運んだ報酬を受け取ります。

そしてザドルノフ商会の倉庫へブラッドバッファローの7匹分の素材を置き、ウルフも同じようにおきます。さらに私達が狩ったオークハイ2匹とオーク10匹分の素材を出して買取をして貰います。

ブラッドバッファロー1匹分は丸々こちらで買う事にします。購入費用はオークの売却金額から引いて貰います。

買取は後払いにして貰って、売った金額から査定をして貰う形にします。

その為時間がかかるので冒険者ギルドの「聖銀の乙女」宛に送って貰います。


こうして2度目の護衛任務も問題なく終わりました。

そうして休みを挟みながら護衛依頼を受けると言う生活を続けていき

私個人のランクが3スターになり、パーティランクも3スターになりました。

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