第22話 初めてのオーク狩り
朝の日が出る直前の最後の夜警番はマスターと2人なので、
昨日言われたことを話していました。
「……という訳で引かれた感じで戦闘民族とか言われたんですよ。」
マスターは相槌を打ちながら聞いてくれています。
「しかし面白いね。戦闘民族というと魔人族かな~。会ったことはないけど好戦的だとは聞いてるね。」
「魔人族って海で隔たれた魔大陸に住んでる人達ですよね。」
「そうそう。」
「いつか魔大陸に行ってみるのもいいかもしれませんね。」
のんびりとした朝焼けになる前の時間に、たわいのない話をして過ごします。
今日も1日いい天気になりそうです。
4日目、5日目も何も起こらず街に着きます。
毎日連絡で皆と話すとやっぱりすえたような臭いがします。長期間水浴びも出来ない旅の大変さが分かります。
5日目の5の鐘を過ぎて、街の門が締まる少し前に入街の手続きを終えます。
皆ですぐに宿屋へ向かいます。事前に今日から2泊3日で泊まれるように事前連絡をしていたようで宿泊手続きも大丈夫でした。
今日晩商団の方は身綺麗にして明日持ち込んだの売買をします。
明後日買い付けした商品と水桶の補充をして、3日後に帰りの旅程が始まります。
私達のパーティは明日水桶を引き渡してから2日間後の5の鐘までは自由時間となっています。
その日は久しぶりに普通の宿屋の食事をとり、宿屋のベッドで寝ました。
次の日に3台の馬車の上に水桶10樽を置いてから、この街の冒険者ギルドへ行きます。
ちょうど朝の混雑時間だった事もあり、ギルド内が人で溢れかえっています。
クエストボードの方へ行っても人だかりでクエストも見えません。
クエストボードの一番上にオークの討伐クエストが目立つように張っていました。
オーク大量発生中
場所:東の森全域
ギルドオーク素材買取無制限
確認種:オーク、オークハイ
討伐部位:オーク1銀貨、オークハイ5銀貨
私は内容を確認してからマスターに「オークの討伐クエストがありますね」と言います。マスターの方が背が低いので余計他のクエストは見えていないかもしれません。
「無制限買取してくれるなら、2日間はオークを狩る?
オークは2スターから討伐クエスト推奨なんで倒したことなかったでしょ。」
「確かにそうですね。襲われたことはありましたけど。」
思い出しながらいいます。
「さっさとこの混雑したギルドを出よう、オークは討伐部位さえ持ってくれば後で受注処理しても問題ないから。」
さっさとギルドから退散します。
門の衛兵に東の森全域の範囲を一様確認して出発です。
「マスター、オークって弱点とかあるのですか?」
ゴブリンは私よりも小さくて小柄だったので頭を叩けば良いと言われていましたが、オークは初めてなので聞きます。
「オークはこの前のブラッドバッファローと同じくらいの身長で、オークハイは2ツリールあるんだよね。
弱点というかサーニャだとオークもオークハイも攻撃をかわして脚の脛を殴る。反対側も殴る。しゃがんだところの頭を殴る。これが一番速いと思うんだよね。」
「あの…弱点…ではないですよね。」
「でも…盾でパリィしたりしても同じように脚を殴るのがいいと思うんだ。
結構脂肪も厚いから剣で切っても大変だし。オークハイはさらに筋肉質だから切り難いし。
折角の打撃武器なんだから相手の行動を阻害する方が効率的だと思うんだよなー。」
メイスでの効率的な戦い方講座になってしまいました。オークは弱点は脛ってことでいいんでしょうか?
「マスターは短剣ですよね?何処を切るのですか?オークは切り難いと言っていましたよね」
「えっとねぇ、ちょっといい?」
そう言って私に触わろうとする事に許可を求めてきます。首を振って「はい」と言います。
「ここの首の頸椎の間を切る様にすると一撃なんだよね。もしくは背骨の間を刺すか。
ポイントは骨に当てないようにちゃんと骨と骨の間を切り裂くって事かな。」
そう言って首の骨の部分を触って教えてくれます。全く参考になりませんでした。
「あの…普段からそういう狩り方をしていたのですか?」
「2匹までなら、後ろから首の頸椎に短剣を刺して、そのまま刺しっぱなしで次のオークの首を狩ってたよ。
これが出来るようになるまで色々苦労したんだよ」
私が言いたかったのは、そうではなくて正面からやりあった場合とかを聞きたかったのですが…。
「ちなみに魔物相手に正々堂々とか意味がないから、初手で出来るだけ数を減らせる立ち回りって重要だよ。」
「それは当然分かります。」
「もしかして聞きたいのが…剣とかだとどう戦うか…なのだとすると。
剣がオークの血と脂で切れなくなってくるから突き刺すような攻撃で斃す感じだね
安全を考えるなら4人くらいいた方がいいかな。」
「なるほど。分かりました。」
やっと普通のパーティでの狩り方が分かりました。
「倒したら討伐部位と高く売れる部位のみを持って帰る感じだね。」
「全部持って帰ってたら重いですもんね。」
そんな感じで話してると森につきました。
「いやぁ、結構いるね。これは大量発生ってクエストがあるのも分かるな
全部で70匹以上いるけど適当に近場で数が少ないところから狩っていく?」
「そこはお任せしますけど少ない数から慣らしていきたいです。」
「じゃこっちだね」
そう言ってどんどん森の中を進んで行きます。
急にマスターが立ち止まり、手で止まるように合図をしてきます。
「この先に100ツリールに2匹オークがいる。オークは手で殴ったり、手を振り回したりしてくるから、しっかり見てかわす事、そして脛を殴った後は、もう1匹の動きを注意するように。」
私は頷きます。
「じゃ普通に突っ込んで行こうか。あっ、バトルソングを使っても大丈夫だよ。」
そう言って走って突っ込んでいきます。
バトルソングを歌いながらオークの目の前に立つと左手で殴ってきました。
拳に盾がかするくらいのぎりぎりの位置で攻撃をかわし脛を思いっきり殴ります。
オークは態勢を崩したのでもう1匹をちらっと確認します。
マスターが首の後ろに乗っているので大丈夫そうです。
私は態勢を崩したオークの顔面に向けて思いっきりメイスを振り下ろします。
バキッっと良い音がしたので倒せたと思います。
数瞬まっても動かないのでもう1匹を見ると臥せって倒れていました。
ふぅっと力を抜きました。思ったよりも強くなかったので安心です。
マスターから討伐部位を回収するように言われたので、そこだけは自分で切り取って渡します。討伐部位を回収するのは自分が斃したと思えるので最近は楽しいです。
オーク自体も収納して貰うとマスターが聞いてきます。
「さて初めてオークを斃したけどどうだった?」
「思ってたよりも強くなかったです。2,3匹同時に相手もできそうです。」
「そうかそうか。じゃあ問題なさそうだね。」
その後3つのオークの群れ、合計11匹を狩りました。
そうしてちょっと遅めのお昼を食べます。
「こんなにポコポコと狩れるならオークが可哀そうになってきますね。」
「普通は2,3匹の群れを1つ狩るのに結構苦労するんだよ。」
「剣で刺すのは大変って言ってましたね。」
「そうだよ、それに可哀そうって言うけどサーニャのオークの角煮を凄く美味しそうに食べてたじゃん。」
この前食べた角煮を思い出します。確かに脂がとろけるような感じで美味しかったです。また食べたいとお願いした1品です。
「そう考えると美味しいお肉だから全然可哀そうでないですね。」
「ベーコンや塩漬け肉とか、そういうのもオーク肉が多いし。」
たしかに言われる通りです。そう考えたら午後からも沢山狩りたいです。
ご飯を食べ終わって休憩が終わるとまた狩りを始めました。
「折角だし、オークハイも狩ってみようか。2段階くらい強いから注意しないといけないけど。」
「そんなに強さが違うんですか?」
「単純に力が強い、それに大体棍棒や冒険者を殺して奪った武器を持って武装しているから一撃でも攻撃を受けたら危険なんだよ。」
「きっちりかわさないと危ないんですね。」
「あとオークが3匹以上取り巻きみたいにいるから相手にしないといけない数が多くなる。」
「ふむふむ。注意点は分かりました。」
「オークハイとオーク4匹の群れがいるから、それをやろう。」
そう言って移動します。
「作戦は単純でサーニャが集団で固まってるところでウォークライを使って相手の注意を引き付けてる間にオークは僕が始末するから。
サーニャはオークハイの相手をすればいいよ。」
「斃し方はオークと一緒ですか?」
「同じだね~。ただオークハイの方が頭の位置が高いからそこだけ注意。」
そうして配置について一気に走って距離を詰めます。
むこうも気付いていますが、今いる森の開けた場所で迎撃するようです。
オークハイを中心に左右2匹筒いますが、オークハイの前でウォークライを使って声を張り上げます。
オークは
しゃがむようにして攻撃をかわします、そうして脛に一撃入れます、
ですが効いてない感じで今度は上から振り下ろしてきます。
それを右にステップするようにかわして、また同じ個所を殴ります。
かなり痛みがあるのか怒ったような声とともにもう一度振り下ろしてきました。
右に回るようにして攻撃をかわし、3回目となる脛に打撃を加えます。
すると流石に片膝をついて棍棒を杖の様にしいます。丁度右側頭部が殴れるので上から斜めに頭を叩きます。右手で頭を庇うような仕草をしたのでそのまま腕ごと3回メイスで殴りました。
流石に動かなくなったので斃したようです。
きょろきょろと周りを見るとオークは既に倒されていました。
「サーニャ、オークハイはタフだったでしょ。」
「確かにオークよりかなり強いと思いました。」
「強さがわかると緊張う感がでるから丁度いいからね。一点注意するとすればオークハイが攻撃するときにかわす方向の安全確認というか魔物の状態の確認をする事位かな。」
確かにかわすときにオークの様子は気にかけていませんでした。マスターが斃してると思っていました。
「全然見てませんでした。」
「今回は問題ないんだけど、ブラッドバッファローの時の様に他のパーティと合同だったりする時に、注意する癖にしとかないと横から攻撃されたりするからね。」
「反復訓練って大事ですもんね。」
何度も魔獣を狩ることで回避行動の軌道予測が出来る様になったりしました。
「次からはそこを気を付けようか。」
そこからオークハイを2匹倒しました。
2回目からオークハイを相手にする時はオーク1匹とオークハイ1匹を相手にする練習をさせられました。
先にオークを斃す様にして、オークの体を使ってオークハイの攻撃をさせない立ち回りの練習でした。
斃した後は、効率的な動き方を教えて貰いました。
最後の戦闘ではそれを生かして立ち回ったのでかなり上手に出来たと思います。
実際マスターからは敢えて言えばと言われて細かい点を言われたくらいです。
昼食後からオークハイ3匹、オーク13匹を討伐しました。
今日1日で合計オークハイ3匹、オーク24匹の戦果です。
日が傾いてしまう前に森から出るため5の鐘前に本日は終了しました。
帰りながらマスターに提案をします。
「マスター、今日問題が無いようだったらテントで休みたいのですが?」
「宿屋よりもテントの方が快適だと思った?」
ちょっと嬉しそうです。
「正直ベッドの寝心地がテントの方がいいです。お料理もそこまででもないですし。」
「高級宿だとまたベッドの寝心地が違うけど、護衛依頼だと商会持ちで泊まるから仕方ないところはあるよね。」
贅沢なのかもしれませんが、宿屋のベッドで寝ると少し腰が痛くなりました。
「宿屋にはクエストで帰らないかもと伝えていますし、明日少し早めに帰ればいいと思うのですが…。」
「別にそれは構わないよ。」
じゃぁテントを張っても安全な場所へ行こうか。」
そう言って移動を開始します。ふと疑問に思ってたことを聞きます。
「そう言えば討伐推奨クエストなのに他の冒険者の人って全然見ないですね。」
「人に会わないようにしてたし、戦闘をしても他の群れが向かってこない位置のオークを狙ってたからね。」
そういえば前から冒険者に全然合わないと思ってましたが、そういう場所を選んでくれてたのですね。
戦闘中に他から魔物や魔獣が来て攻撃されると危険度が上がると習いました。その辺りも気を利かせてくれていたようです。
そうしてその日はテントに泊まり、お風呂も満喫して硬くないベッドで心地よい疲労感と共に寝ました。
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