第17話 村で奉仕活動、想定外に疲れました
ゴブリンとゴブリンハイを合計40匹以上討伐した翌日
仕入れの積み込みの関係で少し遅い出発になるので、出発までの間水樽に水汲みをしたりしながら手伝いをして出発しました。
特に何も起きずに3つ目の村に2日かけて到着しました。
この村ではクエストがなかったので村の周りを見学がてら見て回っていました。
村の人口は60人強みたいで子供も10人くらい畑の手伝いをしているのが見えます。
こういう
そうしているとマスターがやって来て、
「サーニャ、村長とちょっと話をしたんだけど、この村にあるリンラール神殿前で無料奉仕の許可を取り付けてきた。今日はクエストがないから不測の事態が起こらないだろうし、ヒーリングや
私の知らない間にまた色々決めていたようです。
魔法の熟練度上げの有用性は何度も聞いているのでわかるのですが、事前相談が欲しいです。
「マスター、前から言ってるように事前相談をお願いします。」
ちょっと頭に右手を置いて目をつむって首を振って困っている感じにいいました。
「お、おぅ…。善処するって約束してるから善処してるつもりだけど。」
「事前の根回しとかそういう部分が全然足りていません。」
そう言って今回の流れに至った経緯を聞きます。
戦闘もなく村に到着→道中MPも使ってないしクエストもないから今日はMPが余るのは確定→信者修行中の訓練と神への奉仕の一環として村人へ無料のヒーリングを特別にする→魔法の熟練度が上がって感謝もされて一石二鳥。
こんな感じに思ったらしいです。
「4つ目の村もクエストないだろう?…だからそこでも同じようにしたら効率いいかなって思ってて…。」
両手を握って人差し指だけを伸ばして指先をつんつんしながら言っています。
「説明としては分かりました。私も手持ち無沙汰でしたし奉仕活動としてやるのはいいとして、今度はちゃんと説明してくださいね。」
「わかりました。善処します。」
まだ指先をつんつんしています。
そうしてリンラール神殿の前までいきます。こういう村なので神殿といっても木造りの集会場くらいの大きさで、中にリンラール様の木彫りの像と奉納台があるだけです。
その建物の前に椅子を置いて座って治療を受けたい人を待つことにしました。
神殿は村の中心にあるので反対では馬車を使って露店のバルドー商店を開いています。
村長さんが村人に知らせたからか、買い物を終えた人や買い物をする前の女性が来て、腰が痛いとか膝が痛いと言ってるところをヒーリングで癒します。
年かさの女性に言われましたが肩こりは流石に無理です。ごめんなさい。
咳が止まらないとかいつも顔が火照っているという人にはディスシックをしてみると治ったとか言われ感謝されました。
そんな感じで魔法での治療をしていると遊んでた女の子が石垣の上から落ちたと男の人が担いできました。
その人は村長のところへ行って、一言二言話をしたら真っすぐこちらにきました。
「骨が折れているようなのですが、治せますか?」
そう聞かれてヒールでは骨折などを瞬時に直すのは難しいです。
傷などの出血を止めて治療はできますが、骨折などは治る時間を短縮させる程度しか効果がありません。
どう答えようか迷っていると後ろからマスターがいきなり現れてこっそり耳打ちしてきました。
「ここはハイヒールを使って皆の度肝を抜くところだ。」
ハイヒールなら骨折も瞬時に治せます。しかしハイヒールは神聖魔法を修行した信者が使える御業だったはずです。使える方は司教以上の役職についている方々だったと記憶しています。
小声でマスターに聞きます。
「私使うことができるのですか?」
「スキルレベルを上げてないからMPの消費量が多いけど使う事はできる。1人なら問題ない。
さぁ今こそ使うんだ。」
また後でマスターに聞かないといけないことが出来た気がします。
今は目の前の女の子の事が優先です。
身体に触れながら「ハイヒール」と唱えるとかなりMPをつかった感覚があります。
すると女の子の怪我や痣そしてちょっと変に曲がっていた足が治ります。
村人がうわぁっと言いながらよかったよかったと言って物凄い喜んでいます。
後ろを向くとマスターもうんうんと首を振って同意していました。
「マスター、ちょっと夜にお話があります。」
ちょっと目が
感謝を表すのに宴をするという村人を鎮めて、
「この感謝を表したいのなら次に私の様に来た方を温かく迎えてあげてください。」
そう言っておきました。
それでも何もないところですが是非これを食べてくださいと野菜や森から採ってきたと思われる果実を押し付けられるように貰いました。
全てマスターのバッグで保管して貰います。
反対側の臨時商店の方からジャックさんが色々聞きたそうな感じで見ています。
その後も奉仕活動を続けました。
最後の方は動けなかったり、足腰が弱いご老人の所を訪ねて、症状を聞いてヒーリングとディスシックを同時にかけたりします。
掛けた瞬間、憑き物が落ちたように急に元気になって走り始めるのは心臓に悪いのでやめて貰いたいです。
また無理をするとぶり返しますよと注意してその場を去ります。
もう見ていない村人はないとの事で村長からはかなり感動しているようでした。
普段なら金貨数枚は取られるような神聖魔法がただでやっているのですから。
お名前をと言われたので所属の「
村長がなんどか口の中で口ずさんで、覚えました。このご恩は忘れません。
村長一家に見送られながら村の神殿からテントへ歩いていきました。
テントに入るとご飯の準備もできています。
まず先にお風呂に入らせて貰います。気分をリフレッシュしてからご飯を食べます。
そして食後にお茶を用意しながらマスターに
「今日のハイヒールの件を教えてください。どういう事ですか?」
と言ってマスターと自分の前にお茶を置きます。
「サーニャがなんでそこまで目が据わった状態なのかわからないんだけど…?」
「まずマスターの認識を聞きます。ハイヒールが使えるのをどう捉えていますか?」
「う~ん、普通に神聖魔法のスキルLv5にしたら
今の段階だとフルヒールも使おうと思えば使えるけどそっちの方がよかったって事?」
また何かズレています。
「ハイヒールは神殿で真剣に修行をしたした信者の方が10年くらいかけて習得するような魔法です。ハイヒールを使える方は司教以上の地位についている方しかいません。」
「つまりサーニャは司教になりたいってこと?、司教になったら気軽に冒険とかいけなくなりそうなんだけど?」
「違います。ハイヒールが使えるような人間は特別視されるという事を知って欲しかったのです。私がハイヒールを使えることが広まったらどうなると思いますか?」
「え……最初から考えてるサーニャ聖女化計画が上手くいく未来しかないと思うんだけど。」
「貴族などが県局で私を囲ったり、力づくで私を監禁して婚姻を結ばせたりとかそういう危険の方が高いです。教会の内部で役職もない私は後ろ盾を持ってない事になってますし
本来の身分は明かせませんし…。」
「そんな貴族とかの圧力なんて考えなくていいぞ。話が通じない人間は物理的に視力聴力、発音ができなくなるだけだと思うけど?」
マスターがとても不思議そうに言います。
「大抵の奴が絡んできても今のサーニャなら勝てると思うし」
「そこの部分もです。最初に私の育成方針については文句を言わないと言われていましたがどうなっているのですか?」
「もしかして育成方針が気に入らないとか?」
「それは最初にちゃんと納得しています。そこに文句はありません。
ただしマスターの言うスキルをどういう風に取ってるとかの説明をしっかり聞いたことがないので教えてください。」
「今現在のスキルとかの
「はい、書くのが面倒だったら私が書きますが。」
「いやいやちゃんと書くよ。
サーニャなんでそんなに目が据わっているの?」
そう言いながらマスターが紙を取り出してペンで書いていきます。
サーニャ 称号 フォンリールの寵愛、シャンラールの信者
Lv1 →Lv26
パーティスキル
魔素獲得量UPLV10(10倍)
個人スキル
礼儀作法Lv5 片手棍Lv10
言語Lv5 小盾Lv10
算術Lv3 回避Lv10
帝王学Lv1 受け流しLv10
幸運(フォンリールの寵愛の効果) 神聖魔法Lv10
限界突破Lv10(∞まで成長可能) バトルソングLv10
SP獲得UPLv10(+10レベル毎) ウォークライLv10
STR獲得UPLv10(+10レベル毎)ヒーリングLv10
DEX獲得UPLv10(+10レベル毎)ディスポイズンLv10
VIT獲得UPLv10(+10レベル毎)ディスパライズLv10
INT獲得UPLv10(+10レベル毎)ハイヒールLv1
AGL獲得UPLv10(+10レベル毎)
LUC獲得UPLv10(+10レベル毎)
と長々と書き出してくれます。
そうして色々説明してくれました。
一通り説明を聞いてから
「ちょっと聞きたいのですが。」
と前置きして
「サブステータスと言っている数値の普通の冒険者がどのくらいなのか教えてください。マスターが付けたスキルが無い人が多いのでしょう?」
「適当な平均的な冒険者だとLVが1上がるごとにHP、MPは3~8あがってステータスの方は1か2あがるから平均だと26だとこんな感じかな?」
HP 151
MP 148
STR 40
DEX 40
VIT 40
INT 40
AGL 40
LUC 40
獲得SP 26
マスターが書いた数字を見てため息をつきます。
「……これだと私の場合同じレベルの冒険者よりも5倍以上強いことになりませんか?」
「数字だけじゃなくて実際強いぞ。ギルドで4スリースターとか言ってる奴に襲われても返り討ちできる。」
なんでマスターは自信満々なんでしょうか?
「実際ゴブリンを相手した時も相手が弱く感じなった?」
「確かに一撃で斃せたりしてましたけどゴブリンは魔物の中でも弱いからそんなものだと思ってました。」
「サーニャのレベル上げで気を使ってたのはサブステータスを先に延ばすスキルを先にとるからレベル10くらいまで、ものすごく弱いんだよね。
その代わり、そこを超えたら色々なスキルが揃えれるし、ステータスも上がるからレベル20を超えたら一安心って感じかな~。」
「…神聖魔法Lv10ってのは?」
「ヒールやバトルソングを使える神聖魔法だよ。Lv10にする事で効果が1.5倍になるんだ。フルヒールを使えるようになるだけだったらLv9でいいんだけどね」
「フルヒールが使えるのは神だけだと言われていますが…?」
「ちゃんと使えるぞ、Lv9で覚えれる魔法の一覧に書いてあるから覚えられる。
ただMPを多く使うから今は取らなくていいかなと思ってるけど。」
「私が言いたいのはそういうことではありません。」
バンと立ち上がって机をたたきます。
「失礼しました。…これは私にとって良いと思われるように育成してくれているのですよね?」
「もちだんだ。Lv1の時に見たときに育成できると思って買ったわけだし。」
物凄く精神的に疲れました。
完全に私の中の常識とずれまくっています。
「マスター、普通こんな感じでスキルをとれる人はいません。だから突飛な感じでこういう事をされると困るんです。私は今まさに精神的に疲れています。」
多分じとーっとした目でマスターを見ているんだと思います。
「ん~。でもこれからも楽しく色んな地域を冒険しようと思うと力はあって困るようなもんでもないしな~。
じゃあサーニャはどういう風にして欲しいの?」
「前にも言ったようにできるだけ事前に相談して貰えると嬉しいです。」
「報連相だね!任せてよ。」
「本当にお願いします。私、自分がハイヒールを使えるという現実を受け止めるのだけも倒れそうです。」
「気付け薬か何かいる?」
「やさしさの方向性が少し間違っています。
…普段色々気を使ってくれているのは感謝してるんですよ。
同じような感じで良いと思う事を実行する前に一言相談があればもっと素敵に見えると思います。」
「なるほど…好感度を上げるのに必要だから任せて。」
不安をかなり感じますが、私から好感を得ようとしているのは判るので、そういう方向へ誘導できればいいのではないかと思います。
というかそういう方向へ誘導するのが役目な気がしてきました。
その日は本当の意味でいろんな事がキャパシティーオーバーしていてもう本当に無理です。
考えることを放棄して泥のように眠りました。
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