第16話 護衛任務は初めての事が多いです

次の日の朝は少し遅めの2の鐘で出発しました。

この村からは朝掘ったばかりの日持ちのするポテトやオニオンを積み込んだ分遅く出発した感じです。


次の村へも順調に進みました。

途中フォレストウルフ5体に一回遭遇したくらいで特に問題がありませんでした。

相手から向かってくるだけなので対処は簡単です。

村々を行きかう道は人が通るので魔獣なども駆除されていることが多く危険度がすくないですから。

ジャックさんからはバトルソングを聞いたことがないと言われました。

まぁそうですよね。


その日の夕飯は倒したウルフのステーキが付いたので豪華になりました。

夜警も先にするように言われたので、そのままのんびりとぼ~っとしていました。

装備品なんかの手入れを終えればやることはありません。

ランプ1個しかないので少し怖いくらいです。

そうしていると馬がヒィーンと警戒するような声を上げました。

私は緊張しながらランプを腰ベルトに引っかけてバックラーとメイスを構えて警戒します。

目を凝らして見ても分かりません。

そうするといきなり後ろから左肩を叩かれました。

「サーニャ。」

「ひゃひゃい。」

文字通りの意味で飛び上がってビックリしました。

後ろからは心臓に悪いです。

「ウルフが来てる。仕留めてくるから馬車と馬を守れる位置にいて。」

「わかりました。」

警戒していると

「そっちに1匹行った、正面注意。」

前を凝視してるとウルフが暗がりから跳び込んできました。

咄嗟にバックラーで牙を防ぎます。

そのまま勢いを殺す様に自分で受け止めたので足元にウルフが着地しました。

すかさずメイスで殴ります。そうしてよく見えないのでもう一度念のため殴りました。


正面の暗がりからマスターが現れます。

「いやぁごめんごめん。一匹だけ変に右に回られて追いつけなかった。

でも瞬時の判断で防御出来てたのはえらい。」

「いきなり現れるのは驚きました。」

「夜目がきかないと見えないからな~。ただ今日みたいにサーニャが当番の時でも危険が近づいてたらきちんと言うから。」

「…でしたら、まず声を掛けてくれてから肩を叩いてくれるとビックリしないのでいいかなと思います。」

いきなりはビックリしてしまいます。

「あぁ、うん。次からはそうするよ。

ジャックさんにウルフが来てたけど撃退したって声を掛けてきて。

その後はちょっと速いけど交代しよう。」

私はランタンの灯をゆらゆらさせながら馬車に近づきます。

「ジャックさん起きてますか?ウルフが来ましたが倒し終わったので安心してください。」

「そうですか。ありがとうございます。」

「警備を続けますのでごゆっくり。」

そう言ってマスターと交代して休みます。

テントへ入って体を拭いてハーブティーを飲みます。

初めての夜間戦闘があったのです。

ちょっとくらい初めて記念にハーブティーを貰ってもいいと思います。

もちろん安眠の効果のものです。

注意をしてもらいましたが1人でウルフからの防いでそのまま地面に叩きつけるようにして何もできない状態に体が動けたのが嬉しいです。

ここがテントの中でなければ「やった~。」と叫びたいくらい嬉しい出来事でした。

そうして私は眠りました。


今日のの土の日は朝が早い日です。

寝ていても人気ひとけで目が覚めて、あぁそうだとなって急いで用意をします。

馬に飼い葉を与えて、自分たちも片手で持てる簡単なバンを食べます。

ジャックさんが寝起きする場所の荷物を積みなおすのも早く出発するためにやるようになりました。

「それでは出発しましょう。」

私の号令で出発です。

ちょっとの恥ずかしさと嬉しさと心細さが同居しているような感じがあります。


今日からマスターが新しい役目をくれました。

マスターから魔獣などの位置を聞いて倒すかどうかの判断を決める役目です。

判断が間違ってたら…と思うと責任が重大です。

「ヒントとして経験が多い人や似たような業務についてた人に聞けばいいよ。」

少ない情報で判断出来るほどの度胸もないでしょ。」

「私の場合ですとマスターに相談すれば良いのですね。」

「そういう事、魔獣が先に居るかとかは僕が伝えるから。

無理そうならそういう意見も付け加えるし。」

そう言われるとやれる気がします。


丁度お昼の3の鐘に村に到着しました。

この村は規模が大きく20数棟の建物が見えます。

ここでもクエストをこなすので私達は村長へ確認を取りに行き、

焼き固めたクッキーのようなドライフルーツ入りの棒状の携帯食を食べながらクエストに行きます。

ここでもマスターに案内されるまま移動していましたが、…険しい表情で聞かれます。

「どうもゴブリンハイが4匹ほどいて10体づつの4つの組に分かれているみたいだ。

普通にやったら合流されて面倒な事になるから、作戦をたてよう。」

「岩や崖を背にして攻撃される方向を限定しながら戦うのですか?」

「最終的にはそういう感じで釣るけど、その前にある程度数を減らしてかく乱しておきたい。

そこで今回はこの弓を使って数を減らす。

その後で合図をするからサーニャがわざと見つかって走ってにげる役目だね。」

そう言って弓を取り出しました。丸い滑車がついている見たことのない弓です。

コンポジットボウだと教えてくれました。

「普段は弓を全然使ってないですよね?」

「矢が勿体ないし、使うまでもないから。…それに矢は何度も使ってると制度が下がるからあまり使いたくないんだよ。」

そう言いながら山肌が垂直くらいになった場所に案内されました。

「最終的に走ってくるようにするから。でルートだけど…こんな感じで逃げて欲しい。」

木の幹に長い赤い布を巻いていき枝にかけて目立つようにしていきます。

ゴブリンまで100ツリール位のところで止まり、

「ここからさっきの場所まで逃げて欲しいけど大丈夫そう?

何度か道順の練習をする?」

「何回か練習したいです。」

自信のない時は正直に言う方がいいのでお願いします。

そうして3回ほどゆっくり歩いてルートの確認をしました。

そして待機場所に戻ります。

「合図だけどピーって音の矢を上に撃つから。その音が聞こえたらこの方向へ軽く走ってゴブリンに見つかる様にしてから全力で逃げるように。」

「わかりました。」

「それまではここで屈んで動かないように。」

そう言ってマスターが小走りにいなくなります。

しばらく経つとゴブリンの「ギャギャッ」という声が聞こえてきました。

声がするところが2ヶ所、3ヶ所と増えていきます。

騒がしくなってきた時にピーッっと音がなりました。

私は茂みを抜けて駆け足ででていきます。

でたところで20ツリール程先にゴブリンがいるのが見えました。

メイスで木を叩いて音をだします。

ゴブリンが直ぐに「ギャギャ、ギャー」と声を上げて向かってきました。

そこからは全力で赤い布を目印に逃げていきます。

途中でゴブリンの声が増えて来たので仲間を呼びながら追ってきているようです。


無我夢中で山肌のところまで逃げてきました。

山肌を背にして構えて待ちます。

そうすると10体ぐらいのゴブリンが現れました。

2匹くらい大きな体の個体もいます。あれがゴブリンハイですね。

囲むようにして全員で迫ってきます。

「負けるかぁ!」と叫びながらウォークライを使いました。

そうして一番右端のゴブリンに突っ込んで殴ります。

続けてと二番目のゴブリンの方を向くと視界の隅にマスターが見えました。

私は2匹目のゴブリンをメイスで力一杯なぐって、次のゴブリンを…とそっちの方向を見ると

マスターはゴブリンの集団に後ろから襲い掛かると、その姿からは想像もできないくらい素早く両手の剣でゴブリンの首を刈り取っていきます。

舞っているのかと思うくらい自然な動きでした。

数瞬あとにはゴブリンは全滅していました。

「予定通りに逃げてくれたから楽に斃せたよ。サーニャは頼りになる。凄いぞ。」

そう言って誉めてくれますが、

「他のゴブリンがまだ残っているのではないですか?」

「他のは全部倒してるから大丈夫、取り敢えずここのゴブリンの討伐部位を回収しようか。」

「もしかして斃しながら、こっちに向かってきてたのですか?」

「うん、背中を向けている相手を一番後ろから倒してきたから。

サーニャ途中で転んだりしないか追いかけながら心配してたんだ。」

「あの…マスターってかなり素早く動けます?…その…あまりそうは思えなかったので。」

「本気で動いてるところをみるのは初めてだっけ?それなりに素早く動けるよ。

というか見た目てきに動けなさそうに見えるのは判ってるからいいんだけど。」

ちょっとしょぼんとしながら言っています。

「でもここで倒すところを見ましたけど舞ってるようで恰好良かったです。」

マスターが「えっ、そうだった?」と目に見えて上機嫌になります。

「さっさと討伐部位を回収しよう。」

そう言って剥ぎ取りを始めました。

私が3体目の討伐部位を回収しているとマスターが作業を終えていました。

差し出された小袋に討伐部位を入れます。


そうして目印にしていた赤い布を回収しながら歩いていくと確かにゴブリンが背を向けて倒れていました。

まるで目印のように倒れています。

全て綺麗に首が刈ってあるので討伐部位を簡単に回収できます。

そうして布の回収が終わると今度は弓で斃したゴブリンの場所を巡りました。

全部で12体のゴブリンを斃していました。

「ばれないでよくこれだけのゴブリンが倒せましたね。」

ゴブリンハイも弓矢で頭を撃ち抜いています。

「あの弓は300ツリールあっても届くから、木の上から場所を変えながら狙撃したんだ。」

あんなに小型なのに300ツリールも届くなんて驚きです。

全部のゴブリンから討伐部位を剥ぎ取り帰るころには日が傾いてきていました。

「全部でゴブリンハイが4匹、ゴブリンが37体。これだと駆け出しのパーティじゃ討伐できなんじゃないかな?ギルドの依頼ランクがもう1つ高くてもいい気がするな」

そう言っています。

「確かに数は多いと思いましたけど。6人パーティだと罠を張ったりすればいいのでは?」

「これ駆け出し用の1スターでも受けれるクエストだったんだ。ゴブリンの推定数が10匹前後って書いてあるし、村長もそこまで多いとは言ってなかった。」

そう言って依頼書を見せてくれます。

「確かに記載はそうですね。」

「洞窟の中とかだと合計数がこのくらいになったりする場合はあるけど、今回は森の中だったから正直危ないと思う。」

それで最初厳しい顔をしていたんだと理解しました。

「まぁサーニャのレベルも順調に上がってるからいいんだけど。面倒だけどギルドに報告だけはしとかないとな~。」


そう言いながら帰った村で村長に討伐部位を見せて記入と拇印を貰いクエストを完了しました。











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