第15話 初護衛任務

朝いつもより少し早めに起こされて、支度をします。

今日から護衛任務です。

1の鐘過ぎくらいからご飯を食べて、今回の依頼主と合流します。

私は内容をあまり読んでなかったのでマスターに聞きました。

「依頼主はバルドー商店、馬一頭立ての馬車が1台の小さな商会で今回は何個かあるうちの1つの定期仕入れルートを回る際の護衛になる。

10日間で4つの小村を回って、それぞれ2日目、4日目 6日目、8日目の午後に村に到着してバルドー商店は村でここで仕入れた商品を売って、仕入れをするから。

その間に村付近の討伐依頼を片付ける感じかな。」

詳細な計画の全体像を教えて貰います。

「サーニャにはリーダーとして挨拶をして貰うのと普段堂々と歩いているだけでいいよ。

魔物がでたとしてもゴブリン程度で心配するような危険はないし

襲われたりする前にちゃんと教えるからね。」

リーダーとしての実績はないのでお飾りだけど堂々とだけしていればいいと逆に考えます。

判断に困ったことがあればマスターに聞けばいいと考えます。

そうして合流場所に行くと馬車と1人の商人がいました。依頼主だと判断して声をかけます。

「バルドー商店の方ですか?今回護衛クエストを受注した【聖銀ミスリルの乙女】のサーニャ・カルミアです。」

「どうもバルドー商店の店主ジャック・バルドーです。今回はよろしくお願いします。

馬の餌と水樽をそちらの方が持って貰えるそうで、かなり助かります。

普段よりも仕入れを多くしようと思ってますよ。」

握手をして挨拶をします。

そして店主に指定された飼い葉や水樽をマスターが収納していきます。

「予定より少し早いですが出発しましょうか。」

その声で私達は出発します。

私達が馬を先導する形で歩いて、ジャックさんが御者台に座る形です。

普段なら馬車の前後に1人づつ付くのですが、今回はこの配置です。



旅は順調そのものでした。街道の分かれ道は進む方向をジャックさんが大声で知らせてくれます。

お昼に休憩をして馬に水と飼い葉を与えて、私達も食事をします。

そのあとも4の鐘過ぎくらいに休憩し馬に水と飼い葉を与えていました。

馬が1頭のみなので休憩を多くしてあまり疲れさせないようにしているみたいです。

日が傾いて夕暮れになる前に皆が宿営地にしている場所に着きました。

ここは水場がない場所です。これなら水樽を馬車に積まないだけでかなり重さが違いますね。

マスターが前に見せてくれたロッジ型テントを取り出していました。

背負っているバッグから出しているように見えるので感心します。

そうして中に入ってご飯の用意をしにいきました。

ジャックさんは馬の世話をしています。

私はマスターに外で警戒をするように言われていたので歩哨をしていました。

辺りが夕闇になってくる頃にマスターに呼ばれてスープ鍋と食器を持つのを手伝うように言われ手伝います。

マスターはランプと黒パンとボロ布を持っていました。

ジャックさんの方に行き、ボロ布を敷いて一緒に食事をとります。

晩御飯は具の多いミルクスープと黒パンです。

「食事も作って貰えると聞いていましたが、豪勢ですね。

ミルクなんて普段なら持ち運ばないですよ。」

「喜んでもらえたなら嬉しいです。こちらが色々と無理をお願いしましたからね。」

「しかしながら大きいマジックバックは良いですねぇ。憧れますよ。

小さいマジックバックでも手に入れたいですが高いですから。」

そう言って話を聞いていました。

ジャックさんのバルドー商店ですが普段は露店として商売をしていて、主に腐りにくい根菜を取り扱っていて奥さんと2人で切り盛りしているそうです。

仕入れはジャックさんが親から受け継いだルートの仕入れをしていて、お店を構えるのが夢だと言っています。

今回は普段頼んでいるパーティが所用で受けれらなかったのでクエストの依頼をしたと言っていました。

報酬が安いから受けて貰えるか不安だったようです。

そんな話をしながら食事を終えました。

ジャックさんは早めに休むと言っていました。

私はマスターに言われて打ち合わせをします。

夜警の前半部分を私が、後半をマスターが担当するという事になりました。

「夜警は初めてだけど今のところ危険はないから安心して。

夜警中の緊張感を勉強するといいよ。この魔石ランプ1個で過ごすのは心細いけれどね。

途中暇だろうから装備品の手入れをするといいよ。」

そういってマスターはテントに入って行きました。

ランプ以外は星明りしかない中、言われた通りにボロ布に座って少しの間星空をみていました。

途中で装備品の手入れをしましたが、それもある程度の時間で終わります。

交代で夜警をしている人はこんな感じなんだな~と呑気なことを考えていました。

暇なので星空の星の数を数えたりして時間を潰しているとマスターが出てきました。

交代の時間です。

私はテントへ入ってお風呂場へ行き体を拭いてベットに寝ころぶと直ぐに睡魔が襲ってきました。



2日目はマスターに起こされました。

身支度を整えて外へでると1の鐘よりも早い時間で朝日登り切ってないです。

早めに出発して村を目指ざします。

とは言ってもこの辺りは魔獣もほとんどいないので村に着くまで何もありませんでした。


村に着くとジャックさんが露店を構えて村から頼まれた品を並べていきます。

私達はこの村でのクエストをこなすべく村長の家へ行き詳細を聞きました。

クエストの依頼が有効かを聞き、まだ討伐がされてないかとゴブリンがいる場所を軽く聞ききます。

村長の家を後にするとマスターが説明をしてくれました。

「ゴブリンが少人数だと村人が退治してしまってクエストの取り下げをしてたりするから依頼が有効かどうかは確認する必要があるんだよ。

村人だってウルフやジャッカロープとかを倒すからね。

森の奥にゴブリンが20匹以上いるところがあるから、そこをを狩ればいいでしょ。」

そう言います。

こっちと指さして進んで行きます。方向とかが分かるのは便利です。

「魔獣と魔物の違いは魔石を持ってるか以外にもあるけどわかる?」

「魔物は武器を使ってくる部分だと思います。」

「その通り、大概は木を棍棒にしたものだけど、偶に冒険者とかの剣なんかを持っていることがある。

さらに今回20匹以上、…正確には24匹のゴブリンを倒さなきゃいけない。

重要な事は何だと思う?」

「周りを囲まれて多数の相手をしないようにすることでしょうか?」

「ちゃんと教えて貰ったことを覚えてるね。

という訳で集団を小分けで倒すよ。

人型だからって情けとかをかけずにやるようにね。」

「分かりました。」


そうしてゴブリンの3匹の集団が見えました。

今回の役割は私が低木を揺らして敵の注意を惹きます。

そして見に来たゴブリンに走って殴りかかって倒します。

その間にマスターが横から合図をしようとしていゴブリンを優先的に殺して、もう1匹も殺します。


準備ができたのでマスターからジェスチャーで木を揺らす様に指示がありました。

私は低木をメイスで軽く叩いて揺らし音をだします。

そうすると予定と違って2匹が見に来ました。

息を殺して確実に1体は殴れる距離まで待ちます。

あと…3歩、2歩、1歩、…今です。

茂みから飛び出して手前側のゴブリンの頭を思いっきり殴ります。

不意を突けたので1匹は倒れて動きません。

もう1匹も慌てて右手で棍棒を振り上げて殴りかかってきます。

バックラーでいなして上段から頭を殴ります。

左手で頭をかばうようにしていたので左手ごと頭を殴りました。

ゴブリンがふらつくようにして無防備になりました。

今度は右から側頭部に向けて思いっきりスイングします。

鈍い音がしてゴブリンが倒れて動かなくなりました。


私はふぅっと息を吐きました。

集中していたので時間的にはあまりたってはずですが、かなり時間が流れたような感覚です。

マスターが「上手く対処できてた。いい感じだった。」と言ってくれます。

そうして自分が倒したゴブリンも持ってきます。

「倒したら討伐部位を取らなきゃいけなんだ。討伐部位は鼻だからこんな感じにそぎ落とす感じでと手本を見せてくれます。」

そして小さいナイフを渡されて同じようにやるように言われます。

私は先ほどみたような感じで2体の鼻をそぎました。

「魔物の討伐箇所の提出がいる場合には必ず鼻が必要だから、良い練習だよ。」

そう言われました。

鼻をそぐのもコツがいるのが分かります。

そうして鼻をそいだ死体は近くの茂みに投げ込みました。

多分4,5日で魔素に還って何もなくなると思います。

「次の集団をたおそうか。」


同じようにして集団11匹を斃しました。

「残り10匹は固まっているから、これはバレずに全て斃すのは難しい。

そこで作戦だけど、最初さっきと同じように木を揺らしてゴブリンを1匹倒すときに

ウォークライを使って倒して、そうすると敵の動きが鈍るからバトルソングを歌いながら戦闘をしよう。

僕はサーニャが攻撃をしたタイミングで後方から一気にラッシュをかけて殲滅するから。」

そう打ち合わせをして敵の傍に近づきました。

低木を揺らして注意を惹き、敵が近づいてくるのを待ちます。

そうして範囲内に入ったところでウォークライと念じながら

「やぁー」とゴブリンに殴りかかりました。

するとゴブリンはビックリしたように動けずに固まっています。

すかさずバトルソングを歌いはじめます。

1体目を一撃で仕留めて、近くのゴブリンに同じように殴り掛かりました。

3体目を斃して周りを見るとゴブリンの姿は見えなくなっていました。

まだ警戒して構えているとマスターの姿が見え腕を〇の形にしました。

終了したようです。


それでやっと肩の力を抜きました。

よく見るとゴブリンが倒れているのが見えます。

かなり緊張していて視野が狭くなっていたようです。

「お疲れ。サーニャが敵の注意を引いてくれていたから楽にすんだよ。」

「緊張して周りの様子が目に入っていませんでした。」

「最初はそんなもんだよ。討伐部位を回収して村へ帰ろうか。

村長に討伐数の記入と依頼完了のサインと蝋の拇印を貰えば初めての討伐依頼達成だ。」

手早く討伐部位を回収して村へ帰ります。



そうして村長に討伐部位を見せて24と記入してもらい、サインと拇印を貰って依頼を達成しました。

もう夕暮れ近い時間になっていました。

「ゴブリン1体が15ラールだから報酬は360ラールなんだよね。

そんなに割が良くないから、大体の冒険者がこういう護衛依頼の時についでに受けるんだよね。」

村の外れにテントを張らせてもらって今日はそこで野営です。

今日は夜警もないからお風呂も入ったら?と提案されたので

ご飯のあとにお風呂に浸かってゆっくりしてぐっすりと寝ました。

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