第12話 初めての魔獣狩り
ハーブティーも飲み終わって気分を一新して外にでました。
マスターはテントを手品のように収納してしまいます。
バックラーとメイスをとりあえず持っておきます。
マスターがきょろきょろと辺りを見回すとこっちに行こう指さして草原を歩き始めます。
「200
私は目を凝らして見てみますが何も見えません。
歩いて近づいていくと50ツリールくらいで何か草が動いているのが確認できます。
「最初はバトルソングを歌わずに、戦ってみよう。」
そう言われました。
「注意点として魔獣は基本人間種を感知すると殺しにくる。見えたらじゃなくて感知したらなんで、森や見通しが悪いところで不意の遭遇戦になる場合がある。
さてそろそろ向かってくるぞ。」
動いてるものがこちらに向かってきます。
私はバックラーとメイスを構えました。
「ジャッカロープは初手飛んで角で突き刺してくるから、2匹の場合、1匹はかわして、もう1匹を盾で殴る様に腕をふって払うんだ。
そうしてメイスで頭を殴ってみて。」
聞き流しながら、心の準備をします。
5ツリールくらいでジャッカロープがまず1匹跳びかかってきました。
片足を後ろに引いて半身になって避けます。するともう1匹が跳びかかってきました。
それをバックラーを右から左に振ります。ちょうど頭の横を殴る感じになりジャッカロープが吹き飛びます。
それを走って追いかけて上から頭めがけて思いっきりメイスを振ります。
ドガっという音がしてメイスがちゃんと頭に命中しました。
直ぐに後ろを向き、もう1匹のジャッカロープを見ます。
丁度こちらに跳びかかろうと身を屈めていました。
目が合ったような気がした瞬間跳びかかってきました。
咄嗟にバックラーを構えました。
丁度上向きになっていた盾にあたりジャッカロープが上に飛んでいきました。
地面に落下したところを叩きます。
ちょっと動いていたのでもう1度叩きました。
ふぅ~っと息を吐きます。
手を叩いて拍手しながらマスターが来ます。
「リコさん達に教えて貰ったことがちゃんと出来てるね。凄い凄い。」
そう言って誉めてくれます。
生まれて初めて魔獣を倒しました。その実感が湧いて笑顔になります。
「1匹目を倒した後、きちんともう1匹を確認したのはポイントが高い。
さらに2匹目も止めがさせてないと思った瞬間躊躇せずに叩けてたのは良いね。」
特によかったと思う点を言ってくれます。
「残心と言って敵を倒しても止めを確認するまでは、いざという時に備えておくことが大事なんだ。
油断すると危ないからね、盗賊や魔物は油断をさそってこっちを殺そうとするから。」
実体験も交えて説明をしてくれます。
倒したジャッカロープをマスターに収納しています。
「倒した感想としてどうだった?」
「緊張しました。怖かったです。2匹目は偶々バックラーで受けたら上に飛びましたけど。」
「それは慣れていくしかないのと、数をこなせば自信もついてくるよ。
じゃあ次は3匹の集団がいるから向こうへ行こう。」
同じように50ツリールくらいになった時に、
「バトルソングを歌いながら倒してみようか。頭でバトルソングを使おうと念じると歌詞の聖句が浮かんでくるはず。」
バトルソングと思い浮かべると歌詞が頭の中に浮かんできます。
「我ら戦いへ臨むもの 勇気を持つもの
牙無き者の牙となり 我らの敵を滅するもの
戦場で輝く光となり 勇姿を全てへ示すもの
大きく舞う姿
歌い始めると自分自身が高揚していく感じがあります。
先ほどと違って怖さなどは感じなくなりました。
ジャッカロープが気付いて3匹向かってきていましたが、最後尾の1匹をマスターが回り込んで横から切り捨てるのが見えます。
1匹目が跳び込んできたのをメイスで殴ります。次の一匹をバックラーで角を受け止め、上から思いっきり振り下ろします。
これだけで戦闘が終わりました。
「どうだった?バトルソングの効果を初めて受けたけど凄いもんだね。」
「さっきよりも体が動きましたし、怖さもありませんでした。」
「恐怖心が無くなるのもバトルソングの効果だね。あとパーティメンバーの能力向上があるけど、それは自分でも実感できたみたいだね。」
確かに動きが全然違いました。
マスターが倒した3匹を回収してくれます。
「バトルソングの効果もわかっただろうから歌いながら倒す訓練をしよう。」
そうやって15匹くらい倒しました。
3匹以上の時はマスターが2匹になるようにしてくれます。
実地訓練と言ってた意味がよく分かります。
歩いて狩って歩いて狩ってと1鐘分くらい動き回っていたので小休止です。
「結構魔獣もいるんですね。」
小岩に座ってジョッキを受け取りながら言います。
半分ほど水が入っていてるのを飲みます。
汗は掻くので喉が渇いてました。
「魔獣の場所をサーチで探しているからこその無駄のない移動だよ。」
「サーチって斥候の人とかが覚えている技能ですよね。こんなに的確だと知りませんでした。」
ハンカチで汗を拭いながら言います。
「それが出来るからこそ、斥候と名乗っているのだよ」
斥候の人って凄いなと感心します。
「ちょっと休憩したら、街へ帰りながらグラスウルフを狩ろう。」
そう提案されます。
「グラスウルフとフォレストウルフの違いは殆どなくて、毛皮の模様が少し違うくらいなんだ。動きは同じだからどっちで練習しても問題ないと思うよ。」
なるほど、相手の動きに対する対応は変わらないという事ですね。
私は肯定しながら残りの水を飲み干します。
少し休んだ後でまた歩きます。
「ウルフは基本3匹以上で行動してることが多い。サーニャは初めてだから1匹だけ相手をして慣れていこう。
ジャッカロープよりも感知が鋭いから80ツリールくらいから警戒が必要になる。」
そう言って前方の草むらを指さします。
「あの向こうにいるから近づきながらバトルソングを歌って戦闘準備をしよう。」
いるとわかっていれば準備はできます。
バトルソングを歌いだすと草むらが動きました。
ウルフが左右と真ん中から分かれてこちらに着ます。
「真ん中の1匹だけに集中して。」
他の2匹はマスターが倒してくれると信じて1匹だけに集中します。
左右からフェイントをかけて牙を剝いて噛みついてきます。
さっきとは違います。
バックラーで視線を防ぐようにしてバックラーの陰からメイスで足を狙います。
ゴツッといい音がしました。すぐ様子の確認をします。
脚を引きずるような感じですが戦意は衰えてません。
メイスをウルフの鼻先に当たるくらいの位置にふります。
当たることを怖がって身体を右に反らしています。
耐性が崩れたので咄嗟に動けません。頭めがけて思いっきり殴りました。
難しいけどウルフも狩れました。
嬉しいです。ウルフが枯れる様になったら脱初心者みたいな風潮があるって聞いてます。
「ウルフはフェイントを使ってきて倒し辛かったんじゃない?2匹以上になると連携してくるから脅威度があがるんだ。」
「確かにジャッカロープと全然違いました。」
「次は2匹を相手にして貰ってやり辛さを体験してもらおう。」
2匹が攻めてくると連携するという意味がよくわかりました。
片方に攻撃をしようとするともう1匹が噛みついてこようとします。
色々考えながら倒すと2倍くらいの時間がかかってました。
「相手に連携されると動き辛いです。
攻撃が軽い攻撃しか当てられなかったり、
攻撃していても、もう1匹を見ながら戦わないといけないので全力で動けません。」
「まさにそこに気付いてほしかったから、いい感じ。」
「どうすればもっと上手に倒せると思う?」
「相手を分断するか最初に1匹目を全力で倒して2匹目を倒すのがよいかと思います。
もう1つの案としてマスターに魔物の注意を引いて貰って一対一の状況を作ることが大事だと感じました。」
マスターににこにこしながら「うんうん」と頷いています。
「重要なポイントは自分できっちりと把握してるいう事ないよ。」
及第点だったみたいです、
「さっきの場合での問だと答えとしては出てこないと思うけど、自分が優位な場所に誘い込んで一方的に殲滅するという事ができると安全性が段違いにあがるね。」
じゃサーニャの改善案の出来を見ながら練習の続きだよ
そうしてグラスウルフの3,4匹の集団と5回ほど戦闘をしました。
4匹の時は3匹の相手をしましたが。
数を減らすという部分を意識しながらしていきます。
正面のウルフに止めをさそうとして。他のウルフが違い方向から噛み付いてきた場合もバックラーではじく方向を決めて距離を取らせ。
常に一対一になるように心がけてウルフを狩りました。
倒す時間も短くなっています。
私は流石に疲れていました。
ウルフは左右に体を振ってくるので予想以上に体力を取られます。
「今日はこのくらいで終わろうか。帰ってたら5の鐘がなるくらいだと思う。」
ジョッキに水を注いで渡してくれます。
ありがたく飲み干しました。
バトルソングを歌ってるので喉がよく乾くのかもしれません。
「初日が終わるけど、どうだった?
冒険者って思ってたよりも歩くイメージを持たない?」
「もう少し戦闘ばかりしてると思ってました。」
「体力が付いたので今日くらいであればもっとやれます。」
冒険者として自分の能力や限界などを見栄を張って良いようにいう事はクエストの不達成に繋がりますし、最悪パーティが全員死にます。
ですから現状自分が感じてる状態をマスターに伝えます。
「サーニャはちゃんとしてるね。自分の実力をしっかり把握することが大事だって教えたのが身になってる。
まぁ今日でサーニャはレベルが11に上がったから、やっとここから必要な魔法やスキルを覚えていけるよ。」
マスターは手を出してきて握手を求めてきます。
意味は少しわからないのですが、手をだして握手をします。
「脱初心者おめでとう、ギルドカードのランクは1だけど2のやつらに負けないようになった。
これで1人でであるいても安心だよ。」
マスター的に1人で歩かせるのは心配だったみたいです。
「もしサーニャを攫う奴らがいたら、本当の地獄を見せてやる・・・。」
「あの…言葉が怖いんですが…。」
「その位の事をしてやるって覚悟だよ。
魔獣の討伐部位とか今日の獲物の価格を教えてなかったよね。。」
急に笑いながらいいます。でも自分の直感はあれは嘘を言ってないと感じています。
私は自分で身の安全をきっちり確保しないとダメだと心のメモに刻みました。
帰りながら納品について色々教えてくれます。
「ジャッカロープって2匹で5リールなんですか!」
今獲った獲物をの値段を教えて貰っています。
「ウルフは1匹5リールだぞ?未加工の状態で冒険者ギルドへ卸すとその値段で。
だから今日サーニャが1日で稼いだのがウルフ12体で60リール、ジャッカロープが17匹で40リールと1匹、ポーションの葉が8枚とマナポーションの葉が2枚だから
底辺のな2スターの稼ぎよりも稼げてるね。」
そう言っていますが100リールは稼げているってことは銀貨1枚です。
私は多そうな気がしますか、
「パーティ組んでるとしたら100リールを6分の1にしてあまりをパーティの公的資金にするなら1人16リールだよ。」
報酬としては安いから大きい街は初心者向きじゃないと言います。
「まあ効率よく行動しててこの稼ぎじゃ、実際この街に居る意味がないから普通は移動を
検討するけど、物品を大量消費する大都市だから、付近の村や町からの交易品を扱う商人の護衛は多い。
そこで商隊護衛を受けながら訪れる土地のクエストも受けてもよい依頼主の護衛依頼を探そう。
そうすると稼ぎか全然変わるぞ。」
そう楽しそうにマスターはいいます。
街の東門へ着いたのでギルドカードをだして
私達は冒険者ギルドへ納品に向かいました
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