1章 冒険者生活
第11話 今日から冒険者です
朝目がすっきりとした気分で目覚めました。
丁度マスターが居なかったので、いそいそと身支度をします。
下着の越中
最初の頃はこんな恥ずかしいものをと思っていたのですが、履いているとドロワーズより快適だったりします。
他人には見せられませんが……。
5本指の軍足も改良型を渡されました、前は長いだけだったのですが、今回のはかかと部分などが補強されています。
そうしてチェニック等を着ていきます。
ミスリルシャツを
シャンラール様の赤色で刺繡もないシンプルなものです。
そうして櫛で髪を梳きミスリルのカチューシャを付けます。
そうして腰に小物を入れるポーチとポーション入れが付いているベルトを付けます。
ポーチは小さいですが、宿屋の1人部屋程度の容量があると言われていした。
ポーションはポーチの左右対称に2本づつ入れれるようになっています。
付け終わったくらいにマスターが入ってきました。
「起きたんだ。おはよう。食事を頼んでるから準備ができたら降りようか。」
そう言われ、バックラーとメイスを持って食堂へ行きます。
黒パンと野菜炒めと温かいスープの朝食をとると出発です。
部屋の鍵を宿の人に渡して大通りにでて大門にいきます。
ギルドカードを提示して街をでます。入出街の検査です。
マスターから今出たのが東門だと言われました。
宿や冒険者ギルドも東門から便利がいい位置にあるそうです。
そこから1鐘分も歩かないところにある森を目指してします。
この距離を歩いても息切れをしなくなったりへばったりしなくなったので体力がかなり付いたと思います。
道中「今日は基本的な採集と魔獣狩りを初歩から教えようと思ってる。」と言われます。
問題ありません。きちんと教えてくれるなら大丈夫です。
森の外周へ到着するとマスターが徐に森へ入り、葉っぱ2枚を持って出てきます。
「こっちがポーションの原料となる葉っぱで、もう1枚がマナポーションの原料になる葉っぱになるんだけど。違いが分かるかな?
ポーションの葉っぱの方が比較的見つけやすいと思う。」
そう言って葉っぱを渡してくれます。
ポーション用の葉は手のひらより少し小さいくらいでギザギザの歯状の葉っぱで、マナポーションも同じような大きさでギザギザですが矢尻の形をしています。
私はなるほどと特徴を覚えます。
「ポーションの葉とマナポーションの葉は冒険者ギルドに収める場合は10枚1束にして納品する形だね。
ポーションの葉が1束10リール、マナポーションの葉が1束15リールになるよ。」
「なるほど。分かりました」
「最初は一緒にある場所を教えながら取ろう。」
採集で使うための
そうして2人で森へ入っていき、ポーションの草が生えやすい場所や葉っぱの切り取り位置などのレクチャーをうけます。
マナポーションの草の生えている場所も同じように教えて貰います。
「ポーションの草を残しておくと2,3日で同じように葉が揃っているから必ず1枚は茎に葉を残しておくことを忘れないように。
他の人と分け合うのが冒険者の暗黙のルールとしてあるから基本は1枚づつ採集する感じだね。」
冒険者としてのルールも教えてくれます。
そして10枚取れた葉の括り方を教えて貰い自分でもやってみます。
「集めたものはとりあえず腰のポーチに入れてみようか。
入れるときは普通に入れればいいけど、取り出すときは手をポーチの中に入れると入ってるものが頭の中にイメージとして出てくるでしょ?」
言われた通りやってみます。
取り出だそうと手をポーチの中に入れると確かに頭の中に朝入れた櫛とポーションの葉の束が具体的なイメージとして浮かんでいきます。
「そうして今度は取り出し物を思い浮かべながらポーチから手をだしてみて。」
ポーションの葉の束を思い浮かべながら取り出すと手にありました。
「それがマジックバックの使い方になるからね。
ここからサーニャ1人で採集をしてみようか。
この辺りには魔獣はいないから1人でも安全に採集できるよ。
3の鐘まで半鐘分の時間をやってみよう。」
1人で先ほど教わったことを思い出しながら採集をしました。
でもマスターと一緒の時の様にすぐに見つかりません。
結局マスターが呼びに来た時に採れたのは、ポーションの葉8枚とマナポーションの葉が2枚だけでした。
「最初にしてはなかなか上出来だよ。冒険者になりたての人間が1人で採集して2の鐘から5の鐘くらいの時間でポーション10束、マナポーション1束くらいだからね。
宿に泊まって3食食べられるくらいの収入しかない。
途中で魔獣とかにあったりするとそこまで採れない場合もあるしね」
そう言われます。
食事をするからと森の外へ出てから、マスターに「見せたいものがあるんだ」と言われました。
そうして「刮目せよ」と言いながらロッジ型テントを出します。
大きなテントがいきなり出てきたことに吃驚します。
「あの…マスターって実はマジックバックなしで出し入れできますよね。」
ちょっと恐る恐る聞きます。
「を、よく気付いたね。サーニャには教えておいていいと思ってるからね。」
絶対に気付くと思います。ヒッペアストルムの道中でも少し怪しい動きがありましたし。
「これは空間魔法のスキルを10にしたら覚えられる収納スキルで、どこでも物が出し入れ自由になるんだよ。」
「でも普段は背負ってるそのバックから出していますよね?」
「人目があるときは収納庫から背中のマジックバックに移して、そこから取り出してるからね。
マジックバックは売ってるけど、収納のスキルを持ってる人には会ってないから他にはいないかもね。」
「そこまで徹底してたのは…身の危険があるからですか?」
「もちろん、レベルが低い時だと抵抗できずに負けるからね。そうなったら無理やり奴隷契約させられたりする可能性があったからね。
十分に強くなったと思うまでかなり慎重にしてたんだよ」
少し思い出すような感じでマスターが言います。
確かに人に利用される生き方を強要される可能性があったのですから、慎重に行動するのは当然です。
教えて貰えたということは信頼して貰えてると思っていいのかなと感じました。
「そんな事より、テントだよ。このロッジ型テント
サーニャを驚ろかそうと思って気合を入れて作ったんだ。」
バージョンとか意味のわからないことを言っています、マスターは偶に理解できない言葉を使いますが、地方独特の単語か何かだと思っています。
とりあえずマスターが凄く期待しているので、テントのキャノピーから入り口をめくって中へ入ります。
すると中は入り口から想像もできないくらい広いです。
「なんですか……これ。」
目が点になりました。驚くというレベルを超えています。
こんなテントは生まれて初めてみました。
「これも空間魔法を使ってテント内の空間を広げてるんだ。
はいってすぐのここは玄関でブーツとかは脱いで、そこに靴を置く棚があるんだ。
そうして食事とかを食べたりできる机と椅子があって。
その奥が食事をつくる台所だね。
コンロは魔力で動くタイプなんだよ。さらにパンとかも焼けるように
そして台所から奥に伸びてる通路の左側にトイレ、奥に洗面所とお風呂の部屋があって。
右側の手前は今は空室で奥が寝室になってるよ。
台所とトイレ、お風呂の排水は簡易スライム窟に繋がってて、室温は魔力を溜めておく魔石に魔力を込めると一定温度に保ってくれるようになってるんだ。」
手を引きながらマスターが部屋を案内してくれます。
ここまでいくと呆れるしかありません。
テント生活でお風呂???、理解が追い付きません。トイレもおまるではなく椅子みたいな形をしています。
「使い勝手が悪い部分などはまた都度都度改修していくつもりだから、サーニャも遠慮なく意見を言って欲しい。」
テントを見て回るだけで疲れてしまいました。
テントの食堂?へもどって椅子に座りました。
マスターがハーブティーを入れてくれて、お昼にパンに色々なものを挟んだサンドを用意してくれます。そして台所で手を洗うように言われます。
マスターは食事の前には必ず手を洗わせるかクリーンで綺麗にしてくれます。
「外からテントの入ってきたとき、食事の前、トイレの後に手を洗う事」と念を押されます。
なにかの拘りの部分なのでしょう。
手を洗って食事を始めました。
マスターが午後からの予定を言ってきます。
「この後は
魔獣を狩る練習をして、経験を積むのが主な目的だね。」
「わかりました。やってみますけど、全然わからないので教えてくださいね?」
「もちろん、教えるよ。」
うんうんと頷きながらマスターが応えます。
「それでサーニャに僕が求める
僕が求める
だから魔物を倒すことになれて欲しいと思ってる。」
マスターが言うことが今一理解できません。
「回復役の方は後方支援なのでは?…」
私は儀仗騎士団で魔物討伐していた時の様子を教えて貰っていたので、そう答えます。
「それは違うぞ。神聖魔法のヒールは相手に触れていないとダメだろう?」
「その通りですね。」
ヒールは相手に触れてないと治りません。エリアヒールを使えるようになると触れなくても治せるようになります。
「サーニャには聖女みたいなイメージを他の人から持たれて欲しいと思ってる。ヒールを十全に使いこなそうと思うと後方にいるのは愚策だと思うんだ。」
「聖女みたいな…というのはちょっと恥ずかしいですが、それより後方が愚策だというのはどういう事ですか?」
「大体プリーストやプリーステス、神官や女神官である回復役がパーティの後方で支援役に徹するのが間違ってるという事。」
「???????」
全然わかりません。1ミリールも理解できません。
「わかり易くかみ砕いて言うと、回復役に求められる事はパーティの最前線にいることなんだ。
今は盾役がいないけど、盾役の傍にいるのが一番効率的だと考えてる。
必要なのは盾役や自分への適時回復、戦線が崩壊しそうな時に
そして自身でも敵を倒して相手をひるませること。
これこそが回復役の正しい姿だよ。」
マスターが身振り手振りを含めて熱く語っています。
「そんな話は私聞いたことありません。」
「ウォークライやウォーソングを覚えることができるのがシャンラールの使徒って条件があるから、そこまで広がってないんだろうね。
…とは言えまだウォーソングしか覚えれてないから今日はウォーソングを歌いながら
魔獣を狩る感じだね。」
「もしかしてマスターがシャンラール様の信者になるように神殿で奉仕活動をさせたのは…。」
「ウォーソング等の条件達成のため。他の女神の使徒だと覚えることができないからね。」
なるほど、それならあの不可解な行動も納得です、
「他にも
と不思議そうに言っています。
その部分はちょっと共感できないというか理解不能です。
「神聖魔法はどの女神でも等しく差がないはずですけど…。」
「それは知らないから、誰も覚えることができないだけで女神毎の固有の申請魔法もちゃんとあるよ。
無知の知という言葉があるけど、「知らないという事」を自覚して知ろうとする事はかなり難しいと思うよ。」
「ではなんでマスターが知ってるんですか?」
当然の疑問を口にします。
「あぁ、僕は
世の中知らないことが多すぎるから、不思議に思う事柄の詳細な説明を見ないとわからない事だらけじゃない?」
わからないことは本を読んだりして私も調べていたので気持ちはわかりますが、
スキルとしてあるとは知りませんでした。
「気持ちとしてわかる気がします。」
と答えますが、本当に不思議すぎます。
ともかく時間的に休憩も終わりです、魔獣狩りなので気分を引き締めてやらないと怪我をします。
私はよしっと気合をいれました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます