第6話 色々と考える

騒がしい気配に目を覚ますと、完全に朝でした。

ぼ~っとしながら私は掛け布団をずらしながら上半身、その後の記憶が全然ありません。

状況を思い出した瞬間完全に目が覚めましたを起こすしながら考えます。

足をマッサージされていたのは覚えてますが。

テントの中を見渡すと水の入った桶とタオルと木の櫛、そしてブーツが置いてありました。

急いで水で顔を洗い、髪を梳き手早く準備を終えて外へでます。


「おはようございます。」


朝食の準備をしているマスターへ挨拶します。


「もうすぐ朝食できるから、座って待ってていいよ。」


そう言われて座って周りの様子を見ると商隊の人達は交代で食事を始めています。

食事お皿の上にはパンの中にシチューを入れたものとくり抜いであろうパンが出てきました。


「さぁ食べよう。いただきます。」

「土の女神フォンリールの豊かな恵みに感謝し、この食事に祝福を与え給え」


そう言って食べ始めましたが、私より早くマスターは食べ終えて野営の片づけや薪あとの処理を手早くしていきます。

朝食は食器を洗う手間も考えて作っているというのを後で教えて貰いました。

こうしてみると何もやることがないので逆に不安になってきます。

そういう心配をマスターに言うと


「今日も一日歩き通しだから、体力は温存しておいた方がいいと思う。

今日から森林の傍を通る街道に入るからフォレストウルフやゴブリンとかに出会う可能性がある。その時に逃げたり、配置位置に移動できないとかがある方が困るしね。」


そう言って出発前に体をほぐす様に言われましたが、そこは判らないのでマスターと同じ運動をしました。

ラジオ体操つまり国民保健体操だって言っていましたが知りません。



そうこうしている内に商隊も準備が出来たので出発です。

私は今日も商隊と一緒に遅れないように歩くことだけを考えて付いて行きます。

午前に1回、午後に2回ほどフォレストウルフの襲撃がありましたが、

マスターが事前に察知してリコさんに報告に言っていました。

3ツリール(300m)程の距離で数も的確に当てていたようです。

商隊がその場に着くより、倒しきる方が早く。

私の出番はありません。



2日目も予定通りの場所まで進み野営をしました。

1日目と同じように訓練をし、ご飯を食べ、マッサージを受けて寝という生活でした。

毎日の様に林や草原でフォレストウルフやグリーンウルフの3~5匹の群れに数回遭っていました。私は商隊の補給品の馬車の直掩で護衛の役目になっていますが、

一度も会敵することなく順調に旅が進んで行きました。

5日目くらいになると行進が楽に感じて来て歩きながら色々な事を考える余裕が徐々に出来てきました。

護衛の方に教えて貰っている小盾とメイスの使い方の時に、実は私の夜警番での割り当て時間をマスターが全部してくれているという事を教えて貰いました。

リコさんが報酬のオーク肉のステーキを楽しみにして待ちきれずにやってきた。と言っていました。

明日は自分が食べられる日なので大きさなんかも確認に来ている雰囲気がしていました。



マスターは今日は鉄板が置ける竈をレンガで組んでいました。

こちらの訓練が終わったからかマスターがトングでオークのステーキを焼き始めました。


私達はお手水用の桶からラドル(柄杓)で水を汲んで手を洗って竈の傍にいきます。

実は初日から用意してくれていましたが、私が気付いてなかったので2日目から食事の前と後、お花摘みの後に使うように言われました。

しかもかなり真剣な顔をで、「ちゃんと使うように」と言われたから、あの時はビックリしたのものです。

肉の大きさを見てリコさんは上機嫌です。


「厚さも5フリール(cm)、大きさも30フリールくらいか。

明日以降もこの大きさなのか?」


「同じ大きさくらいですね。あと野菜炒めもつけますよ。」


「こりゃ楽しみだな。明日は楽しみにしてるぞ!

ここに居ると腹が減ってくるから一足先に戻ってる。」


そう護衛の人に言ってリコさんは手をヒラヒラ振りながら戻っていきます。

ステーキ2枚とステーキの油で炒めたオニオンなどの野菜炒めを今日盾の使い方を教えてくれた人の自前のお皿に入れて持って帰ると、私達も食事です。

今日は棒巻きパン、オークのステーキと野菜炒め、薄味のスープです。

ステーキは1口大に切ってくたのを渡してくれているので食べるのが楽です。


今日の訓練の調子等を聞かれたので、順調であることや行商隊の移動に日々疲れなくなってきた事などを話します。


「疲れなくなったのはレベルが上がったからだな。」


そうマスターは言い、2日目からフォレストウルフを狩っていたのでレベルが上がったと教えてくれます、そう言えばフォレストウルフを探知していたので一緒に狩に行っていたのですね。

そしてギルドカードでパーティを組んでいると自動で魔素が振り分けられる事をしりました。

そして魔素の事を聞かれたので答えます。

この前魔素についてマスターが知らない情報を知っていたので聞きたいと言われます。

とは言っても基礎的な事だと思っていますが、


魔素とは世界に充満しているこの世界を形作る元であること、

魔法とは、魔素を加工して使っているということ、

魔素は世界を循環しているものであるが、一部は循環できずに歪となっていくこと、

それが魔素溜まりであり、そこから魔物や魔獣が生まれること、

魔素溜まりが濃い場所ほど強い魔物や魔獣が生まれること、

魔物や魔獣を倒すと一部は人に吸収され魂の格の一部になること、それ以外は世界に再度循環すること、

木や鉱石も同じで使った後は魔素になること、

そのため魔物や魔獣の死骸、木の切り株はある程度時間が経つと魔素となって消えてしまうこと、

そのため、どんなものでも程度の差はあれ経年で魔素を失っていくので、最後は朽ちて魔素に返ること、

それは金属でも同じように起こること、

その代わり、木は自然に芽が出て、鉱石も廃鉱山とされてる場所でも鉱石がまた沸くこと

この辺りを話ました。


「なるほど・・・。だから魔素取得率上昇があるのか・・・。

色々説明ありがとう、知らないことがわかるのはいいね。」


と最初は小声でブツブツ言っていましたが、納得できたのか笑顔でお礼を言われました。


「あの取得なんとかと聞こえたのですけど・・・」


「ああ、魔素取得率上昇っていうスキル取得可能技能があってね。スキルレベルが上がるほど魔素の取得率が上がって最終的に×10倍取得できるようになるから不思議だったんだけど、今の説明でわかった気がするって事なんだ。

つまりスキルがない状態だと魔素の10%しか吸収できていなかったと仮定すると、10倍取得できるようになったら全て人間が吸収できるようになるなぁと思ってね。

で、その人間が死んだら魔素はまた世界に還元されて循環するとすると世界のルールに沿ってるから、スキルに問題がない。

世界に循環する魔素の量が早いか、遅いかの違いになるけど神様の視点だと100年程度なんて直ぐだろうし」


なんだかビックリです。こんな風に考える人がいるのかという発見ができました。

マスターが言っているスキルの分野も本人の努力と才能で使えるようになると言われています。研究者が昔から研究をしてもわからない分野と言われていましす。

例外は生活魔法で、火起こしの魔法は6歳でどんな身分の子供も、全ての神の教会で習うことができます。

この後も色々話をし、日課のマッサージを受けて眠りました。


6日目の行進も順調に終わり、護衛の人からの訓練が終わりかけた頃に、リコさんが明らかに上機嫌な足取りで訓練を見に来ました。


「大分動きが様になってきたな。初日のぺっぴり腰じゃないな」


とわざとらしい笑いをして誉めて貰いました。


「こんな感じなら都市近くのジャッカロープ角ウサギやグラフウルフも大丈夫そうだな。

あとは実践して感覚を掴むしかないが、明日からは対人を想定した訓練にするぞ。

とりあえず飯だ。飯。」


そう言って訓練を終わる様に言われて、リコさんはマスターはの方へ行きました。

私も片づけなどをして、そちらに行きました。「その左から2番目のやつを俺に頼む。」とリコさんの興奮具合がわかるくらい上機嫌な声が聞こえます。

その日もご飯を食べながらマスターと話をしました。

明日から訓練の内容が少し変わることなど連絡した方がよいと思うことを言います。


「実際に戦闘の経験とかは次の街ついてからと思ってるけど、スケジューリング、・・・今後の予定は一様立ててるから。

無理はさせるつもりもないし、山賊に襲われた時もリコさん達護衛の人からの指示に従っていればいいから。直接戦闘させることはないと思うよ。」


と言ってくれました。

そして「ちょっと魔素溜まりについて教えて欲しいんだけえど」と聞いてきます。

昨日の話から知的好奇心が高いと思いましたので、その延長線上かもしれません。

または会話する切っ掛けを探していたのかもと思います。

そういえば、私から色々と話を聞くことはありませんでした。


「魔素溜まりは各地に無作為ランダムに発生する、世界に循環できなかった魔素が溜まったところです。そこから魔獣や魔物が生まれてきます。」


マスターも知ってるであろう事を言って、知識のすり合わせをします。


「各地にランダムに、無作為に何故発生するのかってのと、魔物はなぜ魔石を持っているのか?って部分を詳しく教えてほしいな。」


そう言って説明を求めてきます。


「魔素溜まりは何もしなかったら、この世界の中心であるユーマロス皇国に集まって、強大な魔物を生み出す大きく濃い魔素溜まりになります。

それを防ぐためにユーマロス皇国の女皇が日々の祈りと、フォンリール大聖堂で祭主として3ヵ月に1度神事を行い、魔素を各地に散らしています。

結果として無作為になっていますが、薄い魔素溜まりが各地に出現し、そこからまず魔物が生まれ、その後に魔獣が生まれると言われています。

魔物は魔素が比較的濃い段階で生まれるので体内に魔素が固まり、魔石となっていると伝えられています。

魔獣は魔物が生まれた残りや薄い魔素溜まりから発生するために魔石を持たないと習いました。」


「魔物と魔獣は解ったけど、今の説明だとユーマロスの女皇が魔素溜まりを発生させている元凶みたいに思えるけど、どういうことなの?」


「それについては、フォンリール大聖堂のあるムレ・リュカシ霊山に遠き昔は巨大でとても濃い魔素溜まりがあったそうです。あまりに凶悪な魔物が当時は発生していたそうです。

ある時、女神フォンリール様が神託をし、かの地に初代祭主とその同志が向かったとされています。

そうしてムレ・リュカシ霊山で神事を行い女神フォンリール様を降臨させ、凶悪な魔素溜まりを祓ったとされています。

その際「この地に神殿を建て、神事を行うように」と言われ、凶悪な魔素溜まりに近づいたため、全身が酷いやけどのようになっていた初代祭主を癒したとあります。

そしてムレ・リュカシ霊山にフォンリール様の言われた通り神殿を建てたのです。

国としては逆でフォンリール大聖堂の祭主が、乞われてユーマロス皇国を建国し女皇になったというのが歴史です。

各地も魔物や魔獣が発生するようになりましたが、それは食料や資源として活用できるよういになったため、それほど問題になりませんでした。」


「なるほどねそうなんだ、ところで女皇ってのは。誰でもなれるの?」


「神事を行う祭主であることが女皇の条件なので、初代祭主の血筋しか祭主になれません。また祭主の血筋は数千年経っても女性しか生まれません。

そして必ず子は2人授かることになっています。

これは女神の寵愛を受けたからだと言われています。

過去には降嫁した方の娘を祭主にしようとした事もありましたが、祭主としての神事を行っても魔素が払えなかったので、女皇直系の女児のみ継承権を持つことになりました。

また周辺国に関してもユーマロス皇国を亡ぼすと神事が行えず魔素が溜ま続けるため不可侵とされています。故にユーマロス皇国は儀仗用の皇国騎士団以外の武力を持たないのです。」


「う~ん、それだと女皇を王妃とかにすれば乗っ取りもできない?」


「同じような事を考えた方が2500年程昔にもいまして、ベレイド帝国のヴァリレアス帝王はユーマロスへ攻め込んで当時のユーマロス女皇ミリルライラ様を監禁し、併合しました。

その時にはミリルライラ様が日々の祈りと神事が上手くいかず、ミリルライラ様も占領後1年程で夭逝し、神事が行えなかったことで数年後にムレ・リュカシ霊山に魔素溜まりができ、そこから凶悪な魔物が世界中に散らばって世界が混乱したと言われています。

そしてベレイド帝国以外の国が連合軍を結成し、べレイド帝国を亡ぼし。

身を隠されていたミリルライラ様の妹であるマドリリス様が神事を復活させ平穏が音連れたとされています。

それ以降、ユーマロス皇国は各国の争いとは無縁の地とすることが決められました。

それは他の国がどの地で興り滅びてもユーマロスだけは争いに関わらないこととされています。」


私が習ったことを思い出しながら答えていると、興味がそそられるのか「よく知ってるね、素晴らしい」と言われました。

こんな感じでこの日は終わったのですが、私は心に感じた違和感がありました。

私は奴隷契約時に自分の本名と出自に関することを喋ることは禁止されていたはずです。

そのためユーマロス皇国などの単語は言えなかったはず・・・・。

私は故郷を離れざる得ない状況になってから初めて自分ことを考え始めました。











































































































































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