第5話 色々学ぶ

商隊は街を出発して順調に進んで行きます。

私は何も持ってない状態ですが早足の感じで歩いています。

これはかなり辛いです。

マスターが外套を手渡してきたのは何も持ってないのを人に知らせない目的があったのかもしれません。

早足で歩くだけだったのでそう問題はないかなと思っていたのは1鐘分もない時間でした。

お昼の休憩の時には、かなりバテていました。

お昼ご飯として私の肘から手首までくらいのパンにお肉と野菜が挟んだサンドとちょっと酸っぱい果実水をジョッキで渡してきました。

最低限のお礼と言ってパンと果実水のご飯を終えるとそのまま座って休憩していました。

そして休憩が終わるとまた行進でした。時々マスターがコップで水をくれていましたがお礼もいう気力がだんだん無くなっていきました。

そうして今も歩いていますが難しいことは何も考えられません。

ただ遅れないように歩くというだけを考えています。

時々チェックの袖で汗を拭い、ひたすら歩いています。

リコさんの「野営の場所が見えたぞ」という声が聞こえて今日の行程が終わったのだとホッとします。

日は沈んではいませんが、休めると思うと心が軽くなります。


そうして野営地に着くと商隊の方は馬車を△にしています。

△の中に奴隷用のテントが張られていきます。

逃走防止と襲われた時だと前に言われました。馬車で囲まれた中にトイレも置かれていて朝護衛の方が処分してくれていました。

リコさんが野営準備に忙しく指示をだしている中で、私たちは商隊より少し風下の方でテントを張ります。とは言っても私は見学です。

手伝おうにも手伝えないのですが立場的にいいのかなと考えてしまいます。


「ちょっと座って待ってて」と果実水のジョッキを渡されて、手際のいい作業を見ていると

マスターがテントを張り終わって中に入ってからでてきまた。

左右中央に棒を立てた△型の長方形ののテントです。

手を振って呼ばれたのでテントの中に入ります。

そうすると靴2足分ほどむき出しの地面があり、そこから奥は2枚の毛布が敷いてあり、奥に2つ畳んだ毛布があります。


「どちらで寝ても構わないから好きな方で寝ていいよ。

今日は初日だからかなり疲れたんじゃない?

もう少し経ってリコさんが呼びにくるまで寝ころんでいた方が楽でしょ?」


「はい、疲れました。」


「ブーツは脱がないように、ここに盾とメイスを置いとくね。」


そう言ってマスターはテントから出て行きましす。

私はチェニックのお尻の部分をはたいて、マントを脱いで寝ころびます。

馬がパカパカと常足で歩く音と、荷馬車の音がしました。

川へ水を汲みに行く次いでに馬に水を飲ませにいっているに違いありません。



ちょっとウトウトと微睡んでいるとテントの入り口から覗き込むようにリコさんが声をかけてきました。


「嬢ちゃん、頼まれてた訓練をするぞ」


私は飛び起きて「はい」と返事をすると装備品を持って外へでました。


「基本から教えようと思うが、今日は両方の基礎を教える感じだな。構えてみろ。」

そう言われて私はこんな感じかなと思う構えをしました。

違うそうじゃない。こんな感じだ。・・・そうだ。

その状態でメイスを振ってみろ。

そんなへっぴり腰じゃダメだ。腰をまわすようにして振るんだ。」


上と横から振る動作を何度か繰り返します。


「まぁ、メイスはそんな感じで相手にぶつければいいと覚えていてくれればいい。

嬢ちゃんは防具もないんだから、とりあえず道中は盾で身を守れるようにならないとな。

その盾は小盾のバックラーだから攻撃された衝撃を受け止めるんじゃなく、横にそらす様にするんだ。

とりあえず受け止めたらどんな感じか感じてみろ。ここに盾を構えて。」


そう言ってリコさんは盾の位置を指示して鞘をつけた剣で上から盾を打ってきました。


「きゃぁ」


私は盾で受けるとそのまま手が胸にあたり、数歩よろけてしまいます。

思わず声がでてしまいました。


「軽く打ったんだがな、悪いな。そんな感じで攻撃を受け止めると嬢ちゃんだと受け止めきれない感じだな。ウルフが突進してきたのを受け止めても同じ感じだ。

何度か軽く打ち込むから今度はよろけないようにしてみろ。」


そう言って上下や左右、正面からの突きを受け止める練習をしました。


「受け止める感じがわかったところで、今度は攻撃をそらす感じを覚えるぞ」

そういって最初はリコさんが言ったとおりに斜めに構えて先ほどと同じように上から打ち下ろしてきました。

金属が当たる音がしましたがさっきのような衝撃がありません。


「これが攻撃を受け流すって事だな。上手くできると相手をいなすことが出来て、体勢が崩れた相手に思いっきりメイスをぶつけることができる。」


「とりあえず盾で受け流せるだけで怪我をする確率がかなり下がる。

ここからは飯が出来るまでやるぞ。」


集中していて気づきませんでしたが周りがもう薄暗くなってきています。

そこからは只管こういう感じで受ければこうという事を時間一杯美味し得て貰いました。


「どうもありがとうごいました」


「おーよ。そこで飯作ってる坊主へ報酬割れるなよってもう1回言っといてくれ。

それと今日の感じから、大体の動きがわかったから明日からはそれに合わせた人選になるからな。

強面の野郎が多く、的確に言うけど口が悪いのが多いから、もし怖かったら俺に言えよ。途中で交代しようって奴らが順番待ちが凄いことになってるからな。」


リコさんは笑いながら去って行きました。



私は汗を手で拭いながら食事の準備をしているマスターの側へ行くと、背の低い丸椅子があり、そこへ座るように言われます。


「お疲れ、見てたけどリコさんは教えるのが上手いね、最後は形になってきてたよ。」


そう言って誉めてくれました。


「レベルが低いからしょうがないけど、明日からも歩けそう?」


「わかりません。足が棒のようなので。」


問われたことに答えます。


「前からレベルと言われていましたが、わからないので教えてくれますか?」


「もう少し砕けた口調で構わないけど、それはまだ追々か。

・・・レベルってのは魔物を倒すと上がっていくものなんだけど。

えっと魂の格と言った方がわかり易いかな?

魔獣や魔物を沢山倒している人ほど強いという話を聞いたことない?」


「魂の格の話ですか?それは昔習いました。

一定の強さに至ると、神の試練があり真に強くなりたいと願うものは更に格があがると言われています。」


「そうそれであってる。

ようはレベルが上がるとステータスと言われる自分の能力も比例して上がっていく。

今のサーニャはレベル1なんだ。

それで能力的には最低値だから、他の皆に比べると体力もないからね」


そう説明をしてくれます。

そうしてると風上からスープの良い匂いが漂ってきます。

「こっちも食事にするか」と棒に巻き付けたパンとホワイトシチューを渡してくれます。


「食べながら聞いてくれればいいけど、

さっきの話にあった神の試練ってのを超えるってのが限界突破のスキルを取った状態だね。

スキルというのは剣を上手く使えるとかという技能と一緒。

スキルを取るためには訓練して熟練度を上げないといけない。

熟練度が一杯になるとスキルが手に入り、さらに訓練して熟練度を獲得していく

こうして普通の人は皆スキルを得ているんだ。

限界突破のスキルを得た人は強くなりたいと思いながら限界突破の熟練度を上げてスキルを得たんだろうね。」


「初めてそんな話を聞きました。それだと私もスキルを得ているものがあるように聞こえます。」


「得てるよ。

だって言葉が喋れるでしょ?

言語はスキルを得ないと喋れないから人と会話できる時点で言語スキルを持ってるって証拠だよ。」


そんな事考えたこともありませんでした。

赤ん坊から成長すると言葉が喋れるようになるのがスキルのお陰だったなんて誰も教えてくれませんでした。


「人間の場合、生まれたときに人それぞれ初期のSP《スキルポイント》を持っている。そして1歳年を重ねるごとにSPが1ポイントづつ手に入る。

それを使って皆スキルを得て生活している訳だ。

エルフなどの長寿種はある程度の年までは毎年だけど、それから数年年置きになっていって、最終的には人間と獲得のSPは変わらない感じだぞ。」


私は危うくスプーンを落としそうになりました。

多分顔の方も表情がない状態でしょう。


「サーニャのSPはとりあえず全部振ってしまったからないんだよね。

スキルを手動で取ると弊害として、スキルレベルが高くてもスキルを使ったことがないから使えないんだよね。

そのために今日も訓練をしてもらったんだ。

この度の途中でレベルが上がると思うから、そうすればもう少し楽になるはず。」


今スキルを手動で取ったと、とんでもない事を聞いた気がします。

スキルを得るためには訓練して熟練度が?????

私は全然理解が出来ていない状態です。


「そういうものだと、とりあえず覚えておいてくれればいいよ

したいことがあるからちょっと速くご飯を終わらせようか。」


マスターの話を聞いてて食事が進んでいませんでした。

気が付けばマスターは完食しています。

私は出来るだけ早くご飯を食べ終えます。

食事が終わるとお湯の入った桶を渡され「拭きたいでしょ?」と問われたのでテントの中で遠慮なく体を拭かせ貰います。

拭き終わると替えの着替えを用意してくれていたので着替えます。

そうするとマスターが入ってきて


「足は洗った?まだなら桶の中に両足浸けておいて」


そう言って私のブーツを持って外へ出て行きました。

足を桶に浸けて少し経つとマスターが戻ってきてクッションを渡され、

仰向け寝転がるように言われたので桶から足を上げて体を拭いたタオルで拭き、言われた通りにします。

するとさっきのタオルを左足に巻き付けました。

そうして私の右足を持ち上げるようにして自分の右膝の上に置きました。

私はもしかしてこの態勢だと下着が見えるんじゃ?

と何をされるかわからないでいると

いきなり右足の裏が痛みました。

油でも塗ったのか滑りのよいマスターの手が足裏をゴリゴリとしています。


「足の裏が痛いです。我慢できないほどではありませんが・・・」


「脚と足のマッサージをするから、そこは我慢して欲しいな

明日からも歩けるようにと思ってくれればいいよ

疲れもとれるし。」


私の遠回しなやめて欲しいという意見は却下の様です。

痛いなぁと思いながら、マッサージを受けていると痛きけど気持ちいいみたいな感じになってきました、

少し夢うつつのような感じでマッサージをされていました。

途中肩を叩かれて寝そべるように言われて寝ぼけた感じで向きを変え、

そのままふくらはぎ側もマッサージをされて終わったので寝るように言われたそうです。

マッサージも太股から下をされて、途中何度か痛くないかとか尋ねられた様ですが、全く記憶になく私は疲れていたせいもあるのか朝までぐっすりと寝ていました。

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