第2話 買われる
そうして奴隷となったが、商人はもっと大きな街の上級娼館に売った方がお金になると思ったのか、私と奴隷数名を他の街へ連れて行ったが
道中魔物と魔獣の襲撃に何度か会い、
「この街道でこんなに魔獣なんかに会うのはおかしい、このままじゃ大損だ!」
と何度か叫んでいた。
この不幸の原因を訳あり奴隷の私だと決めつけたようで、「お前のせいだ」と何度が罵られた。
予定していた街でないところで私は、別の奴隷商人に売られた。
そうして、その商人も高級娼館へと私を連れて旅をすると魔獣と魔物に襲われるという事を繰り返し。気が付けば3ヵ月ほど奴隷として旅をしていた。
何度も魔獣などの襲撃にあったおかげで別の意味で襲撃にたいする度胸がついたのか多少の魔獣の襲撃では動じなくなったのは良いのかどうか・・・。
そうして私が買われる前の最後の襲撃に戻る。
「次の街には今日中に着く」という話を護衛の人達がするのを聞いた時だった。
突然右手の森から二足歩行の豚みたいなオーク達が現れたのは。
「オークが4、奥からオークハイが来てる」
突然の強襲で不意を突かれる形になったようだ、護衛団のリーダーから指示が飛んだ。
「3台の馬車で円を作って中に避難しろ!盾持ちが前へ、弓は動いてる馬車の幌の上へあがって矢で牽制しろ、乱戦時には味方さえ射らなきゃいい!」
「いいかオークハイがいる、盾持ちは攻撃を受け流すようにして攻撃を受けるな!兎に角お前ら死ぬな!」
そして馬車が乱暴に急停止すると周りの馬車や自分と同じ境遇の少女が悲鳴を上げていまた。
シュンシュンという矢の音がして怒号と金属のぶつかる音がしてきました。
私は馬車の荷馬車一杯大きさの檻にいて戦いの様子はわかりませんでしたが、
此方が不利だという事は怒号の焦り具合などから分かりました。
そして
「このままじゃヤバい。依頼主のあんたは馬で街まで逃げた方がいい。」
かなり切迫している感じの声が聞こえた時です。
「手助けはいるか?」という大きな叫び声が聞こえてきました。
そしてこちらのリーダーの答えを待たずに戦闘に加勢したようでした。
「奴ら崩れたぞ!今だ!残り全部殺せ!」という号令がして「よし今だ!」「ウォー!!」という歓声が聞こえてきました。
とりあえずもう怖い思いはしなくてすむようです。
ほっと胸を撫でおろしました。
リーダーの人の「いやー、助かったぜ」という声と
商隊の人たちの「どうも助かりました。」という声が重なって聞こえてきました。
「丁度採取クエストの帰りに襲撃を受けてるのが見えたので、まぁ・・・確認を取らずに突っ込んだので良かったです」
と先ほどの初めて聞いたこと声がしてました。
「あんたのお陰で助かった、軽傷が数人いるがポーションですぐ治る、オークハイがいたにも関わらず誰も死んでない」とリーダーがかなり嬉しそうな感じで答え、
「こっちに来てくれ、この商隊、この俺たちの雇い主を紹介したい」とこちらの馬車に近づいてくる足音がしました。
「この度はどうも助かりました。大変助かりました。」
若干涙声に聞こえる声がしてきます。そして気合を入れたのか今度は気合の入った声で
「マーグリッド奴隷商会を会頭をしております。アーサー・マーグリッドと言います。こちらへ連れてきてくれた彼がこの商隊護衛12名を纏め役のリコ君で5スターの冒険者です」
「よろしく*****と言います。それで取り合えず馬車の状態確認を最優先で確認しましょう。」
名前だけよく聞こえませんでした。
そこから一呼吸おいて
「ここから馬車だと2時間もかからずにマトースツゥヤに着きますから馬車と馬に問題なければ夕暮れまでには十分付きますし、積み荷も確認しなきゃいけないでしょう?」
「そして先ほど倒したオークですが。こちらが止めをさした3匹については素材を貰いたいですね」
「助けて頂いてますから、確かにそちらの取り分ですから問題ありませんよ。・・・ですが後で取りに来てもらう形にしますか?」
「背負ってる背嚢がマジックバックなので、全部運べますよ」
「・・・それは商人としては羨ましいですな」
商人にとっては確かに垂涎物の品です。
「他の2匹も運びましょうか?」
「それは・・・是非お願いします。」
助けてくれた人はマジックバッグを持っているようです。
しかもかなりの容量が入るもののようですね。クエストと言っていましたし冒険者でしょう。
牽制のため分かりませんが
「まあこのマジックバックは私しか使えないので。奪われても痛くもないですし」
とワザとらしくお道化た感じの声が聞こえました。
なんとなく商会長が反応に困った顔をしている気がします。
というかこの商会がマーグリッド奴隷商会というのも知りませんでした。
誰も名前を言っていませんでしたし。
護衛のリーダーは他の方が何度か呼んでいたのでしっていましたが、
アーサーさんが素早く手分けをして馬車と荷物の破損状況の確認を指示しています。
商隊は2台馬車に檻があり、男性と女性で分けてます。
あと1台は食糧などを積んでいます。
「檻で奴隷を運んでいるのですか?」
とマジックバックを持っている冒険者が言っています
「檻で運んでいますが。このマーグリッド商会はこの辺りでは真っ当にさせて頂いています!」
アーサーさんがかなり力強く反論しています。
「誤解をしていると思いますが。。。」
ここで一旦言葉を区切り
「色々な理由があって奴隷になった方々が多いので、檻で街まで運んでいるほうが安全なのです。
最初の説明で商会で読み書き計算をきっちりと仕込んで良い方の所へ売るようにしていると言っていても信じて貰えず、縄を切って逃げて魔獣に殺されたり、途中で馬車から飛び降りて逃げようとして護衛の方が手加減できず殺してしまうという事があって、逆に檻の中で縄を付けずに過ごしてもらう形にしたのです。
トイレも長椅子もありますし、休憩時間は交代で外で体も動かせるようにしています。
魔獣などに襲われても、この檻はミスリル制なので真ん中に避難してもらっていると逆に安全なのです。
馬車をこのくらい丈夫に作るとお金がかかりすぎますし・・・」
とアーサーさんが言って
「ただ見た目的には良くないということは判っているんです。誤解されることも多いですから・・・。」
と気落ちしたように言い。
「ただきちんと教育して売っているので売価は高いですが、私が自慢できる人材が揃っています。特に帳簿の不正が起こりやすい場所では我が商会の奴隷の信用が高く、好待遇で奴隷も過ごせています。」
とものすごい拘りを持っているのが伝わってくる説明を私は他人事の様に聞いています。
「ほうほう、なるほど」
逆に感心した声で冒険者が相槌を打っています。
「男性の方は人数が少ないのですね」
と言ってこちらに近づいてくる足音がします。
「こちらが女性の檻ですか」
私はマジックバックを持った冒険者が気になったので観察してみました。
こちらに向かってきてる様子をみると、背は私より少し低いでしょうか。足はガニ股で短足に見えます。
鎧のせいなのか分かりませんが寸胴です、顔は耳当て帽子をかぶっているからなのか、かなり口が大きくおたふく顔に見えます。
はっきり言って醜男だと思います。
そして5人程いる女性の檻を見渡して・・・・
最初の「ん?んん?んんん?マーグリッド商会長あの娘っていくらになります?」に戻る。
「どの娘ですか?」
アーサーさんの驚いた声が聞こえてきます。
「あの髪が青から赤になっている娘です」
「あの娘ですか・・・。教育が終わってきっちりとした娼館へ売ったとしたら大金貨
4~5枚程度にはなりますからな・・・。
ただ仕入れたばかりなので、・・・そうですな先ほどの恩を含めてお安くさせて頂いても大金貨2枚と金貨8枚にはなります」
少し考え込んだアーサーさんの声がします。
「たまたま2年ほど前に売った奴隷の様子を見に普通では行かない村へ行きまして、
そこで会った奴隷商から買ったのです。奴隷を融通して貰うこともある仲なので変な商人ではないのですが・・・。買い入れの価格が高かったので、これでも儲けは殆どないのですよ」
少し申し訳なさそうな声でアーサーさんが理由も述べています。
私でも大金貨2枚というのがかなり高いという事はわかります。
自分ではお金を使う立場でなかったので知らなかったのですが、後で聞いたところ一般的に銅貨5枚でお腹一杯食べれて、銅貨50枚で小銀貨、小銀貨2枚で1銀貨、銀貨50枚で金貨、金貨50枚が大金貨、大金貨50枚でミスリル貨となっているそうです。
「・・・うーん。よし買った」
威勢の良い声で冒険者の人が答えています。
「とは言っても、本人の希望もあるだろうから聞いておこうか」
と言い、私へ向かって
「このまま娼館へ売られるか、冒険者として生きていくのとどっちがいい?」
そう問いかけました。
私としては娼館は嫌です、そうなると一択しかありません。
「娼館は嫌です。」
そう答えました。
ただその場合でも夜の相手をする事になるのかと思いましたが、どちらかしかないならマシだと思える方にしたいです。
「なら問題ないな、という訳で売買契約書を作って頂けますか?」
とアーサーさんに言っています。
「お金に関して、この場で渡すのと街で渡すのどちらが良いです?」
「大金貨を持ち歩いているのですか!?」
アーサーさんがかなりビックリしているのがわかります。
「ああ、でもマジックバックをお持ちなら安全かもしれませんね」
と理解を示して、
「では直ぐに契約書を作ってきます」
と荷馬車の方へ走っていきます。
冒険者はこちらを向いて
「さて、呼び方だが僕のことはマスターと呼ぶように、名前とかは教えて貰うが今はは混乱しているだろう?」
と軽い感じでいい。
「とりあえずオークとかの死体を収納してくるか」
と踵を返して行ってしまいました。
これが私とマスターの出会いでした。
この選択が正しかったのか、実は間違いではなかったのかという思いはこの先ずっと心の中の奥底で小さな棘のように残っていきます。
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