A10


「まずは、ベストカップルGP完走おつかれさまーっ!」


:お疲れ様~!

:おつるなやでー!!

:最後まで最高だったぞー!!

:一か月間、楽しい時間をありがとう!!

:めちゃくちゃ可愛かった!

:企画からの新規勢ですが、これから応援させてもらいます!

:本当にお疲れ様ー!


 一か月にも及ぶ長期合コン企画「ベストカップルGP」は多くのリスナーに見守られながら、遂にそのスケジュールの全てを終えた。結果発表配信では012史上最高の同時視聴者数15万人を叩き出し、企画としての大成功ぶりを証明してみせた。また、参加者たちの登録者数も軒並み増えており、カナタ先輩にいたっては事務所トップに並んで登録者数60万人を突破していた。このまま行けば事務所のトップとして名実ともに012の顔になる日も遠くないだろう。


「企画も終わったばっかだけど、とりあえず一人で振り返り配信でもやっていこうかなーって感じなのでよろしく」


:振り返り配信待ってた!

:あれ、陽はいないんや

:他のペアはわりとコラボで振り返り配信してたから意外

:むしろ「はるのゆめ」が一番コラボするかと思ってたわ

:実は裏ではあんまり仲良くなかった系?

:ほんまにベストカップルGP見てきたのか、おまえ

:でもあれはあくまでフィクションって話やったし、あり得なくもないのか?


「あー、勘違いしないで欲しいんだけど、陽さんと仲が悪いとかは本当にないから。というかあの人、私には勿体ないくらい本っ当に良い人だから。コラボしないのは、なんていうか……しんみりしちゃいそうだったから、さ。少なくとも今はまだ」


 コメント欄の指摘に思わず嚙みついてしまう。無視すれば良かったのかもしれないが、どうにも見逃せなかった。それに、もしかしたらこの配信を見ているかもしれない陽さんにまで変に邪推されるのが嫌だった。


:陽さん呼びに戻っとる

:あれはあくまで企画の一環やったからね

:企画が終わってるのにあんまり親しげやとユニコーンも黙ってないやろうし

:別にそのままでも良いと思うけどなぁ

:単に建前が無くなって恥ずかしいだけでは?


「う……。鋭いリスナーがいるなぁ。そうです、企画っていう建前が無くなって君付けするのが今更恥ずかしくなっただけですが何か」


:開き直った

:陽はそんなこと気にしなさそうやのにw

:一歩後退、ってところか

:正直なるなちゃん可愛い


「う、うっさい! ほら、今日は振り返り配信なんだから。みんなも気になることとかあったらどんどんコメントで質問して!」


 思い返せば、色んなことがあった。


 まず、企画参加前。あの頃はデビューしてから初めての炎上を経験し、酷く落ち込んでいた時期だった。炎上の理由は単純。私が魅せプレイにこだわるあまり、チームの足を引っ張ってしまった。チームを応援してくれていたリスナーから酷いことを言われても、自業自得であることを理解していたからこそ否定できなかった。炎上が落ち着いても、私の気分は相変わらず曇ったままだった。得意のFPSゲームでも、負けるのが怖くて堅実でつまらないプレイばかりするようになっていた。気付いたら同期の中でも登録者数が少なくなり、いよいよどうにかしなければならないと思っていた矢先に、企画に誘ってもらったのだ。リスナー層を考慮して不安視する意見もあったが、カナタ先輩の強い推薦もあって私は参加を決意した。今思い返しても、あの時の判断は間違っていなかったと断言できる。


 そうは言っても、企画発表配信の時には後悔しなかったと言えば嘘になる。てっきり事務所の先輩とペアを組まされると思っていたのに、よく知りもしない個人勢Vtuberとペアを組まされることになったのだから当然だと許してほしい。「騙された!」と頭を抱えたのはここだけの秘密だ。しかし、それ以上に同箱の先輩たちから「陽とペアなんて羨ましい!」だとか「陽は俺の嫁!」だとか「あの人まじで沼だから」なんて有難いアドバイスを頂戴したあたりから、実はとんでもない人なのだろうかと思うようになった。


 それが確信に変わったのは、アンチコメントに対する対応配信を見てからだ。合コン企画という形式上、意に介さないリスナーが一定数いるだろうことは事務所も出演者も想定していた。しかし、蓋を開けてみれば想定以上にアンチ派の意見が大きかった。私自身、DMには大量のお気持ちコメントが届いていたし、それは他の出演者も同じだっただろう。そんな状況を、陽さんはたった一回の配信で解決してみせた。きっと陽さん自身には企画中ずっとお気持ちコメントが届いていたことだろう。彼の性格上、その全てに目を通しているに違いない。それでも、あの配信のお陰で私たち他の出演者が最後まで楽しく企画に集中できたのは間違いなかった。


 Apeniteコラボでは同期のむいを助っ人に呼び、初心者の陽さんに色々とレクチャーした。初心者とはとても思えないような陽さんのゲームIQの高さで難所を潜り抜けたかと思えば、不運属性を見事に発揮したりと見どころ満載の配信だった。


 カナタイムとのコラボ配信では、陽さんの底抜けの優しさに触れた。自分の運の悪さを自覚した上で、それでも私に責任を負わせるくらいなら自分のミスで失敗した方が良いと、何の迷いもなく判断する陽さんを知って、初めて「はるのゆめ」としてベストカップルに選ばれたいと思った。


 欲を言えば、インターバル期間にもっとコラボしたかった。いくら陽さんが人気者だからといっても今は私が恋人役なのだから、と柄にもなく不貞腐れてしまった。特にむいと二人でコラボ配信した時なんかは、思わずコメント欄にまで突撃してしまった次第である。


 012公式のMycraftサーバーに陽さんを招待した時には、結果的に自分が所属する事務所の自慢をしているような形になってしまった。それでも陽さんは私の話を楽しそうに聞いてくれて、それがとても嬉しかった。もし何かのきっかけで陽さんが012に加入してくれたら、何の憂いもなくコラボできる日が来るのだろうか。その時にはまた二人でデートできたら、きっと楽しいに違いない。


:やっぱVALEX配信の話は外せないよなあ!

:るなちゃん的にやっぱりオーダー大変だった?

:VALEX詳しくないけど、見てて面白かった!

:正直Vtuberって舐めてたけど、あんなプレイするんやって驚かされた

:どっちが勝ってもおかしくない状況やったしなぁ

:カナタめっちゃ悔しそうやったw


「VALEXかぁ……。さすがに昨日は興奮であんま眠れなかったよね」


 VALEX配信の盛り上がりはもはや語るまでもないだろう。同時接続者数10万人超え。最終マップまでもつれ込んでの大接戦。その盛り上がりはVtuber界隈に留まらず、FPS界隈にまで届く勢いである。中でも012公式の切り抜き動画は今もなお拡散され続け、同時接続者数以上の反響を見せていた。


 でも、正直なところ、VALEXコラボは楽しさ以上に辛さの方が大きかった。唯一の経験者枠ということでのプレッシャーに加えて、以前の炎上のこともあってメンタル的な不安がどうしてもあった。そこに加えて初心者チームの指示役オーダーまで任されており、タスク量も普段とは桁違いに多かった。結果、経験者枠としては不甲斐ない成績で1マップ目を終え、その不調は2マップ目、3マップ目まで続いた。特に3マップ目ではタスク量による疲労がピークに達しているのを自分でも自覚していたが、かといって弱音を吐けるような状況でもなく、どうにかしなければという気持ちだけが先行していた。


 その時に、指示役を買って出てくれたのが陽さんだった。陽さんのゲームIQの高さは理解していたが、それ以上にプレッシャーから解放されたい気持ちの方が強かった。そんな情けない私とは対照的に、中級者とは思えぬ奇抜な戦術でマッチポイントまで漕ぎつけた私たちは最後のタイムアウトを取った。この勢いのままプレイを続行した方が良いのではという気持ちもあったが、陽さんの指示に黙って従った。


 しかし、それは「はるのゆめ」のために準備された2分間だった。


 陽さんは過去のやりとりの中から私の心に巣食うトラウマを言い当て、手を掴めと言ってくれた。カナタ先輩は「配信を盛り上げる」ことを一番大切にしていて、陽さんは「楽しむ」ことを大切にしていると教えてくれた。そして、私にとっての一番を思い出させてくれた。


 コメントの中には陽さんのらしからぬ強引さを指摘する声も多かった。でも、当事者だからこそ分かる。私が「夢見るな」であることを思い出すためには、あの瞬間しかなかったのだと。たった2分間という限られた時間で、陽さんはそれを実行し成功させたのだ。随分と危ない橋を渡ったものだと思う。でも不思議とおかしいとは思わなかった。陽さんなら、と。


:最後のタイムアウトやばかったよなぁ

:賛否分かれてたけどな

:本人のトラウマに土足で踏み込んだわけだしなぁ

:今後012出禁になったりしないよな……?

:まさか今日コラボしてないのも……

:んなわけねーだろ

:今のるなちゃん見て、陽を出禁にするなら012見る目なさすぎる

:るなちゃんが元気そうでよかった!

:俺はるなちゃんのスタイル応援してるぞ!


「で、出禁? そんなわけないじゃん。……まあでも確かにちょっと意地悪だったよね。あのタイミングで『最期にカッコいいとこ見せてくれませんか?』はズルくない? 絶対ドSだよ、陽さん」


:ドSは草

:陽はもともとS気質だと思ってる

:陽×カナはある!

:それはSっていうか攻めでは?

:最終ラウンドのプレイについて聞かせてください!


「最終ラウンドかぁ。あれ、私のプレイばっか目立ってるけど、ぜーんぶ陽さんのお膳立てがあったからこそ成功したプレイなんだよ? あの人はそんなこと自分じゃ言わないだろうけどさ」


:そなの?

:え、あのラウンド陽って何かしてた?

:普通に反対のエリアにいただけじゃね?

:ちゃんとした経験者じゃないと分からんやろなぁ


「あれは後半まるまる使って、陽さんがいる方のエリアには絶対来るな~っていう圧を出し続けてたんだよ。加えて相手はこっちが五人で固まってると思ってるから、最後も一方のエリアには簡単に入れるって油断してただろうし。いや改めて一体どのタイミングからこの作戦を考えてたのか、掌の上で転がされるってこういう感覚なのかな」


 信じられないことに、最後のタイムアウトについては私以外のメンバーに事前に伝えていたらしい。そう考えると、一体どこからどこまでが陽さんの作戦だったのか。もしかしたら3マップ目の前半で私の体力が尽きるのも計算済みだったのかもしれない。あれで中級者だというのだから、本当に末恐ろしい。


:陽やべ~

:陽がやばいのは今に始まったことじゃないからなぁ

:カナタに隠れてよくヤバいことしてるイメージは確かにある

:でも、最後ちゃんと五人持っていったのは、さすがるなちゃんやったな

:それはそう

:ふつうに感動したわ

:まあでもあのプレイは陽のためだったらしいから……

:このコメントは削除されました

:このコメントは削除されました

:ユニコーンくんたちもよう見とるなぁ

:でもベストカップルGPが終わるのは寂しいなぁ

:ほんとそれな

:もう一か月やってくれ~!

:もしかして第二回とかってあったりするのかな?

:あったとして同じメンバーが参加するか?

:それはそれで面白そうやけどなぁ


「第二回かぁ、あるのかなぁ? 今回の反響を考えたら全然あり得ない話ではなさそうだけど。……でも、少なくとも私はもう出ないよ」


 ベストカップルGPはもう懲り懲り。スケジュールは忙しいし、アンチコメントはいっぱい送られてくるし、無茶なことはやらされるし。第二回があったとしても絶対に参加したりしない。招待されたって出てやるもんか。だって、


「私の恋人役は陽さんだけだから────なんてねっ」


 この配信を陽さんが見てくれているかは分からない。でも、少しくらいドキっとしてくれてたっていいだろう。意地悪された仕返しだ。


:は?ぐうかわ

:このコメントは削除されました

:このコメントは削除されました

:ユニコーンの角を的確に折りにいったなぁ

:推しがこんなに可愛いんだから良いだろ!

:ほんまやで

:むしろ可愛すぎてダメージもらったわ

:この物語はフィクションだから!

:企画はもう終わってるがな!!

:つまり、ノンフィクションってこと……!?

:エピローグも知らんのか、おまいら


「最後にあらためてベストカップルGP本っ当に楽しかった!! なーんにもやり残したことないくらい楽しすぎた!! 応援してくれた皆もありがと!! これからの『夢見るな』を楽しみにしてて!!」


:結果的に推しが楽しそうなのが一番こっちも楽しいし嬉しいわ

:長期企画お疲れ様!!

:やり残しゼロ偉い!

:夢見るな、再始動って感じやね

:うおおおおおお、これからも応援してるぞおおおお


「それじゃあ今日はこの辺で! 本日は、陽さんの恋人役────夢見るながお送りしました! みんなも良い夢見てね~! おつるな~!」



012を語るスレ ×××ちゃんねる目


012 名無しのリスナー ID:XxXxXxxx

ついに終わっちまったあああああああああ


013 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

ベストカップルGP、完結


014 名無しのリスナー ID:XxxXxxxx

俺は明日から何を楽しみに生きていけばええんや……


015 名無しのリスナー ID:xxXxXxxx

>014

配信を見ればええ


016 名無しのリスナー ID:xxxxxXxX

すまん、あんまり追えてないんやけど最終結果どうなった?


017 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

ベストカップルGP、最終結果

・・・・・・

【1位:55pt】カナタイム

【2位:53pt】はるのゆめ

【3位:32pt】ししゅん期

【4位:28pt】父と娘

・・・・・・


018 名無しのリスナー ID:xXxXxxxx

>017

これって中間発表と順位は同じ?


019 名無しのリスナー ID:xxXxxxXx

>018

せやね。


020 名無しのリスナー ID:XxXxXxxx

どういうポイント計算なんや?


021 名無しのリスナー ID:XxxxXxxx

細かくは発表されてないけど、リスナー投票に加えて同箱Vtuberと事務所職員の内部票が反映されてるらしい


022 名無しのリスナー ID:xXXxxxxx

カナタイム1位なのは前評判通りか


023 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

正直はるのゆめが勝つんじゃねえかなって思ってたけど、さすがに登録者素が違いすぎたか


024 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

>023

はるのゆめはマジで健闘した方よ


025 名無しのリスナー ID:xxxxxxXX

もう少しどこかでブーストかけられたら一位も目指せるポイント差だしなぁ


026 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

「ししゅん期」と「父と娘」に関しても普通に良いコンビだったと思うけどなぁ


027 名無しのリスナー ID:xxXxXxxx

>026

推しの新しい姿っていう意味ではめちゃくちゃ良かった


028 名無しのリスナー ID:XxxXxxxx

ベストカップルインタビュー

・・・・・・

カナタ「なんで負けたか明日までに考えてきてください」

イナム「アンタには風情とか無いんか!? そんなんだから彼氏にしたくないVtuberランキング一位なんやで」

カナタ「それは言わねえ約束だろうが!!」

・・・・・・


029 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

>028

最後まで締まらねえなぁ。らしいっちゃらしいけど


030 名無しのリスナー ID:XxXxXxxx

他の参加者が全員苦笑いしてるのがよく分かって面白いわw


031 名無しのリスナー ID:xxxxxXxX

カナタ「ベストカップルGPはこれにて本編完結! それでは最後にご一緒に!」

全員「この物語はフィクションです!」


032 名無しのリスナー ID:xxXxxxXx

フィクション最高~!!!


033 名無しのリスナー ID:xXxXxxxx

>031

本編完結って妙な言い方するんやな


034 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

>033

多分これがあるからじゃね?

https://xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx


035 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

なるほど、エピローグ枠か


036 名無しのリスナー ID:XxXxXxx

カナタにしては粋なことするじゃん


037 名無しのリスナー ID:XxxxXxxx

各ペア、ベストカップルGPの振り返り配信


【カナタイム】

https://xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx


【ししゅん期】

https://xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx


【父と娘】

https://xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx


【はるのゆめ(夢見るなソロ配信)】

https://xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx


038 名無しのリスナー ID:xXXxxxxx

振り返り配信きちゃっ!


039 名無しのリスナー ID:xxXxXxxx

俺は父と娘を見てくるぜ!!!


040 名無しのリスナー ID:xxxxxXxX

さすがにカナタイムの振り返り配信は見逃せんわ


041 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

ししゅん期でおねショタを補給してくる


042 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

>037

はるのゆめはソロ配信なん? 陽は?


043 名無しのリスナー ID:XxxXxxxx

>042

陽は不参加っぽい


044 名無しのリスナー ID:xxXxXxxx

お、なんだ? 企画が終わったらバイバイってか


045 名無しのリスナー ID:xXxXxxxx

実は不仲だった説


046 名無しのリスナー ID:xxxxxXxX

>045

お前は一か月間何を見ていたんだ??


047 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

夢見「陽さんと仲が悪いとかは本当にないから。というかあの人、私には勿体ないくらい本っ当に良い人だから。コラボしないのは、なんていうか……しんみりしちゃいそうだったから、さ。少なくとも今はまだ」


048 名無しのリスナー ID:XxXxXxxx

>047

相変わらず可愛いなぁ


049 名無しのリスナー ID:XxxxXxxx

いやまじでVALEX配信から特に可愛い気がしてヤバい


050 名無しのリスナー ID:xXXxxxxx

>047

あれ、「陽さん」呼びに戻ってる?


051 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

>050

夢見「企画っていう建前が無くなって君付けするのが今更恥ずかしくなっただけですが何か」


052 名無しのリスナー ID:xxXxxxXx

>051

開き直るなw


053 名無しのリスナー ID:xxxxXxXx

確かに企画じゃなかったら、そこまで親密な呼び方はしないイメージあるわ


054 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

複窓してるけど、どこの振り返り配信もめっちゃ質なんやが?


055 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

分かる。カナタイムしか見てないけど、二人ながらの空気感がエモくてたまらん


056 名無しのリスナー ID:XxXxXxxx

カナタ「やっぱお前とは相性良かったわ。企画終わったけど、たまにはコラボしようや」

イナム「……まあ、そっちから誘ってくれるなら考えてやらんこともない」

カナタ「おう、任せとけ」


057 名無しのリスナー ID:xxXxXxxx

さすがベストカップル……!


058 名無しのリスナー ID:xxxxxXxX

>057

この数秒後には喧嘩始めてたけどなw


059 名無しのリスナー ID:xXxXxxxx

ばか、それが良いんじゃねーか。ニワカか?


060 名無しのリスナー ID:XxxXxxxx

父と娘だって負けてねえよ!

まみむ「裏で間違えてパパって呼んじゃいそうになっちゃった」

ベリ「いくらでも呼んでくれていいんですよ!!」

まみむ「え、いいの? やった~!」


061 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

>060

それは、エモいのか……?


062 名無しのリスナー ID:xxXxXxxx

>061

この良さが分からんとは。まだまだ修行が足りんな


063 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

ししゅん期推しのワイ、エモバトル参戦!

シュン「紫咲さんのために絵を描いてきたんだ! あげる!」

紫咲「えっ!? ……っ(感極まって泣きそう)」

シュン「だ、大丈夫!?」

紫咲「……大丈夫よ。パソコンの壁紙にさせてもらうわね」


064 名無しのリスナー ID:xxXxxxXx

>063

これは優勝


065 名無しのリスナー ID:xXXxxxxx

やっぱおねショタしか勝たん!


066 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

いつも余裕そうな紫咲姉さんの泣きそうなところとかレアすぎる


067 名無しのリスナー ID:XxXxXxxx

ちょっとエッだったな


068 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

>067

は?お前はこの神聖な場で何を言ってるんだ?〇すぞ


069 名無しのリスナー ID:xxxxxXxX

こうなると「はるのゆめ」二人の振り返り配信も見たかったなぁ


070 名無しのリスナー ID:XxxXxxxx

るなちゃんソロの振り返り配信も全然悪くないぞ


071 名無しのリスナー ID:xxXxxxXx

るなちゃん、VALEXコラボの最後のタイムアウトについて言及

「確かにちょっと意地悪だったよね。あのタイミングで『最期にカッコいいとこ見せてくれませんか?』はズルくない? 絶対ドSだよ、陽さん」


072 名無しのリスナー ID:XxXxXxxx

推しがドS判定されとるw


073 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

でも実際あれはちょっとSだなって思ったわw


074 名無しのリスナー ID:XxxXxxxx

夢見「最終ラウンドかぁ。あれ、私のプレイばっか目立ってるけど、ぜーんぶ陽さんのお膳立てがあったからこそ成功したプレイなんだよ? あの人はそんなこと自分じゃ言わないだろうけどさ」


075 名無しのリスナー ID:xxXxXxxx

>074

どういうこと?


076 名無しのリスナー ID:xxxxxXxX

陽が後半まるまる使って、最終ラウンドの敵の動きを誘導 ⇒ 夢見のスーパープレイって流れらしい


077 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

>076

ってことは最初から計画されたシチュエーションだったってこと?


078 名無しのリスナー ID:xXxXxxxx

さすがに全部ではないだろうけど、それでも怖いわw


079 名無しのリスナー ID:xxXxxxXx

タイムアウトも計算してたりしてw


080 名無しのリスナー ID:XxXxXxxx

>079

さすがにないw逆にどうやって計算すんねん


081 名無しのリスナー ID:XxxxXxxx

陽ならやりかねんぞ……


082 名無しのリスナー ID:xXXxxxxx

有能リスナー「第二回ベストカップルGPはありますか?」


083 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

! それ気になってたわ


084 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

あんだけ企画として大成功したんやから第二回くらいあるやろ!あるよな!?


085 名無しのリスナー ID:xxxxxxXX

るなちゃんは知らないっぽいな


086 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

夢見「今回の反響を考えたら全然あり得ない話ではなさそうだけど。でも、少なくとも私はもう出ないよ」


087 名無しのリスナー ID:xxXxXxxx

>086

さすがに終わってすぐやし、まだ情報はないかぁ


088 名無しのリスナー ID:XxxXxxxx

るなちゃんは第二回があっても不参加なのか。まあそもそも同じメンバーが出るとは限らんけど


089 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

どのメンバーもかなりスケジュールきつそうやったし、何だかんだ言って大変だったんじゃない?


090 名無しのリスナー ID:XxXxXxxx

るなちゃんのデレ発言↓

「私の恋人役は陽さんだけだから」


091 名無しのリスナー ID:xxxxxXxX

>090

マ? 甘すぎんか?


092 名無しのリスナー ID:xxXxxxXx

ユニコーンくん息してるー?


093 名無しのリスナー ID:xXxXxxxx

>090

デマを流すな!「なんてねっ」って言ってただろうが


094 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

>093

正直それでも全然可愛すぎて問題ないが?


095 名無しのリスナー ID:xxXXxxxx

結果的にるなちゃんのトラウマもなくなって、これから再始動って感じだったな


096 名無しのリスナー ID:XxXxXxxx

るなちゃん締めの挨拶↓

「本日は陽さんの恋人役、夢見るながお送りしました! みんなも良い夢見てね~!」


097 名無しのリスナー ID:XxxxXxxx

あ、甘すぎるぜ!!


098 名無しのリスナー ID:xXXxxxxx

>096

もうフィクションは終わったんじゃないの!?


099 名無しのリスナー ID:xxXxXxxx

エ、エピローグ枠だから……


100 名無しのリスナー ID:xxxxxXxX

って、これ、大丈夫そ?


101 名無しのリスナー ID:XxXxxxxx

おっと、これはー



「おつるな~! ……………………ふぅ、終わった」


 配信の終了と同時に、どっと大きな息を吐く。何とか無事に振り返り配信を終えることが出来た。本当なら「はるのゆめ」として二人で配信を行うはずだったのだが、私が無理言ってソロ配信に変更させてもらった。陽さんには申し訳ないことをしてしまった。でも、もし二人で配信していたら、私はきっと陽さんの優しさに甘えてしまう。そうならないために、多少無理をしてでも一人きりで配信するしかなかった。


 だが、配信中ずっと耐え続けていたそれも、もう限界だった。


「……なにが……っ……なにがやり残したことはないだ……っ!」


 涙が溢れ、声が震える。どうにか抑えようとしても、溢れ出る感情は止まってくれそうになかった。椅子の上で足を抱え、熱を帯びた瞼を膝に押しあてる。ヘッドホン越しに微かに聞こえるパソコンのファンの音。胸にぽっかりと大きな穴が空いてしまっているような気がした。


「……あー……勝ちたかったなぁ……っ」


 嗚咽混じりの本音が漏れる。そうだ。私たちは負けた。ベストカップルには「カナタイム」が選ばれた。負けた理由は沢山ある。周りのみんなは「相手が悪かった」「そもそもの登録者数が違う」などと口を揃えて言う。仕方がなかったのだと慰めてくれる。


 でも、そうじゃない。負けたのは私のせいだ。


 カナタイムの人気は確かに圧倒的だった。リスナー投票だけだったら到底追いつけるものではなかっただろう。しかし、実際にはリスナー投票に加えて他のVtuberや事務所職員からの内部票が含まれており、最終的には僅か2ポイントの差しかなかった。


 勝てない勝負ではなかった。あと一つの要因で、十分に引っ返せる戦況だった。目の前に見えていた勝利だからこそ、悔しくて堪らなかった。


 陽さんは恋人役としての役割を終始完璧に果たしてくれていた。コラボの誘いも、アンチコメントに対する対応も、私に対する気遣いも全部、何一つとして文句の付けようがなかった。対して私はどうだろうか。最後まで自分のトラウマに怯え、前半なんかは恋人らしいことをできた憶えが全くない。もし私が企画の早い段階から積極的に動いていたら、こんな結末にはならなかったはずだ。また、足を引っ張ってしまったのだ。


 陽さんはそれを否定してくれるだろう。「るなさんのせいじゃありません」と優しく笑いかけてくれるのが目に浮かぶ。断言していい。陽さんは負けた理由が私だとは決して言わない。仮にも一か月、恋人役だった私だから分かる。いや、私じゃなくても分かってしまうくらいに、彼の優しさは底なしだ。


 だからこそ情けなくて仕方なかった。もし、私がもっと素直だったら、素直になれていたら、この結末は変わっていたのだろうか。変えることが出来たのだろうか。そんなことを考えたところで何の意味もないことくらい分かっている。それでも考えずにはいられない。もし、もう一度でも機会があるのなら、今度こそちゃんと自分の気持ちを伝えられるのに、と。


『────────』


 その時、ヘッドホンに響く着信音。滲む視界越しに、画面に映る彼の名前が見えた。


「っ……! …………ふぅ。あー、あー……」


 袖で目を擦り、息を整える。少しだけ鼻声だが、これくらいなら気付かれることはないだろう。もし気付かれたとしても、それを指摘するような彼ではない。意を決して、通話に出る。


『お疲れ様です。急にすみません。今、大丈夫でしたか?』

「……っはい。どうしましたか?」


 ヘッドホンから聞こえてくる陽さんの声。この一か月、誰よりも聞き続けてきた恋人役の声。これから暫くは聞くことはないのだろうと勝手に決めつけていたからか、無性に嬉しさがこみ上げてくる。上擦る声を何とか誤魔化しながら、早々に要件を尋ねる。


『今日は二人で振り返り配信ができなかったので。代わりといっては何ですが個人的に連絡しちゃいました。……何というか、このままバイバイってのも寂しかったので』

「そう、ですね。無理言ってソロ配信にさせてもらって、ごめんなさい」

『いえいえ、こちらは問題ありません。むしろ、るなさんだけに押し付けてしまったみたいで』

「…………やめてください。それ以上、やさしくしないでください」


 優しさは飴だ。でも、用法と容量を守らなければ毒にもなり得る。全てを包み込んでくれるような彼の優しさは大きな魅力の一つかもしれないが、同時に自分の罪も忘れて甘えてしまいそうになる。


「やさしくされる資格なんて、私にはないんです。私のせいで、負けたんですから……っ」


 企画に対して積極的じゃなかった。最後の最後まで足を引っ張った。勝てる試合で負けさせた。冷たくされる理由なら幾らでもある。お前のせいで負けたのだと、罵られる理由ならごまんとある。だから──




「るなさん」




 ────そんな優しく、呼んでくれるな。


『ベストカップルになれなかったのは確かに残念です。でも、僕にとっての一番・・が何か、るなさんはもう知ってるでしょう?』

「……陽さんにとっての、一番。……楽しむ、こと」

『そうです。僕にとっては楽しむことが一番大切で、勝敗は二の次です。そして今回の企画は、僕の配信活動の中で過去一楽しかったといっても過言ではありません』


 私だって楽しかった。他の配信が物足りなく感じてしまうくらい、毎日が輝いていた。そしてその中心にいたのは、陽さんだ。陽さんがいたから、色んなことを思いきり楽しむことが出来たのだ。


『るなさんにとっての一番はなんでしたか?』

「……私にとっての一番は、誰かの記憶に残るプレイをすること」

『るなさんと過ごした一か月間を決して忘れません。全部、大切な思い出ですから』


 どうして陽さんは私が求めている言葉を的確に言い当てるのだろうか。ズルい。ズルすぎる。そんなことを言われたら、もう何も言えないではないか。


『僕は、あなたとパートナーになれて幸せでした』

「っ……! 私だって、おんなじです! 陽くんがパートナーだったから最高に楽しかったし、陽くんがパートナーだったから……最高にっ、幸せでした!」


 限界だった。何とか堪えていた涙が再び溢れ出してどうしようもなかった。でも、さっきのような悲し涙ではない。これはベストカップルGPを通して陽くんに出会えたことに対する、嬉し涙だ。落ち着いたのは、数分後のことだった。


「……陽くん、今度またコラボしてくれますか」

『もちろんです、むしろいっぱい誘っちゃいますから覚悟しといてくださいね?』

「ふふ、期待してますよ。誘われなかったら泣いちゃいますから」

『それはまずいですね』


 ベストカップルGPは無事に終わりを迎えた。でも、私たち「はるのゆめ」はまだまだ終わらないらしい。この物語がどこまで続いていくのか、少なくとも今はまだ誰も知らない。






『るなさん、最後にひとつだけ良いですか?』

「なんですか、改まって」

『配信、切り忘れてますよ』

「……………………は?」


:ええ最終回やった

:泣いた

:はるのゆめてぇてぇ

:てぇてぇが過ぎる

:まじでこれからも一杯絡んでくれ~!

:これってフィクションだよな……?


「っ────!?」


 そこで今の状況に気付いた。どうやら配信を切り忘れていたらしく、今までのやりとりは全て垂れ流しだったわけだ。コメント欄は見るのも恐ろしいくらいにお祭り騒ぎである。自分の顔がかつてないほど火照っているのが分かる。やっぱり陽くんはドSだった。嫌いだ嫌いだ嫌いだ。コラボ誘ってくれなかったら絶対に許してやらない。……あーもう!


「この物語はフィクションですっ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る