王家の家訓で一夫一妻でありながら勢力バランスで存在する後宮の一人の妃(ヒロイン)が、当時仲の良かった皇子に溺死すんでの所を助けられ、礼の代わりに求婚を申し出ると承諾されるも、過日王宮内にクーデターが発生し、その皇子はヒロインを後宮からの脱出を図り、以後ヒロインと皇子は8年もの間音信不通となり、それぞれ簒奪者から逃れて暮らしていた。
ヒロインは後宮入り前からの侍女と王都から遠く離れた農村で、村民から疎まれながらも皇子との別れの極で囁かれた、『必ず迎えに行く』、というセリフを支えに貧しい生活に耐えてきた。皇子は簒奪者から玉璽を奪い王宮から逃げ、逃走先で出会った仙人風の爺に武術の鍛錬を請い、暫くして山賊の長や簒奪者に姉を殺された貴族の嫡子らと郎党を組み、簒奪者を誅殺し、王権を取り戻し皇子が帝となる。帝は先般の約束通り、ヒロインを探し出し皇后へ据えるが、ヒロインは、会えずにいた8年で気弱ながらも優しかった彼が、後宮にいた妃嬪や宮女・宦官皆殺しという悪評と実際の冷酷感のする変わり果てた彼に接して恐怖を覚えてしまった。
帝は、ヒロインに空白の8年間の出来事を映し出す鏡を用いて帝に至る経緯を見せ、ヒロインからの愛情を取り戻す事に成功し、初めて愛の言葉を囁かれ、口付けを交わす。
結婚式までヒロインに会うと口付け以上の欲望が抑えきれないと判断し、帝はヒロインに会わずにいたが、そうと知らないヒロインは帝を不信がるも、初夜で帝の心根に触れ共に閨を明かした。
尸鬼と言われる人体の負の感情から生まれるゾンビの大量発生を成敗に向かった帝の無事を皇后が一心に先代の祖先に祈る姿に、それまで帝に懐疑的であった官吏達が打たれ、官吏達が皇后を慕う様になり、帝帰還後の朝廷は、帝に抵抗する勢力が無くなり政策がスムーズに運び、簒奪された時期に発生した借金も1年で返済出来た。
尸鬼成敗には、幼き皇子時代に助けた金蜥蜴が、鳳凰の姿を戻り尸鬼の元凶である簒奪者の霊魂を霧散したことで事なきを得た。また古より鳳凰の出現は賢王の出現を意味すると謂われ、現王が民草からも支持を受ける事となる。
時が経ち、帝と皇后には、男女の双子と次男の3人の子が授かり、加えて皇后は、平民の 子女を後宮に集め、武官や文官科挙試験に臨む人材育成の場を設け、皇后自身学ぶ事におざなりであった事への反省の意味と後宮の空利用に皇后として成すべき事と捉え実行した。
数多ある後宮譚でも、幼時分に初恋相手にいきなり求婚し、会えない期間お互い苦難・苦境を乗り越え再会した暁にゴールを迎え、且、その後の二人の子供の誕生と子供の性格まで記述された今物語は稀に感じ、とても面白く心惹かれました。特に双子の父親への無関心・反抗的な態度にはお父さん頑張れと、エールを送りたい心境です。只、言葉を喋らない長女の行く末が心配です。
我儘を申せば、子供達の後日談の執筆をお願いしたく存じます。