第2話

 池は其処まで深くはあったは、それほど広くなかった様で、少し泳いだら、直ぐに端に辿り着いた。

 

 池から出て、信康がまずしたのは、着ている服を絞る事であった。


 絞りながら改めて周りを見たが、見覚えがある物は一つも無かった。


「本当に此処は何処なんだ?」

 絞った服をパンパンと叩きながら呟く信康。


 苔がビッシリと覆われた建物は信康の世界にある構造物とそっくりであった。


 だが、その建物は全て横倒れになっていた。


 地面もコンクリートで覆われていた様だが、所々隆起しており地面を露わに成程に壊されている。


 加えて、何時まで経っても空はどんよりとした雲に覆われ、太陽が差し込む気配が無かった。

 

 信康はどうするべきか悩んだ。

(此処が何処なのか分からない以上、家に帰る事も出来ないな。少し歩くか)

 周囲を探索し、今自分が何処にいるのか調べる事にした。


 濡れた服はまだ完全に乾いておらず、少し湿っていたが、今は非常事態という事で着た。


「着干しってこういう事を言うんだろうな・・・」


 半乾きの服を着ながら呟く信康。


 濡れた部分が身体に張り付いて、嫌な気分になりながら歩きだした。


 とりあえず、目に付いた建物が沢山ある所へ向かった。


 少しすると、壊れた建物がある場所に辿り着いた。

「うわ~、これは凄いな」

 壊れた建物の大きさを見て、目を丸くする信康。

 

 全長は分からないが、十階建てビルに匹敵しそうな程に大きさであった。

 もし、普通に建っていればその大きさに頭を上げて見惚れていた事だろう。

 しかし、今は破壊されて苔に覆われていた。


 近づいてみても、見た事が無い建物ばかりであった。


 本当に何処に来たのか分からないが、少しでも情報を手に入れようと探索する。


 色々と調べながら歩いていると、何かの文字が書かれているプレートを見つけた。


 覗き込むと、所々かすれており、読めない所もあったが、それにはこう書かれていた。


 『×××××番地』

  

 辛うじて読めたのは、これだけであった。

 

 他の所は、壊されており読む事すら不可能していた。


 文字が読めないので、どうにも出来ないと思う信康。


 どうしたものかと、頭を抱えていた。


「動かないで」


 頭を抱える信康の背に声を掛けられた。


 振り返ろうと思ったが、背中に何かを押し付けられた。


 その、何かが何なのか分からなかったが、少なくとも何らかの武器なのだろうと予想できた。


「手を上げて、こっちを向きなさい」


 そう声を掛けたので、信康はゆっくりと手を上げて、身体を声がした方に向けた。


 すると、信康に視ている物が居た。


 整った顔立ちに黄金色の髪を腰まで伸ばしていた。


 少し吊り上がった目に青い瞳を持ち、手には銃を握っていた。

 

 全身にフィットした黒を基調としたスーツを纏っていた。


 信康は女性だけを見ていたが、直ぐに周囲に、数人の女性が自分を見ている事に気付いた。


 全員、同じ衣装を着て、同じ銃を持っていた。


 髪型もバラバラで、よく見ると、耳も違っていた。

 細長いのもあれば、頭頂部に獣の様な耳を生やしている者もいた。


耳長人エルフ? 獣人?)

 信康の世界でも見慣れている人種が居る事に不思議に思っていた。

 

人間ヒューマンの男の様ね。名前は?」

「・・・徳平信康」

 銃口を突き付けられているので、素直に教える信康。


「トクダイラノヴヤス・・・? 誰か聞き覚えある?」

 

 金髪の女性が周りにいる仲間に訊ねるが、皆首を横に振った。

「基地に戻ってデータベースを調べてみないと分からないかしら、それとも、何処かの勢力かしら・・・・・・・」

 金髪の少女は何かを呟いているが、声が小さいので良く聞こえなかった。


「なぁ、聞いても良いか?」

「何かしら?」

 

 銃口を向けられ両手を掲げながら、信康は気になっている事を訊ねた。

「此処は一体どこなんだ?」

「此処は嘗てエデンと呼ばれた地よ」

「エデン⁉」

 

 金髪の女性の口から出た言葉に、耳を疑う信康。

 その名は大昔に自分が暮らしている世界に訪れた次元並行世界の名前であった。


「此処がエデンか。荒廃しているとは聞いていたけど、此処までとは」

 信康は改めて周りを見て、凄い荒廃していると思ってしまった。

「貴方、エデンを知っているの?」


「ああ、今は俺が居る世界に定住しているぞ」

 それを聞いて少女達が衝撃を受けていた。

「詳しい話を聞かせて貰えるかしら」


 金髪の少女が銃を下ろして、優しい声で尋ねた。

 信康も敵意が無いと分かり頷いた。

 このまま話そうかと思われたが、金髪の少女が止めた。


「此処で話すよりも、基地でゆっくりと話してくれる」

「分かった」

 そして、信康が金髪の少女と共に歩きだすと、他の少女達も行動を共にした。

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