第一章 第2話
翌週月曜の放課後、海野さんから
「森峰くん、ごめんなさい。
「試してくれてありがとう、海野さん。案外、友人の
海野さんは目を
部室の入口を見て左手の引き戸を開け、立てかけられた
「さて、今日は普段の活動について話し合いたいけど……その前に、森峰くんにクイズ!」
一瞬、部室の使用日を振り分ける話でもするかと思ったら、見当違いもいいところだった。
「わたしは秘密箱さんの性別を知っているでしょうか?
性別を聞いてどうなるのか。とりあえず、言われるままに答える。
「答えは、知らないかな」
「正解! すごいね! 良かったら理由も教えて」
「まあ……声も中性的で、髪も長いし、いまどき制服じゃわからないと思った。海野さん、合格発表の日のことを覚えているでしょ」
「
海野さんは白紙のルーズリーフに目を落として
その姿を見て、友人について話すのが早いと思った。海野さんと同じく白紙のルーズリーフに目を落として口を開く。
「あいつは
「森峰くんは、また会いたいと思う?」
顔を上げると、海野さんの真っ直ぐな目にたじろぐ。
「……会えるなら、会いたいよ」
そう言うと、海野さんは
「なら、きっとまた会えるよ」
そのとき、ようやく、大翔がいない日常が……海野さんがいる文芸部員としての高校生活が、すでに始まっていると気づいた。
「普段の活動について話そうか。出雲先生は各々で決めるように言っていたけど、
「いいね。海野さんがやるなら、毎日執筆するよ」
「お、おお……っ! 普通なら、毎日執筆ね! その場合も考えてきたよ」
海野さんはルーズリーフに何かをスラスラと書き始める。
「わたしからは、この三つの活動を
「提案に
「賛成ありがとう。自由時間はまさにその考え方だったよ。執筆と感想会は固定して、前後に自由時間を設けるのが良さそう」
海野さんは話しながらルーズリーフの余白にメモを取る。
「七限目が16時20分終わりだから、16時半に活動を始めよう。どこの部活も18時半には帰り支度を済まるみたいだから、18時には終わりたい。さて、森峰くんなら、この1時間半をどう使いたい?」
「三等分にも二等分にもできるけど……実際に執筆してから判断したいかな」
「賛成! いまの時間は……そろそろ16時だね」
海野さんと一緒に、ホワイトボードがある壁にかかった時計を確認する。
「仮に決めるなら、1時間半を三等分と二等分、森峰くんはどっちがいい?」
時計を見ながら、執筆と感想会について考える。
参考になりそうなのは、入試の記述問題と小学生時代の読書感想文くらいだった。どちらも得意な方ではなく、時間がかかった思い出がある。
「二等分かな……いや、
「了解。執筆60分、感想会30分、と。じゃあ、あとは……」
海野さんはメモを元に開始時刻と終了時刻を二分割してスラスラと書き終える。
「よし!
「……そういえば、用意してこなかった」
「じゃあ、わたしのをあげるね」
海野さんのカバンから、B4サイズ四〇〇字詰め原稿用紙が現れる。
海野さんから原稿用紙を五枚もらって、シャーペンを持ち、形だけは準備万端となる。
しかし、
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