36「番外編1」

春樹は、天国を体験し、今は転生出来る場所にいる。

周りを見ると、色々な人がいた。

春樹のいる場所は、手芸が出来る人物がいて、何処に自分の拠点にしようかと思っていた所に、誘われて、そのままいる。


まさか、亡くなった後も手芸が出来るとは思わなかったし、あの世っていう世界があるなんて、信じられなかった。


春樹は、この領域を管理している人が話をしてきた時知ったが、既にきつめと秋寺と貢は転生をして、現世にいると言われた。

あの世があるなら、魂の状態でも話が出来るかな?と思っていた。


「今度は、俺が夢に出てやろうか。」


考えていた時、春樹の名前を呼ぶ声が聞こえた。

春樹の名前を呼ぶのは、アカだ。

アカは、今、地獄の体験が終わり、ここへ飛ばされてきたと説明した。

アカの証としては、春樹が渡した猫のあみぐるみを、持っていたからだ。


アカの恰好は、黒色のカッターシャツに、黒色のズボン。

上着も足首まである黒色のコートを羽織っていて、髪も足首まである長さで黒色をしていた。

そのコートポケットに入っている、白い猫のあみぐるみが目立つ。


「アカ。」

「春樹?ハルキ?どちらだ?」

「どっちだっていいだろう?魂は同じなんだから、でも、漢字表記の春樹で呼んでくれると嬉しい。」

「何故だ?」


春樹は、頬を赤く染めて。


「夏也が愛してくれたから。」


すると、アカは噴き出して笑った。

春樹は、アカを叩きながら、顔を真っ赤にして文句言っている。


「分かった。漢字表記の春樹で認識するよ。」

「そうしてくれ。」


このように、前世での呼び名のままでいるわけがなく、亡くなり、転生して、この地へと来ると、転生した名前になっている為、前世の名前が順番に無くなりつつあるのは自然だ。


周りには、もしかしたら、名前は違うかもしれないが、歴史上の人物いるかもしれない。

こんな時の為に、人は歴史を知り、学ぶのだろうか。


ちなみに、春樹の恰好は、県立流石高校の制服だ。

この恰好の時が、春樹の一番印象に残っているからだろう。


春樹とアカが話をしていると、アカを呼び、駆けて来る人物がいた。

人物は、この地の管理をしている人である。

恰好は、今日走る事を予想されたのか、黒色のTシャツに、ズボンと上着がオレンジ色のジャージをしていた。

白い髪は、オレンジ色の髪ゴムで、ポニーテールにしている。


「アカ、初めまして。この地を管理しています。貴方にお渡しする物があります。」


管理をしている人は、一冊の本をアカに差し出した。

本のタイトルは、月の報告書と書かれてあった。

アカは、本を受け取ると、開かずに管理をしている人に返した。


「加護を、この本を制作した者に与えてください。」

「いいのですか?」

「いいのです。それに、は、もう、のだ。俺は、春樹と一緒に居られればそれでいい。」

「そうですか。では、アカの意思を受け取り、この本は暫く私が持っています。」

「そうしてください。」


アカは、管理をしている人を見ると、とても寂しそうな顔をして、見送った。

春樹は、アカの手を取り、こちらを向かせる。


「アカ、手伝って欲しいんだ。今、話した管理の人が着る服を作りたい。」

「そうか。ならば、どんな風がいいだろうか。」







五年が経った。


「てっきり、桜花と一緒にいると思った。」


夏也は、春樹とアカを見つけて、春樹に話かけた。

夏也の恰好も、県立流石高校の制服だ。

理由も春樹と同じだろう。


「なんでだよ。」

「だって、桜花好きだっただろ?」

「そうだよ。好きだよ。過去形だ。」


アカは、春樹と一緒に手芸をしている。

まだ、二人は転生の報告は受けていなかった。

夏也は、この三日前に、この地へ来たが、転生が直ぐに出来ると管理者から言われていた。

それほどまでに、夏也の魂は、前世から直ぐに転生を繰り返していた。


「それに桜花は、植物だ。ここは人限定だから、植物はこれないよ。」


アカが説明をすると、夏也は納得した。


「夏也は、もう。」

「ああ、転生を明日する。」

「ここに来てから、転生まで五日って早いね。」

「何故か、この魂は、転生が早いらしい。そこまで現世に何か未練があるのだろうか。」


夏也は、春樹の頭を撫でると、アカは複雑な顔をした。

しかし、このハルキは夏也が愛した春樹だから、見守っている。


「未練といえば、春樹に結婚しようと提案した時、内心、ドキドキだったんだぞ。親友から、愛の言葉って退かれないかとか、気持ち悪いって思われたらとか、色々と考えて、あの後の生活も胸が高鳴りっぱなし。」

「だから、俺に触ってこなかったのか。」

「一緒に居られるだけで、良かったからな。それに、今、思えば俺は、きつめさん好きだったんだなって思った。春樹は、きつめさんに似ていたから、好きになったんだと思う。貢さんの事言えないな。」


心にあった感情を、夏也は言葉して出した。

春樹は、覚悟をしていたけど、気持ちが知れて良かったと思っている。


夏也は、アカを見た。

アカは、一歩後ずさる。


「アカ、春樹を頼む。」

「え……、ええぇ。」

「頼りない返事をしないでくれ。この時から、春樹は、アカのだからな。」


アカは、一礼をした。


「任せられた。夏也。」


夏也は、春樹に顔を向ける。


「それじゃ、春樹。現世で会えたら、親友になろうな。」

「うん。そうなるといいね。」

「そういえば、貢さんの会社が関わったあのシステム。」

「結構、問題になっているみたいだね。」

「争いにならなければいいけど。」

「そうだね。」

「まあ、明日には転生するし、見守ってくるよ。」


夏也は、手を振ると、管理をしている人がいる家に向かった。


「母に似ているから好きになったって言うの、未練残さない為だな。」

「うん。そうだね。」


春樹は、夏也の気遣いに感謝した。

それと、問題になっているシステムがある世界に、夏也を転生させるのを心配していた。

アカは、春樹の頭を撫でる。


「大丈夫だ。春樹の血が欲しているのに、意地でも抵抗した精神の持ち主だ。乗り越えてくれる。」


アカは、夏也を信用した。

その貢は、三人の高校生に輸血されて、保育士として転生していた。




終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る