31「育児」
そんな時、桜花にお供えをする日になった。
赤野家と黒水家、そして竹林家のお墓参りも兼ねていた。
大人の男三人いれば、赤ちゃん一人、車に乗せて遠出位は出来ると判断した。
墓参りをした後、桜花の元へと行った。
桜花は、自然の空気や鳥たちの話、それに血の繋がりで、子供を引き取ったのは知っていた。
春樹は、桜花に一度見て貰おうと、連れて来た。
桜を抱っこして、桜花に差し出す。
「大丈夫です。この子には、血の能力はないですし、呪い的な物もありません。」
安心して、桜を見ると、お腹が空いている顔をしていた。
「そろそろ、ご飯の時間だな。」
夏也が、手際良くミルクを作り、桜花の側で飲ませていた。
桜花は、夏也が作ってきたおはぎを食べている。
すると、桜は夏也の作ったおはぎをジッと見た。
欲しそうな顔をしている。
桜花は、食べづらそうにしている。
「あ…あの。まだ、君は食べられないよ。」
でも、ジッとずっと見ている。
もしかしたら、桜は夏也の料理食べたくて、俺たちを選んだのか。
「食欲が勝ってきているのか。」
「そうかも、春樹が夏也君の料理を欲しがっているから、血を通じて情報が伝わっているかも。」
「でも、俺、植物に夏也の料理勧めた覚えが………桜花か。」
そう、今まさに、その光景を目の前にしているではないか。
そもそも、桜花が望んでいたのは、人類の排除だった。
しかし、春樹の説得?により、考えを改めて、春樹を通じて様子を見ていた。
だが、春樹と桜花は血の繋がりで、春樹の気持ちが伝わって来る。
春樹が、夏也の料理を好きで、求めているのを感じて、それが桜花を通じて全植物に伝わっていた。
桜は、桜花と同じで、春樹が子供を欲しがったのを知って、自分は木だから動けなく、枝を折り、人間の姿になったと。
その考えに至ると、そこまで夏也の料理は美味しいのか。
いや、夏也の料理は、もともと、きつめが教えたので、結局はきつめの料理だ。
だが、夏也も夏也で、自分の料理を向上させているから、全てがきつめのではない。
それほどまでに、夏也は料理の素質があった。
「だとしても、気をつけてくれ。春樹。桜のように人になって、夏也の料理を狙っていると思わせて、血を狙ってきて来る人がいるから。」
おはぎを食べながら、桜から離れて、春樹と貢の会話に入ってきた桜花。
桜花は、重箱いっぱいに入っているおはぎを、半分食べ終わっていた。
それでも、手におはぎを持っていた。
「うん。……少し聞きたいのですが、桜花はどうして僕を見つけたの?血の繋がりだけでは、説明がつかない。」
「きつめの遺体を焼いただろ?」
「うん。日本の法律では、遺体は焼かないといけないからね。」
「この血は、なぜか、特別で濃い。だから、焼いた時に出た血の匂いが風に乗ってきたんだ。」
「そんな馬鹿な。」
「そう私も思った。血の原点である吸血鬼と言われた人が、何か秘密があったと思われる。それこそ、結構な力を持っていたと思うの。私の記憶は、辿っても吸血鬼の人の体に入った所から。…………頼りにならなくてごめんな。」
すると、春樹は桜花の頭を撫でた。
桜花は、目を丸くした。
「あっ、触ってごめん。」
「い…いいよ。まあ、気をつけてろよ。春樹と夏也がいないと、このおはぎないんだから。」
「そうする。」
それから、桜花と少し話してから、この地を離れた。
今回は、泊まらず、家に帰った。
桜がいたからだ。
家に帰ると、荷物を全て片付けて、普段の生活に戻った。
桜が大きくなってきた。
離乳食の時期になってきた。
夏也は、離乳食にも研究をし始めて、ホテルでも離乳食のメニューを考案し、作っている。
口に入れるものだからといい、ガラス張りで調理をする。
材料も、ホテルの畑で獲れたてで土がついていたりする。
全て、最初からの調理で、離乳食を希望するお客様に見せていた。
不安がないよう、どうやって作っているかを見せていた。
夏也は、桜を通じて、めきめきと力を出している。
ホテル側としては、とてもありがたく、また一つホテルの魅力が増えたと喜んでいた。
「夏也って、器用だよね。」
春樹は、桜を抱っこしながら、家でホテルから言われたレシピを勉強していた夏也に言うと。
「春樹がいうな。」
夏也は、春樹の作る服やぬいぐるみの技術を器用だと感じていた。
二人の会話を聞いていた貢は、どっちも器用だよなと思った。
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