30「養子」

山川と野田は、春樹に助言をする。


「遺産があるといっても、それらをずっと管理していくには、子孫が必要だぞ。」


春樹は自分の仕事をしながら考えていた。




先日、この地域で同性婚が認められ、春樹と夏也は籍を入れたばかりでの助言だ。

確かに、子供が必要だ。

だとしても、血が繋がる子供は作れない。

そもそも、同性同士だから、子供は作れない。


そんな事を考えながら、仕事をしていて、よだれかけを作ってしまった。


「違う。そうじゃない。」


春樹は、混乱していると、後ろから夏也が声をかけた。


「へー、今度の依頼は、赤ちゃん用品か。」

「えっ、違う。」


春樹は、助言された内容を話した。


「養子か。」

「夏也?」

「ちょっと、考えてみる。」


夏也は、ノリノリで考えた瞬間に、山川から連絡があった。

山に桜の木が一本あり、調査に出向くと、そこには布に巻かれた生まれたばかりの赤ちゃんが発見された。


山川は医師だ。

赤ちゃんの容態や年齢など、その場で検査した。

まだへその緒が付いている。


この辺は、まだ、監視カメラが付いていなく、貢と今度付ける相談をしていた所だった。

病院へ運んで、警察にも来て貰い、色々と調べたが、親に繋がるモノは無かった。


まるで、春樹が子供を望んだから、桜の木が授けたと言わんばかりである。

それに、日にちが三月二十二日という、桜花と話をして決着した次の日であった。




春樹は、その赤ちゃんと対面した。

とってもかわいくて、頬が解ける。

薬指に指輪が光る左手の人差し指を出して、赤ちゃんの手を触ると、急に赤ちゃんが春樹の指を握った。

しっとりとしていたが、とても温かく、意外と力が強い。


「夏也、握られた。」


夏也と一緒に見に来ていたから、夏也も指を出すと、夏也の指も握られた。

去ろうとして、指を離して貰おうとしたが、離してくれなかった。

そればかりか、本当に力強く握ってくるのである。

それを見た山川は、笑顔になった。


「その子、引き取るかね?」


その一言で、赤ちゃんの両親が、赤野春樹と、赤野夏也になった。




山川の言葉に反対する人もいたが、それを黙られる出来事がある。

それは、春樹と夏也が、帰る時になり、手を離した時である。

いきなり泣き出して、手は誰かを探して宙を掴む行動したからだ。

再び、春樹と夏也が手を出すと、握り、泣き止む。

予め、春樹と夏也以外の人の手を差し出してみたが、掴む所か指を払った。


それを見ると、反対は出来ないし、赤ちゃん自身が春樹と夏也が良いと、選んだ。


赤ちゃんの性別は、女の子であった。

名前は、春樹と夏也は考えるまでもなく、二人一致だった。


「「桜。」」


春樹の祖母の名前を取った。

それに、漢字表記だから、きつめにもなる。



それから、色々な手続きがあった。


家に桜が来るとなった時、部屋を見直した。

怪我に繋がるものは、片付けたり、鍵付きにしたりした。


夏也の部屋が危ないモノはないと判断され、ベビーベッドを運んだ。

色々と買い揃える物があり、それらは貢に頼んだ。


男三人が、女の赤ちゃんを育てる生活が始まった。




役割を決めた。


朝は夏也、昼は春樹、夜は貢となった。

夏也は、朝は強いから、少し早く起きても平気である。

春樹は、夜が強いが、貢と夏也は仕事だから、家で仕事の春樹が見る。

貢は、仕事場と話をして、朝の出勤を遅めにしてもらい、朝の夏也に変わるまで一緒にいた。


その間、夏也は貢の部屋で眠る。

そう、丁度いい時間配分が出来ていた。


最初は、女の子だと知って、少し照れながら触れていたが、次第に慣れてきて全てテキパキ出来てきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る