24「昔話」

それは、はるか昔である。


一つの村が、吸血鬼に襲われた。

その吸血鬼は、狂ったように血を求めた。

村の一人が、吸血鬼に闘いを挑んだ。

そして、勝った。

吸血鬼に、杭を打ち込んだのだ。

吸血鬼を、杭が刺さったまま、地面に埋めて対処した。


それから、何十年も経つと、その地には桜の木が咲いていた。

そう、吸血鬼に打ち込んだ杭が、桜の木で出来ていたものだった。

よく、桜の木の下には死体が埋まっているとか言われるが、その死体の正体はこの地域では吸血鬼であった。


吸血鬼の意思は、人間に復讐することであった。


人間は、桜の木をとても大切にしていて、お花見をしていた。

それを知った吸血鬼は、桜の花びらに復讐の意識を込めた。

散る桜の花びらは、花見をする人の飲み物に入った。

人々は、風流があるといい、桜の花びらが入った飲み物をグッと飲んだ。


それが始まりであった。


桜の花びらを飲んだ人は、自分の力が強くなっているのを感じていた。

仕事が大工で、今まで重たくても持てなかった材木が、軽々と持てるようになっていた。

その力を、周りは知ると、吸血鬼が眠っている桜の木の花びらを求めた。


それを知った吸血鬼は、桜の木は、許可なく切ったり、折ったり出来ないのを利用して、どんどんと吸血鬼の意思のまま、いろんな所へと植えられていった。

だが、吸血鬼の思いとは違って、植えられていった桜の木には、吸血鬼の意思は宿らなかった。


この一本の桜の木だけであった。


だから、必死になって、毎年咲いて見せた。

すると、ふとした所で、情報が入ってきた。

最初に飲んだ大工の人間が、亡くなった。

花びらを飲んだ年の、秋に亡くなったと聞いた吸血鬼は、これはチャンスだと思った。

桜の花びらを人間が食べれば、半年後に亡くなる。

これは、復讐が出来る。


人間は野心がある。

その野心を逆手に取って、力の強化をしてやろうといい、了解した人間に強化させた。


だが、そんな時、一人の少年が居た。

その少年は、桜の花びらがそんなに力をくれるなら、木を食べればもっと力を強化できるのではないだろうかと思っていた。

少年は、地面から出ている根っこの部分を、少し削り口へと運んだ。


その瞬間、吸血鬼が埋まっている桜の木の力が、全て少年に移ってしまった。

吸血鬼は、全ての能力を失ったが、少年は利用価値があると思い、桜の木を通じて、自分の血を広めろと命令をした。


少年は、吸血鬼に操られるままに、自分の血を薬として、提供をした。

吸血鬼に噛まれた人間は、吸血鬼になると言われるが、これは、その逆である。

吸血鬼が自分の血を提供しているのだ。

だが、そうする事によって、人間は力の強化をする代わりに、半年後には必ず亡くなる。

だが、計算が狂っていた。

この少年は、とても優しかった。







「そう、少年は優しく、吸血鬼の気持ちを分かっていたの。人間を憎い気持ちは、わかっていた。だから、言う通りにしていたのよ。少年に触れる度に、吸血鬼は優しさで、もう、人間を憎む気持ちが無くなってきた。そう、わかってくれる人が出来て、寂しくなくなったのね。でもね、少年へ移った能力は消えなかったわ。少年は、与えた人が、亡くなっていくのを知ると、自分の血が怖くなった。そう、血は薬ではなく毒だと判断した。だけど、もう遅かった。既に、子供が生まれており、まだ覚醒をしていないだけで、子供に能力が移っているのが分かったの。子供に能力が移っているのを、どうやって知ると思う?」


春樹は、今までの情報から頭を掻きまわしたが、分からなかった。

すると、きつめらしき者は、春樹を見る。


「血が毒だと思い混乱していたけど、子供を見た瞬間、急に冷静になって、我に返ったからよ。子供を見る度に、どんなに疲れていても、怖くなっても、心乱す事があったとしても、落ち着けたからよ。」

「それって、血の能力が子供に引き継がれて安心したって、感じだな。」

「そうかもしれないわね。それで、その人、そんな毒が子供に移っていると知ったら、どうしたと思う?」


春樹は、考えるまでもなく、即答する。


「子供がいなくなればいいと思った。」

「そう、何度も何度も手を出しそうになったけど、その瞬間、自分の心臓がバクバクいって、息苦しくなってね。子供が十六歳の誕生日を迎える頃には、寝たっきりになった。昔、子供が十六歳まで生きられるなんて思ってなくて、立派に育った子供に真実を話した。その次の日、亡くなったのよ。」


春樹と話をすると、きつめの姿を保てなくなっていた。

理由は簡単。

今まで心にあった気持ちを、春樹に話をして少し解放されたからだ。


「本来の姿をみせてくれましたね。」


それは、花びらの形をしていた。

あの時食べられた花びらの形だ。


「ちゃんと話をしてくれたら、こんな時代にまで血の呪いを残されなかったと思うよ。」

「人間がきいてくれるか?」

「きいてくれないだろうね?僕みたいな人以外は。」


春樹は、目を真剣にし、桜の木に声をかけた。


「難しい問題だけど、俺、自然をもっと増やす活動をする事にするよ。小さいけど、出来ると思う。それに、俺には、夏也もお義父さんもいるし、友達も先生もいる。仕事のお客さんもいる。声を掛ければ、賛同しれくれる人がいてくれるよ。」


黙って聞いていた夏也は、ダメージから、まだ回復していないが、話に割り込む。


「食べ残しが無い活動をしていける。また、食べ物になる木々を植えて、山の動物達が暮らしていける活動もしていく。」


貢も参戦する。


「不法投棄の件は、防犯カメラを、山にも設置し監視する。その他、人のいる場所を察知出来る様に、一人一人にGPSを知って貰う。事件が起きれば察知する。山に許可がない者が入れば、警報が鳴るし、誰かを特定出来るシステムを作るよ。」


桜の木は、言葉だけでは信用しないと言った。

今までの人間が犯してきた数々の行為が、とても許せない。

すると、春樹は。

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