19「前編」
春樹と夏也は、学校へと行く。
学校から、バスに乗り、一時間で新幹線が乗れる駅に行く。
新幹線で二時間移動し、降りる駅に着く。
三十分ほどバスに乗ると、遊園地に着いた。
ここでは、遊園地を出なければ、自由行動。
班に分かれて、アトラクションを楽しむ。
班長には、学校から支給した携帯電話を渡し、引率している先生達が持っている携帯電話に繋がる。
物を壊したり、迷子になったり、体調を崩したりするトラブルに対応する為だ。
携帯電話は、スマートフォンではなく、その前の形をしている。
一応、繋がるかを確認の為、班長が順番に先生が持っている携帯電話に発信した。
操作に慣れていない班長もいる為、修学旅行のしおりに使い方が載っている。
先生も、遊園地を楽しむが、交代である。
入口付近の遊園地施設の一つ、救護センターがある。
救護センターの横にある休憩所にて、二人先生はいる。
困った事があれば、そこに行けば対応が出来る。
遊園地側にも許可を得ていて、それ専用の席を確保して貰っていた。
休憩所は、三人座れる椅子が、壁沿いに並べられており、中央は、壁を見える様に背中合わせになる、一人が座れる椅子が、設置されていた。
入口に一番近い三人座れる椅子が、許可が得られた場所であった。
先生は、真ん中を荷物置場とし、右左に分かれて座って、待機をしていた。
「午後三時に、ここの休憩所前に集まって下さい。それまでは、自由行動です。班と一緒に行動をしてください。昼ご飯は、先ほど配った飲食店チケットを利用して、遊園地内の食事を体験してください。では、解散。」
春樹と夏也は同じ班である。
もう、周りがこの二人は一緒ではないといけないと、認識をしていた。
二日目は、一緒でいられないのは仕方ない。
班は、春樹と夏也と、後二人いる。
二人は、男子と女子だ。
女子が班長である。
班を決める時、男子女子二人ずつの四人班となったが、男子が一人多く、女子が一人少なかった。
その条件により、春樹と夏也の班に一緒となった。
「ここ、母さんが一度来てみたいと言っていた所です。」
春樹が最初にお土産を買う店の前を歩き、周りを見ながら話をした。
すると、班の男子、
「なら、楽しまないとな。」
「そうね、楽しまないとね。」
春樹が母を亡くして、天涯孤独になったのは知っている。
だから、その一言で、最初に行くアトラクションが決まった。
絶叫マシンである。
春樹が二人に押されて、列に並ぶのを夏也は見ると、微笑んだ。
「そうか、ここ、来たかったのか。」
夏也は、ぐるりと回りを見ると、確かにと思った。
ゲームが好きなきつめがここに来たらと思い、想像してみた。
すると、とても愛おしくなった。
「夏也、絶叫苦手?」
春樹が、列に並んでいる時、話しかけた。
「いや、平気だ。」
夏也は春樹が、楽しんでいる姿を見ると、とても嬉しくなった。
それは、峠坂も愛川も同じである。
春樹は、この二人がそう思う位に、クラスメイトの中でも愛される存在だ。
「しかし、どうして、男子、女子、二人ずつの四人班なんだろうな?別に、男子四人、女子四人でもいいのにな。」
峠坂は、列を並んでいる時の暇つぶしに質問を三人にした。
「異性がいると、羽目を外しにくいし、乱しにくくなる。それに男子は、女子を知る機会になるし、その逆もありうる。」
夏也は答えると峠坂は、納得した。
「なら、男性の恥ずかしい所、訊いてもいいんだね?」
愛川が一言、三人に言うと。
「え?それはちょっと…。」
「どんな内容を訊くんだ?」
と、夏也と峠坂は思ったが。
「別にいいですよ。どんな恥ずかしい事も訊いてください。それが愛川さんが必要な情報なら、素直に答えますよ。」
春樹は、動揺しずに答えた。
「へー、どんな情報でもいいの?」
「はい。」
「それが、とっても恥ずかしい事でも?」
「いいですよ。」
ニコニコしながら話す春樹を見て、愛川は負けた。
愛川だけじゃなく、峠坂も負けていた。
「赤野ってすごいな。異性にもてるの分かるぜ。」
「本当に、赤野君と接していると、こっちの黒い所が浄化されてしまうわ。」
これも、血の能力が関係しているのだろう。
春樹と夏也は、目を合わせた。
「きつめさんも、こんな気分だったんだろうな。」
「大変だね。」
人に好かれるのは、悪くない。
だが、好かれ過ぎてしまうのは、とても嬉しいことではない。
行き過ぎてしまえば、崇拝者となり、今の貢みたいに「様」を付ける。
「それをカバーしていたのは、黒水さんなんですね。母さんに黒水さんがいたように、俺には夏也がいるから、大丈夫です。」
「春樹…。」
つい、春樹の頬に手を置きそうになったが、絶叫マシンの順番が来た。
夏也は、手を下ろして、絶叫マシンの席に座る。
この絶叫マシンは、一人一人の席だから、隣がいない。
前に春樹がいる。
春樹の顔こそ見えないが、目の前にいるだけでも、夏也は嬉しくなり、一緒に叫んだ。
遊園地を楽しんだ。
午後三時になり、お土産いっぱいになった人もいれば、キャラのお面を付けた人、アトラクションが出しているパンフレットを抱えている人など、それぞれの楽しみ方をした。
トラブルが一つもなく、無事に遊園地を楽しめた。
揃ったのを確認すると、バスに乗り込み、泊まるホテルへと向かった。
ホテルへ着くと、手続きが行われ、それぞれの部屋へと案内される。
班の男子が一部屋、女子が一部屋で、二人部屋を取ってあったが、春樹達の班は例外で、一部屋に春樹、夏也、峠坂、一部屋に愛川一人である。
階層も分かれており、客室七階が男子で、八階が女子だ。
ホテルは、遊園地と提携していて、団体セットで取ると、安くなる。
十階建てのホテルで、客室が五階から九階。
一階がロビー、コインロッカー、宅配便コーナー、ベビールーム。
二階が大浴場、売店、自動販売機、コインランドリー。
三階がレストラン、喫茶店、居酒屋。
四階がウェリング、教会。
十階はビップルームだ。
屋上には、ヘリポートがある。
二日連続で、このホテルに滞在するから、荷物を動かさなくていいのは、ありがたい。
「この部屋、三人で使うのか。イビキや体臭、悪かったらごめんな。」
峠坂は、二人に言う。
二人も同じく言うが、春樹も夏也もイビキをしないし、体臭もない。
どちらかといえば、いい香りをしている。
「しっかし、手芸で手先器用なのに、赤野は料理下手だよな。」
峠坂は、春樹を見て言った。
春樹は夏也と目を合わせて、微笑んだ。
春樹の設定を作ったのだ。
修学旅行の相談を貢にした、次の日である。
学校に、分量を間違えたクッキーを夏也は作ってきた。
それはそれは、食べられた物ではない出来である。
それを、春樹が作った事にし、二日目一緒の班になる人に、夏也が進めて食してもらう。
最初、春樹が作った物だからと嬉しがったが、それよりも強く本当にもう食べたくないと思うほどの出来であり、一口食べただけで拒否をした。
「春樹君は、洗い物だけやって!料理は、私達がするから。」
分担が決まった。
これで、怪我をしない。
春樹は、夏也を見ながら、改めて尊敬した。
上手く作れるが、下手にも作れる。
それに、その時のクッキーは、その後、夏也が食べられるようにとアレンジをした。
アレンジして完成のクッキーだ。
完成されたクッキーを、春樹は食べると、とてもおいしかった。
食べたくないと思ったクッキーを、食べられるようにしたのだ。
そんな出来事を思い出しながら、峠坂と一緒に三人で行動となった。
ホテル内を探検し、ホテルに勤務している人の様子を見るのも、学習内容に含まっている。
ホテルでは色々な国・人種・宗教・大人・子供・障害者など、あらゆる人を迎え入れ、対応をしなくてはならない。
ホテル内探検をしながら、働く人を観察し、自分の考え、態度、言葉遣いなどの勉強をする。
一日目の夕食は、フォークとナイフの使い方を勉強する為、フルコースだ。
紙が一人一人配られ、席に着いた時からの手順が載っていた。
その通りに実行する生徒達。
先生を見ると、パーフェクトに食事を楽しんでいる。
「緑沢は綺麗だな。」
峠坂は、夏也を見た。
夏也は、料理人を目指しているだけではなく、食事のマナーも熟知している。
フォークもナイフも、流れるような手つきで使い、口に運ぶ仕草も綺麗である。
一方、春樹は、夏也を見ながら、もたもたしながらも、何とか食べられている。
「そうか?普通だと思う。」
「夏也は、こういう勉強もしているからね。家でも、本当に綺麗に食事するから、一緒にいて気持ちいいよ。僕、ナイフの扱いが苦手。」
峠坂と愛川は、一瞬、何か引っかかる言葉を聞いたが、自分の事で手一杯だ。
初めてのフルコースで、フォークとナイフを器用に扱えない生徒はとても、大変そうだった。
その代表としては、同じ班の峠坂である。
愛川も大変にしていたが、普段、親の手伝いをし、料理をしていたし、知識としては扱い方を備わっていた。
実際に扱うのは、ここが初めてであるにも関わらず、峠坂よりは綺麗に扱えていた。
緊張しながら、フルコースを食べ終わると、ご褒美として、ラーメンを出してくれた。
ラーメンは、好きな量、好きなトッピングをしてもいいと言われ、替え玉も頼む人がいた。
フルコースも量があったのだが、育ち盛りの高校生。
今日、遊園地で目いっぱい歩いて来て、減っている腹。
足りないのである。
それから、三人で話をしながら、ホテル内を探索し、大浴場に入り、就寝時間まで楽しんだ。
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