14「確認」
冬休みに入った。
問題がなく、生活が出来ていた。
大掃除の季節で、春樹は自分の部屋を使いやすく移動させていた。
きつめの部屋に引っ越したと言っても、こたつを閉まっただけで、その他は、まだまだだった。
仕事が今までし辛かったから、しやすいようにしている。
その時、誕生日に貰った箱が出てきた。
きつめの部屋に、自分の物を移動させる時、埋めてしまって忙しくて見ていなかった。
箱を開けると、色々な色を取りそろえた糸セット、パソコンのハードディスク、USBの他、服や下着、靴下の身に着ける物から、リュックサック、最新ゲーム機、きつめが賞を取ったおもちゃの箱があった。
糸セットとハードディスクとUSB、身に着けるものは分かるが、ゲーム機やおもちゃが入っていたのは意外だ。
それを、部屋に来た夏也を見ると、微笑んだ。
「きつめさん、春樹と遊びたかったんだな。」
「え?」
「ほら、春樹は手芸の道に行っちゃっただろ?自分も好きになっていた物で、子供が遊びそうなおもちゃを選んで、一緒に遊びたかったんだよ。そうでないと、入れないと思うぞ。それに…」
夏也は、春樹に箱の中から、服を一着取る。
それはスーツだ。
「もしも、春樹が、会社に勤めになった場合を考えて、スーツを入れたのは、血が覚醒しなく自分も生きて、その姿を見たかったんだろうな。」
夏也が、スーツを春樹の身体に合わせる。
プレゼントの箱を見ると、本当に春樹と一緒に生きたい気持ちが詰まっている物だと感じた。
しかし、血が覚醒するといっていたが、自分は別に暴走する訳でも、身体が光る訳でも、手や体に紋章が浮かび上がる訳でも無い。
覚醒した感覚が無いのである。
覚醒した事実を受け止められるのは、母が亡くなっただけだ。
だから、血の能力が春樹に移っていると認識していた。
春樹は、本当に自分が血の能力を引き継いでいるのだろうか?と疑問を思っていた。
例えば、きつめには病気があり、亡くなったのも、その日だったのも、偶然である。
良くニュースで訊く話は、心不全である。
シングルマザーで育てたきつめは、赤野家と黒水家から引き継いだ十分な資産があったが、財産を使わなかった。
自分の稼ぎで、春樹と生活をしていた。
通帳をみれば、分かる。
今では、その遺産は全て、春樹の通帳に入っている。
身体に無理があったかもしれない。
考えを巡らせると、春樹は、自分の血が本当に受け継ぎ覚醒をしているのかを、試したくなった。
もちろん、貢と夏也に相談してである。
その日の夕食に、相談した。
貢は良い顔をしていない。
夏也は、何かを考えている顔をしていた。
「春樹君、自分の身体を大切にして欲しい。それに、外部からの刺激ではなく、自ら血を流すのは、とても痛いぞ。」
反対をされているのは、分かっている。
「だめか」と思った。
「強化を願っている人から、春樹を遠ざければ言い訳だ。」
「夏也君?」
「現に、今、学校には自分の成績を上げたいと思うクラスメイトがいる。クラスメイトの前で、針を指に刺して見て、血を出させ、反応を見てから、俺が春樹を担いで遠くに連れて行けばいい。」
春樹は、夏也が協力してくれる姿勢に明るい顔をした。
「夏也君!」
貢は、声を大きく荒げた。
貢にとっては、突然、自分が好きな人が、目の前で襲われている。
「大丈夫、義父さん。俺が、一緒にいます。」
すると、貢は夏也に確認をした。
「夏也君が、能力を強化したい気持ちは持っていないのか?」
夏也は自分に向けられた質問に、胸が痛んだ。
料理をもっと上手くなり、春樹が慣れ親しんだきつめの味に近づける為に、日々努力をしているのは、いつも食べている貢は知っていたが、その気持ちは、能力強化にならないのか。
「俺が…。」
自分の手を見て、混乱している夏也。
いつも、余裕の夏也が、気持ちを揺らいでいた。
「夏也、僕、夏也なら、襲われてもいいですよ。」
その一言に、夏也と貢は言葉を荒げた。
眉間にシワも寄っているし、顔も怖い。
でも、続ける春樹。
「俺は、夏也を信じています。今まで一緒にいました。覚悟もします。」
春樹は、夏也の頬を両手で優しく覆った。
「それに僕は、赤野春樹は、緑沢夏也の婚約者でしょ?」
春樹は、一生懸命、自分の血を分けてでも、夏也を繋ぎとめる。
もう、自分の大切な人を亡くしたくない。
春樹は、薄く涙を瞳に貯めた。
貢は、二人を見て、息を一つ吐く。
「なら、夏也君で試せばいい。遠ざける役なら、私が引き受ける。」
貢は、春樹の決意に負けた。
貢には、能力強化の意思がないのは、きつめが襲われた時に確認された。
それを知っているから、貢の意見を取り入れる。
「確認しておきたい。」
貢は、夏也を見た。
少し体を硬くする夏也。
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