第3章: 勇気の光

陽斗の心の中で、ホットラインへの電話がきっかけとなり、小さな変化が始まりました。それは、彼の長い夜にわずかながらも光をもたらしたのです。電話の後、陽斗は自分自身との向き合い方について少し考え方が変わりました。彼は自分の感情や苦悩を人と共有することの価値を理解し始めていました。しかし、それは同時に、より大きな一歩を踏み出す勇気も必要としていました。


陽斗は、自分の状態についてもっと学び、専門的な助けを求めることが次のステップであることを悟ります。インターネットで調べた結果、彼は地元のメンタルヘルスセンターを見つけます。そこは、うつ病や不安障害を持つ人々にカウンセリングやサポートグループのサービスを提供している場所でした。


センターに連絡することを決心するまで、陽斗は数日を要しました。電話を手に取るたびに、彼の不安は高まります。しかし、彼はもう一度、あの夜の星空を思い出し、自分に勇気を与えます。「一歩踏み出さなければ、何も変わらない」と自分自身に言い聞かせます。そして、ついに彼は電話をかけることができました。


カウンセリングの初回セッションの日、陽斗は緊張でほとんど身体が硬直していました。センターに足を踏み入れると、彼は自分がとても小さく感じました。しかし、担当のカウンセラーが彼を温かく迎え入れたことで、陽斗の緊張は少し和らぎました。カウンセラーは、陽斗の話をじっくりと聞き、彼の感情を無効にすることなく、共感と理解を示してくれました。


セッションを重ねるごとに、陽斗は自分の感情をより深く理解し、それに名前をつけることができるようになります。また、うつ病が彼の思考や感情にどのように影響を与えているかを学び、その影響を和らげるための戦略を少しずつ身につけていきます。最も重要なことは、彼が自分自身を責めるのをやめ、自分の状態を受け入れ始めたことでした。


この過程の中で、陽斗はサポートグループにも参加するようになります。他のメンバーと自分の経験を共有することで、彼は孤独ではないことを実感します。グループの中で、彼は他の人々の話から勇気をもらい、自分の話が他の誰かの助けになることを知ります。この経験は、陽斗にとって新たな希望の源となりました。


第3章の終わりには、陽斗が自分の内面との闘いにおいて、小さながらも確実な勝利を収め始めていることが示されます。星空の下で彼が抱いた希望は、現実のものとなりつつありました。彼はまだ長い旅の途中にいますが、今は一歩一歩前進していることを実感しています。陽斗にとって、これは自分自身を取り戻す旅の始まりに過ぎませんでした。

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