第35曲 〈1〉と〈0〉とのハレブタイ:綾野ましろ、十周年記念ワンマン・ライヴ「BINARY」

 二〇一四年九月十五日――

 書き手が参加した、札幌の「札幌芸術の森野外ステージ」で催された『きたまえ↑ 札幌☆マンガ・アニメフェスティバル2014野外アニソンライブ「アニフォレ」』にて、そのオープニング・アクトを務めたのが、メジャー・デビュー前の〈綾野ましろ〉さんで、これが、書き手にとっての、ましろさんのライヴへの初参加になった。


 その約一か月後の、十月二十二日に、ましろさんは、二〇一四年の秋クールに放映していたTVアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』のオープニング・テーマ「ideal white」にてメジャー・デビューを果たしたのであった。


 実は、ましろさんは、二〇二一年末にそれまで所属していた事務所を退所し、かつ、レコード会社も辞め、その後、約二年間の休業状態にあったので、実際の活動期間は十年に満たないのだが、それでもやはり、今年二〇二四年の秋がメジャー・デビュー〈十周年〉の節目の年である事に違いはない。


 そして二〇二四年に入ってからの、一月の復帰宣言、四月の札幌と東京での復帰ワンマン、夏のFCアコースティック・ライヴ、秋の鹿児島の鹿屋や北海道の苫小牧でのアニソン・フェスへの参加を経て、デビュー十一年目に突入した二〇二四年の十二月一日に、ましろさんは、十周年記念ライヴ、「綾野ましろ10th Anniversary LIVE “BINARY” 」を開催したのである。


 今回のツアータイトルになっている「BINARY」とは、〈1〉と〈0〉から成る〈二進法〉の事で、デビュー〈1〉〈0〉周年にちなんだタイトルであるように思われる。


 そして、今回のライヴにおいても、御多分に漏れずグッズが販売されたのだが、その中には定番のTシャツもあった。

 今回のライヴTの特徴は、その前面に八桁の数が左側に十二行、右側に全く同じ数字、「00001010」が並んでいる点である。

 この同じ数字による右側の方は、十進法に置き直すと〈10〉になるので、こちらの方は〈十周年〉を意味する事が推察できよう。


 問題は左サイドの方で、それは以下の数字である。


  「01100001」

  「01111001」

  「01100001」

  「01101110」

  「01101111」

  「01101101」

  「01100001」

  「01110011」

  「01101000」

  「01101001」

  「01110010」

  「01101111」


 どうにかして、これら〈0〉と〈1〉とによる八桁の数字を読み解けないものか、そう思った書き手は、まずは、十進法に変換してみた。

 結果、〈97、121、97、110、111、109、97、115、104、105、114、111〉、このように変換できたものの、これでは、全くもって何が書いてあるのか解釈できなかった。


 だが、十進法で、二桁ないしは三桁の数字に置き直した結果、この十二個の数字の中に、〈97〉が三つ、〈111〉が二つあるのが容易に分かり、これら同じ数字が〈母音〉を指し示しているのではないか、と発想したのだった。


 かくして、アルファベット二十六文字の最初の〈A〉を〈97〉と考えた場合、〈122〉は〈Z〉となり、この理屈に基づいて、十二個の数字をアルファベットに置き換えてゆくと、「A」「Y」「A」「N」「O」「M」「A」「S」「H」「I」「R」「O」に変換できる。つまるところ、二進法の数字は、ましろさんの名を表わしていた分けなのだ。

 このようにデコードし、正答らしきものに辿り着けた瞬間、書き手の喜びもひとしおであった事は言うまでもなかろう。


 ちなみに、後日、二進法の文字変換に関するサイトを色々渡り歩いた結果、この変換法は、「シフトJIS1バイトコード(半角文字)」である事も分かった。


 なるほど確かに、書き手は、この予測で間違いない、と思ったものの、だが、確証はない。

 しかし、答え合わせができる機会がすぐに訪れた。


 ワンマンの次の土曜日、ライヴ会場すぐ近くの池袋の大型アニメショップにて、十二月の末にリリースされる事になっているアルバムの先行発売と、それを記念した「握手&お話し会」が行われたのだが、このお話し会の機会に、書き手は、Tシャツをデザインした当の本人であるましろさん自身に答え合わせをしてもらった。やはり、書き手の解釈で間違いはなかったのだった。


 ところで、ましろさんが、今回の十周年記念ライヴの場として選んだのが、池袋の「harevutai」であった事に、実は書き手は、〈エモ〉さを覚えていた。

 というのも、二〇二一年の十二月二十八日の活動休止前に最後に立ったステージこそがまさに同じ「harevutai」であったからだ。


 全ての数を〈〇〉と〈一〉に組み合わせて表わすバイナリー・ナンバー・システム、いわゆる、二進法は、コンピューターの処理に使われるものとして、広く知られている方法である。

 また、〈一〉と〈〇〉によってのみ構成されているので、バイナリーといえば、〈オール・オア・ナッシング〉、あるいは、〈二者択一〉と解釈される事もあって、それ故に、こう言ってよければ、やるかやらないか、やらなければゼロ、結局はやるしかないじゃん、歌うしかないじゃん、そういった決意表明が、十周年を迎えたましろさんの、このライヴ・タイトルに込められているようにさえ思われる。

 かくして、一度マイクを置いた同じ場を十周年記念ライブの会場に選んだ事に、書き手は、情動の激しさを覚えずにはいられなかったのである。


〈参加イヴェント〉

 十二月一日・日曜日、会場:池袋、harevutai、『綾野ましろ10th Anniversary LIVE “BINARY” 』

 十二月七日・土曜日、会場:池袋、アニメイト池袋本店六階、『綾野ましろ」SONGS OF ANIMATION」発売記念イベント』


〈アルバム・データ〉

 綾野ましろ『SONGS OF ANIMATION【通常盤】』、〈AWR-0002〉、 三三〇〇円(税込)、三枚購入。


〈参考資料〉

〈WEB〉二〇二四年十二月七日閲覧

 「シフトJISの1バイトコード(半角文字)のエリアマップ」、『文字コード表 

シフトJIS(Shift_JIS)』、二〇二四年十二月六日閲覧。

 「綾野ましろ『SONGS OF ANIMATION』発売記念イベント」(二〇二四年十月一日掲載)、「フェア・イベント」、『アニメイト』

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