イヴェンター・ライジーンはアニソンやライヴ現場をかく語りき（原則、毎週水曜日更新）

第03曲 なまら合ってて、わや～！：大石昌良「なまらめんこいギャル」と「わやわやわー！」

　二〇二四年の冬クールにおいても数多くのアニソンを聴いてきた書き手なのだが、今クール終盤の三月後半に、一〇〇を超える今期のアニソンの中から、まさにアニソンらしい、古き良きアニソンの血脈を継承している、そんな印象を抱いた曲を今回は取り上げる事にしたい。

　ちなみに、ここで書き手が言う「古き良き」とは、例えば、『マジンガーＺ』や『聖騎士星矢』、『ドラゴンボールＺ』のテーマ曲のように、歌詞の中に作品名が入っているような曲で、こういった意味において、これぞアニソン、と言い得るのが、『道産子ギャルはなまらめんこい』のテーマ・ソングであった。

　『道産子ギャルはなまらめんこい』は、集英社の『少年ジャンプ＋』で連載中の、「伊科田海（いかだ・かい）」氏が描く漫画をアニメ化した作品で、作品タイトルの中に含まれ、〈北海道生まれの人〉を意味する「道産子」というワードが明示している通り、北海道、もっと細かくいうと、北見市を舞台にしているラブコメである。ちなみに、北見は、作者である伊科田氏の出身地であるそうだ。

　そして「なまら」は、標準語の〈とても〉に相当する強調の副詞で、「めんこい」は、標準語の〈かわいい〉なので、「なまらめんこい」は、〈とてもかわいい〉という意味になる。

　『道産子ギャルはなまらめんこい』のオープニングのタイトルは「なまらめんこいギャル」で、かくの如く、作品タイトルのキーワードが、曲のタイトルにダイレクトに取り込まれている次第なのだ。

　この「なまらめんこいギャル」は、作詞も作曲も編曲も「大石昌良」氏で、歌唱を担当しているのも、彼のアーティスト名義である「オーイシマサヨシ」氏、すなわち当人である。

　そしてさらに、曲のタイトルのみならず、OPとしてアニメ視聴者が聴く事ができるアニメ・エディションの歌詞の中には、北海道の〈冬〉を想起させるような単語が散りばめられており、これらが、歌詞の中で繰り返されている合いの手と響き合って、アニメ本編の開始前に、視聴者を作品の世界観に導いているように思われる。

　すなわち、大石昌良氏が作った「なまらめんこいギャル」は、曲のプロモーションの為の単なる〈タイアップ〉などでは決してなく、まさしく『道産子ギャルはなまらめんこい』の為に作られた〈アニメの為のアニソン〉と言い得、これぞ昔ながらのアニソン、という書き手の印象に異論の余地はないであろう。

　さて、春分の日がある三月の第三週目に、アニメの第十一話（＊ここから作品の第十一話のネタバレがあり）が放映されたばかりなのだが、このエピソードにおいて、アニソンをうまく絡めた絶妙な演出が為されていた。

　この話の中で、道産子ギャルの「冬木美波」は、東京から北見に越して来た「四季翼」と一緒にゴールデンウイークに、とある場所に出掛ける。

　美波が翼を連れて行ったのが、大空町に在る「ひがしもこと芝桜公園」で、現実を参照してみると、ゴールデンウィークの時期を含む五月には「ひがしもこと芝桜まつり」が実際に開催される予定で、このリアルがフィクションの中に取り込まれている分けだ。

　この第十一話「青春ってなまらえもい」は、ＯＰ無しで、いきなり物語が始まる回なのだが、実は、物語中盤において、「ひがしもこと芝桜まつり」のイベント・ステージにおいて、「オーイシマサヨシ」さんが、一面の桜をバックに、「なまらめんこいギャル」を歌唱する、という演出が為され、書き手の情動は激しく揺り動かされてしまった。

　さてさて、『道産子ギャルはなまらめんこい』のエンディング・テーマは、アニソン・シンガーである「亜咲花（あさか）」さんが歌唱する「わやわやわー！」で、作品タイトルにもなっている、この単語は歌詞の中にも入っているのだが、これもまた北海道弁である。

　元来は、〈酷い〉という意味で使われていたそうだが、現代においては、もっぱら〈ヤバい〉というニュアンスで用いられているらしく、つまり、「わやわやわー」は〈ヤバいヤバいわー〉という意味になろう。

　この「わやわやわー」もまた、作詞・作曲・編曲は、オープニングの「なまらめんこいギャル」を担当した大石昌良さんで、彼が制作した曲が、このアニメに深く関わっているのは明らかなのだが、実は、このＥＤ、オーイシマサヨシ氏がセルフカヴァーもしているので、この事も、ここに忘れずに指摘しておく事にしたい。

〈参考資料〉

〈ＷＥＢ〉

　「あらすじ」、『ＴＶアニメ「道産子ギャルはなまらめんこい」』、二〇二四年三月二十日閲覧。

　「テレビアニメで『ひがしもこと芝桜公園』が舞台に!!」、『ひがしもこと芝桜公園』、二〇二四年三月二十日閲覧。

　「ＤＩＳＣＯＧＲＡＰＨＹ」、『大石昌良／オーイシマサヨシ　オフィシャルウェブ』、二〇二四年三月二十日閲覧。

　「なまらめんこいギャル【完全生産限定盤】」、『ポニーキャニオン』、二〇二四年三月二十日閲覧。

〈曲情報〉

　「なまらめんこいギャル」「わやわやわー！」、『なまらめんこいギャル』、レーベル：ポニーキャニオン、二〇二四年二月七日発売。

　作詞・作曲・編曲： 大石昌良

　「わやわやわー！」は、編曲のみ大石昌良・ｅｂａ